その3 突入戦
高速で飛行する悠斗に、敵組織は予想以上より早く対応を始めた。コンドルは岩場の洞穴をアジトとしており、その洞穴の入り口に複数のミサイルが顔を出した。そして出てきたのと同時に、悠斗に向かって発射された。
(やっぱり反応が早いな。)
「悠斗さん!!」
「分かってるって。」
現代の軍事兵器は能力者の出現により、能力者の能力使用を阻害するために紫紺石が含まれることは、ほぼ当たり前となっている。
まあ、悠斗には全く関係ないことだが。
「あらよっと。」
悠斗は何気なく手を振ると、目の前にソフトボールくらいの大きさの光弾が複数現れ、ミサイルを撃ち抜いた。高熱の光弾により推進剤は派手に誘爆していった。
「―――全弾命中を確認!」
「ハイハイ。」
(全弾が完璧に撃ち抜いたことを自分でも分かってんだけどな。まぁアシスタントの性か。…ん?)
入り口付近の地面が急に隆起すると、そこには大型機関銃が現れ連なっていく。そして悠斗に向かって発射された。
「おっとっと。」
悠斗は片手で持つシェリーを胸に抱えなして、可能被弾面積を減らし、回避運動を始める。直進しながら弾幕が薄いところをくぐり抜けていき、位置を確認する。そして光弾は放ち機関銃を破壊していく。
「突っ込むよ。」
「はい!!」
◆◇◆◇◆
最新型の様々な監視カメラの映像がパネルに映し出される司令室に、一人の男が白い歯を見せていた。その男とは別に真剣に分析を行なっている青年は、キーボードの前にいた。
「これが協会の能力者か…、予想以上じゃないか。」
「はい。外の防衛線が安々と破りましたし、第1部隊がたった4秒でやられましたしね。」
「ああ…、今まで何回か協会のが来たが。全員突入してあの世に逝ったからな。今回はさすがに本腰を入れてくれたか。」
「ええ、もしかすればかなりの高レベル能力者かもしれませんね。…トロフィム様以上の。」
「コンドラト、言うようになったな。」
「いえ、私はただ分析しているだけですから。」
「そうだったな、確か今回の能力者の能力名は【光】だったか?」
「はい。」
「目標の予想レベルは?」
「おそらく《レベル5》から《レベル6》かと。」
「そうか…、場合によっては私も出る。準備しておいてくれ。」
「はい。」
そうトラフィムはいうと司令室を出て行った。
「―――トラフィム、あなたは小物ですね。」
コンドラトはそう言うと、キーボードを叩き始めた。
◇◆◇◆◇
「死ねぇ!!」
「断る。」
そう言った荒くれ者の兵士たちマシンガンで悠斗を殺そうとしていたが、悠斗は凄まじい弾幕に造作もなく大きく横に飛びながら光弾を放ち、次々と兵士たちのマシンガンを壊していく。
「―――クソっ!!」
「―――構うな!!やってしまえ!!」
今度は自爆しようと飛び掛ってくる兵士たちだが。
「あらよっと」
一番前の兵士の顎を蹴りで打ち抜き、
「ほいさっと」
次の兵士を空中で回転しながら顔の右側を殴り、
「ほほいの…ホイ!」
そして最後の兵士を蹴り飛ばし、後ろにいた兵士ごと壁に叩きつけた。
悠斗は高レベル能力者の特有の追加能力【飛行】による変速性の高い独特の体術により、まるで舞うかのように4人を自爆させる前に気絶させた。
「シェリー、まだ?」
「後もう少し待ってください!」
現在内部回線に繋ぎ、ファイヤーウォールを次々と潜りぬけ、急いで内部の見取り図を取っていた。
「早くしろよ、キューピー三分クッキングだってもっと早いぜ?」
「あれは仕込みしてます!」
「それもそうか。―――っ!?」
悠斗は淡い光を放つ壁を展開すると、何かが当たり大爆発し、衝撃が二人に来る。そのまま断続的な能力者の砲撃が始まった。
「―――敵の能力者ですか!?」
「だな、後どのくらいだ?」
「―――今終わりました!」
「上出来!!」
シェリーはデバイスをしまい、戦闘用の前身を覆うコートから銃を取り出し構えた。
「―――右にある通路を進み、二つ目の角を左に、そのまま真っ直ぐ行った突き当たりの部屋です!!」
「あいよ、先に行ってな。俺はこいつらやってから行くからよ。」
「はい、よろしくお願いします!!」
悠斗が光弾を出し、シェリーは対能力者用の手榴弾を取り出した。
「―――敵は3・5・8・9に、8人います!!扉が閉鎖されていますので、お願いします。」
シェリーは瞬時に計測した敵能力者の位置をコードで悠斗に伝えた。
「オケ。カウント行くぞ、3・2・1―――。」シェリーは体を低くした。
「―――0っ!!」
悠斗は右上、正面、正面下、右下、そして右にある鋼鉄の扉に向かって光弾を放つ。それと同時にシェリーの扉へと向かう動きに合わせて、光の壁を展開した。
複数の光弾が着弾し、爆風が室内に立ち込める。
「気をつけな。」「はい!!」
扉に飛び込むとシェリーは手榴弾を投げ、能力者・兵士諸とも葬る。悠斗はそれを見ると、扉の真ん中に立塞がる。
「…さてと。」
悠斗は対峙している数人の能力者に声をかけた。そのうちの隊長らしい一人の男は髭面で厳つい顔をし、悠斗を睨んだ。
「4人いけたか…。」
悠斗は横目で倒れている能力者を数える。
「お前が協会の能力者か…、協会のやつにしてはなかなか強いみたいだな。」
「それはどうも。―――1人行っちまったが、いいのか?」
「ふん。無能力者の分際で何が出来る?所詮、能力者補佐が。」
そんな能力者の言葉に悠斗は思わず吹き出してしまった。
「何がおかしい!?」
(まぁ、普通の能力者補佐は戦闘力を持ってないけどよ…。)
「―――あ〜オモしれ、いやぁさ。そんな能力者がいたんだよ。そしたらよ…。」
悠斗は満面の笑みを返した。
「その能力者、ボコられたんだよ。」