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英雄に安寧の日々はない  作者: ハンス
第2話 リアノルド事件
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その1 セシリア・ディア・カリス

 悠斗は密閉された白銀色の室内をボールのように跳ね回り、小さな金色の物体を追いかける。

 「―――こっ、のっ!!」

 最初は大きく距離を離されていたが、物体の動きを見続けある程度の予測がつくようになった悠斗は徐々に距離を詰めていく。物体も負けじとさらに動きを複雑化し加速しているが、機械では計測不能である《本能(インスティンクト)》によってついに悠斗は金色の物体に触れた。


   ビィーっ!!


 金色の物体は空中に拡散し、負けを認めると室内にけたたましいビープ音が鳴り、空中にいた悠斗はゆっくりと床に着地した。そして計測用具であるヘッドセットとグローブ、シューズを脱ぎ捨てる。

 「お疲れ様です。またいいデータが採れました。」

 室内に怪しい女性が入ってきた。祝儀用だと思われる白スーツの上に白衣、そして白のフレームのメガネ。しかし表情がない服装と対照的に数色に煌めく金髪と宝石のような碧眼の麗人。全身白色の妙齢の女は知的な雰囲気を醸し出しているのも何とも異様な空気を纏っている。

 「そいつはよかったな、セシリア。今回はなかなか手ごわかったよ。前より動きが読みにくくなった。」

 「あれだけの数の関数を使ってもまだ『読みにくい』ですか…、やはり人間は奥が深いですね。」

 「まぁな。シェリーは?」

 「愚妹は今自分の武装の調整で忙しいみたいです。そういえば学校に入ったそうですね?」

 「ああ、神永学院にな。」

 「ほぉ、あの名門に…。まぁ貴方なら余裕でAクラスに入れるでしょうが。」

 「残念、俺はDクラス(落ちこぼれ)だよ。」

 「…おや?考えがあるのですか?」

 「カイトの能力を使うわけにもいかないし、Aクラスの選民意識が嫌いなだけだ。しかも聞いた話によるとDクラスは結構お気楽な集団だそうだ。なら、そっちに行った方が楽しいだろ?」

 「なるほど、貴方らしい。…悠斗くんは神永学院に入ったんですよね?」

 セシリアは突然深刻な顔になり、悠斗に近づいて耳打ちし始めた。

 「ああ、どうかしたか?」

 「最近研究者の友人に聞いたのです…、あまり良くない噂を。」

 「…なに?」悠斗は眉を寄せた。

 「【リアノルドタイプ】という増強剤(ブースター)の種類を知ってますか?」

 「いや、耳にしてないな。最近開発されたものなのか?」

 「はい。安っぽい研究者が開発したんですが…、ナノテクノロジーを利用し、錠剤(タブレット)でありながらたった5分で効果が現れる増強剤(ブースター)の総称です。しかも最近裏市場に出回っているのは…ギアノーバルをリアノルド化したものだそうです。」

 「ギアノーバルっ!?嘘だろっ!?しかもあれは戦時中に製造工程(プロセス)がなくなったはずだろ!?」

 「ええ…、そのはずですが誰かが見つけたらしいみたいです。」

 「ハハ…マジか。」

 ギアノーバルとは増強剤(ブースター)の一種である。効果は他の増強剤(ブースター)を大きく引き離し、驚異を通り越し異常な効果を持つ。通常の増強剤(ブースター)ではレベルが1つ上がればイイ方なのだが、ギアノーバルでは殆どの確立で2つ以上レベルが上がる。しかも保存が容易なので戦時中に広く出回っていたが、使った分の反動が他の増強剤(ブースター)の数倍以上であり、大抵は狂人となり敵味方関係なく暴れるという最凶の増強剤(ブースター)である。そのため、その脅威性が戦争を泥沼化させている要因だと見なした悠斗たちは、ギアノーバルを唯一製造していた組織ヴァージニア・ロキを徹底的に潰した。

 「まさか…、そのリアノルド化したギアノーバルが神永学院付近で出回っている…とかじゃねえだろうな?」

 「そうでなきゃ知らせませんよ。」

 「はぁ…、後でシェリーに調べさせるよ。」

 急に白髪が増えたように見える髪の毛を悠斗は荒々しくかき回す。

 「全く…退屈しそうにないな。高校生活も。」

先に「にのない」が書き上がったので投稿します。

さて、なのは見なきゃ…。


一部加筆修正(2011/8/8)

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