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英雄に安寧の日々はない  作者: ハンス
第1話 入学式
14/30

その5 Farce

 「―――イチローっ!!」

 「―――ああっ!!」

 悠斗の呼びかけに応じた一郎は、すぐに能力【土】を発動し、先端が尖った長い棒を生成した。それを掴んだ一郎は、その二発のグレネードに向かって投げ、見事命中し、爆発した。

 その間に悠斗はテロリストらしき男に近づき、無力化するためにスーツの胸ぐらをつかむ。もちろん男は反応し逆に技をかけようと悠斗の腕を掴み、体全体を使って投げ飛ばそうとした。

 (こいつ、出来る!!)

ふと教壇に立つ友愛を見ると愉快そうに(・・・・・)微笑んでいた(・・・・・・)

 「―――そういうことかっ!!」

 毒づいた悠斗はエネルギー量子を使い一時的に身体能力を上げると、男の力を無理矢理抑え、乱暴に男を空中に上げ、ド派手に顔から床に叩きつけた。体術の心得が全くない力任せの投げだったが、男は鼻血を出しながら気絶した。

 一瞬何が起こったか分からず呆然としていた生徒たちだったが、悠斗たちの一連の騒動を咀嚼すると、事態を把握した。自分たちがテロに遭い、命を落とそうとしたことを。

 「―――皆さん、お静かに。」

 友愛の声がマイクを通りフロアに響いた。静かながらも、一つ一つがはっきりと分かる友愛の声に誰もが反応し、動きを止めた。

 「―――私の茶番に付き合わせてしまい、申しわけありません。今、そこの男子生徒が無力化している者はうちの者です。」

 友愛は呆けている全体を見回し、そして再度ゆっくりと口を開いた。

 「―――皆さん、私たちは能力者(シビル)です。その意味を皆さんはちゃんと分かっていますか?…もし、あのグレネードが本物だったら?もし、そこの男子生徒がいなければ?間違いなく、私たちは死んでいたでしょう。つまり『私たちは能力者(シビル)である』ということは『いつ命を狙われてもおかしくない存在である』なのです。私が言っているのは極論かもしれません。だからこそ『この事』を私たちは意識しなければなりません。…ですがそれは大変難しいことです。なので私たち【新生徒会執行部】は1年間だけですが、皆さんが無事勉学を熟し、卒業させることをここに誓います。―――これで私の話を終わります。」

 友愛の話が終わった瞬間、奈々子以上の盛大な拍手がなった。

 「―――隊長、お久しぶりです。」

 気絶させられた男の背中に腰を下ろしている悠斗に、Aクラスの方からある男子生徒が現れた。その男子生徒は黒人で、体のパーツ一つ一つが整然としており、カッコイイというより美しいという印象を受ける。

 「ああ、ガイ。ありがとな、爆風弱めてくれて。」

 「いえ、あれくらいならば御安いことです。しかも弱い方でしたからね。」

 おそらく本物である先程のグレネードの爆風や衝撃が半減したのは、ガイの能力によるものだった。だが、悠斗たちがよく使()()()()()()()()とはかなり弱い。

 「ハハ、そうか。…それにしても久しぶりだな。7年ぶりか?」

 「はい。また貴方と組めることを光栄に思います。」

 「固くなるな、ここじゃあ単なる旧友(ダチ)だ。後、俺の名前は天野悠斗だ。」

 「―――はい、失礼しました。悠斗さん。」

 「それでいい。」

 悠斗は戦友の相変わらずの真面目さに懐かしさが込み上げ、苦笑した。

 「―――悠斗、大丈夫か?」

 今度は一郎が悠斗のもとに現れた。

 「バカヤロウ、俺を誰だと思っていやがる。…だけど、やられたな。」

 「ええ…、あの生徒会長はなかなかの腕を持っているようですね。」

 「…はっ?どういうことだよ?」

 相変わらずの一郎にガイは苦笑した。

 「貴方も相変わらずですね、考えてみて下さいよ。あの言葉を納得させるためでしたらもっと簡単な手があります、ですがあの生徒会長はこの手段を取った。」

 「つまり、他に狙いがあったということか?」

 「…はい、その通りです。」(この人も成長するんですね。)

 以前よりも察しが良くなった一郎にガイは内心驚いた。

 「んじゃ、その狙いってのはなんだよ?」

 「―――俺たちみたいな【存在】を炙り出すため…だな。」

 「炙り出す?」

 「ああ…、多分使える手駒を確認しておきたいんだろうさ。もしくは単なるトラブルメイカーか、だな。後者であって欲しいが、鳳家一族の人間だからな。あれ。」

 悠斗は手を振り笑顔を振りまく生徒会長を見ながら、ため息を吐いた。

 (…あの生徒会長、どうも食えないな。一応注意しておくか。)

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