全てが終わり、全てが始まる日。
荒野。
そうとしか言えない程荒んだ光景が少年の目に映る。
ある者は大剣を相手に突き刺し息を絶え、またある者は祈りを捧げるかのように佇んでいる所を後ろからサーベルを刺され、その生命を終えていた。
周囲を見回せる高台で座っている少年に、一人の少女が後ろから肩を置いた。
「全て…終わったな…。」
「ああ…。やっと…、全て…、…な。」
《能力者》。
それは“不可能”を”可能”に変えてしまう存在。
国家はその者たちを所有、研究した。
そうして能力者が出現して約100年が経っていた。
すると。
とある能力者が国家に失望し、世界を変えようと仲間に呼びかけ、革命を起こそうとした。
最初は小規模の小競り合いだったが、徐々に戦火は広がり、ついには一つの大陸を焼け野原にしてしまった。
そしてついには全世界を巻き込んだ大戦となった。
《能力者大戦》。
しかし。
2130年12月10日。
ラグナロクが始まって15年後。
そう例えられて過言ではない凄まじい大戦を、ある少年の手によってようやく幕を降ろされた。
天乃川悠介。
弱冠8歳にして世界で数少ない大国の軍と渡り合えるレベル10によって、悪夢は終わった。
生まれ持った天賦の才と濃密な体験、そして大戦の終結を共に願い散っていった仲間たち。
「早く戦争を終わらせたい。」
失ったモノは多かった。
しかし、戦争は終わった。
終わったのだ。
悲しみと嬉しさが入り交じった気持ちを抱えている少年に、また手負いながら数人の女が背後に着地しました。
「…ユウスケ、これからどうするの?」
「そうだな…。」
「悠は誰よりも頑張った、だからこれからは私たちに任せて好きなことをして欲しい。」
「…俺、学校に行きたい。」
「学校?なぜなのカナ?」
「俺。まだ8歳だし…、それに…さ。」
悠介は血で滲んだ写真に写った少女を見た。
「責任…取りてぇんだ。」
「…だが。それは貴様のせいではなかろう?」
「分かってる。…だけどよ、あいつに死ぬ前に頼まれたんだ。」
写真をそっと抱き、この写真の持ち主が消えていった海を見た。
「神奈を幸せにしてくれ…ってさ。」
―――今から7年後。物語が始まる。