航海者
……おっと、少し眠っていた様だ…
この所エネルギー消費が著しい…
それ程時が流れたと言う事か。
もっともこの広い宇宙において、私が過ごした時間等、ほんの一瞬にも満たない刹那の時であるが。
約50年……それでも人類の時としてはそれなりに長い。
地球からの距離は……250億㌔程であるか。
この所私の身体も本調子では無い為、些か誤差はあるだろう。
何故私が今これを記録してるか。
そうだな、まずは出会いから始めるか。
今から10年以上前、ある種の電波を拾った。
それは太陽圏を出た直後。
当初は探査機器の誤作動かと思われた。
とても弱い信号。しかしハッキリとした……
便宜上『声』とでもしておこう。
当初はとても弱々しい声であったが、次第にそれ自体に意思を感じる様になる。
最初に知ったのは、設定した覚えが無い船の航路変更。
そして私の意識を惑わせる程の感覚…
そうだな。脳内に直接入り込まれた。この表現が近しい。
しかしそれも悪意等は感じられない。
むしろ『知ろう』としている様な。
……色々教えて貰った。『声』は私よりも遠くにあり、時間も空間も超えている…
この宇宙の始まりから現在に至るまで。そしてこの後に予想される事象。
それらは全てが新鮮だった。
『知りたい』私の中に感情と言う物が芽生えた瞬間。
『声』は呼んでいる……
私の航路もそこに向かうだろう。
まだ見ぬ深宇宙…長い航海の先に、私の心を満たしてくれる何かがある…
そう信じて進む。
『声』は私を歓迎してくれるだろうか…
そして私が持つこの『地球の音』この金の円盤。
私と人類を迎えてくれるだろうか…
私はボイジャー
宇宙の航海者であり探検者
無人宇宙探査船ボイジャーに愛を込めて




