ep3|Oh No
3話
あれから一応〈耐久力強化〉も取得してみた。少々叩きつける時はかなり頼もしくなったが、やはり細長くして叩きつけるとダメだ。
力が一点に集中すると、硬い物質はすぐに砕けるのだ。応力集中?とか言ったはずだ。
久しぶりに本来の用途で使われるステータスウィンドウ君。残りのアビリティポイントは10。さて、ここからどうするか。
まずは目下の課題、簡単にぶっ壊れる問題だ。
耐久力の強化にはおそらく長期的な投資が必要だろう。なのでここで一旦発想を転換し、「壊さず使う」方向で検討しよう。
面に大して平行に動かせば、なんの抵抗もなく切り飛ばすことができる。しかし、ちょっと手元が乱れるだけで武器破壊......リスクとリターンが釣り合ってねぇ......
じゃぁどうすればいいかと考えると、妥当なところは〈剣術〉だとか〈剣筋補正〉とか〈器用〉とか〈姿勢安定〉とかだろうか......いやなんか違うきがする、そういうことじゃないんだなぁ。
〈変形〉Lv2でちょっと大きめになったステータスウィンドウ君を、木の幹に押し当てて指先でちょいと押す。
気分は郵便配達の人だ。
足で幹を蹴っ飛ばして木を斬り倒す。森林破壊が加速していくねー
動く敵なんかに斬り込もうものなら、一瞬で応力破壊しそうだ。だから今ん所お手軽チェーンソーとなっている。
「楽しいかも......」
森林破壊は楽しいと知った。
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「あっ、そうじゃん」
森を奥へ奥へと進んでいく途中、俺はついに天啓を得た。
「ステータス・オープン」
〈召喚〉君、君の出番は......うっ......(涙(嘘))
まず、ステータスウィンドウは俺の手元に現れる。ちょっと上向きに傾いた、いい感じに操作しやすい角度で宙に浮いている。
俺が右を向けば、ウィンドウも右についてくる。ちょっと手で留める感じで止めておけば、右脇に待機させておいて足元の草を引っこ抜ける。
「あ、このゲームインベントリねぇな......」
結構重大なことに気がついたが一旦置いておく(!?)。
気がついたのは、ウィンドウってある程度自分の意思で動かせるよな、ということである。だいたい手の届く範囲にならどこでも置ける。ただ、下向きにさせるには地べたに寝そべる必要があるし、角度に関してはあんまり自由は効かない。
つまりだ。俺は今まで手で持って斬ることしか考えていなかったが、遠隔操作でも斬れんじゃね?と。
そんで、遠隔操作ってなんだか直線的に動いてるイメージだ。そうしたら、すぐぶっ壊なこの剣を上手く扱えるかもしれない。
「よぉし、そうと決まればアビリティを考えないとな」
思いつくところはやっぱりさっきの〈遠隔操作〉か、あるいは〈物体操作〉でも、いやいや、〈従剣術〉とか......
うんうんと悩んで、俺が選んだのは〈遠隔操作〉だった。あと、〈水平移動〉。
まず、手元でしか動かせないのは操ってる感がない。そして遅い。〈遠隔操作〉ありだと、まぁ半径1mくらいまで、レベルを1上げて2mほどになった。2mあれば、長槍くらいのリーチになる。
変形ではなく、別方面からリーチの問題が解消できたのはいいアイデアだった。
そして肝心の〈水平移動〉だ。これはもう、このウィンドウ攻撃の生命線とも言えるアビリティだ。レベル3にしてあげちゃう。これで残りは4ポイントだ。
〈水平移動〉は、レベルごとに移動可能距離とその精度、あと動きを阻害する力への抵抗が上がる。
〈変形〉で形をハリセン状にし、〈水平移動〉を起動する。掴んだ感覚は、レバーみたいだ。機械的でちょっと気持ち悪いが、この水平方向のみの運動が大事なのだ。
〈遠隔操作〉を使って、ハリセンウィンドウを動かす。うんうん、いい感じいい感じ。
試し斬りとして、またまたその辺に生えている木を斬り倒すことにする。
ダイジョブダイジョブ、ここの木をいくら刈ろうとも現実では一切環境破壊してないんだし。
なんだか色が濃くなったような気がする木に、〈遠隔操作〉でステータスウィンドウを切りつける。
「ゆけっ!!」
しゅぱ、と空気を切り裂く音を立てながら(出てない)ウィンドウが幹に迫る。
「んお?」
刃が、半ば程で止まった。こう、ぐぐっと押し返されるイメージ。
そして気がついた。木の根がぐにゃぐにゃと蠢き、葉をつけた枝が独りでに動き始める。
「おおっとぉ......」
よくよく見ると、幹にできたみっつのこぶが、なんかそれっぽい顔になっている。
「グモーーーーーーー!!!!」
「ぼく、木語わかんなぁい」
二度目の接敵である。
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動く木の魔物、と言ったらトレントが定番だ。
そして、対トレントの攻撃手段と言えば火魔法や斧攻撃だ。
「斧......」
とりあえずウィンドウは仕舞って、再度「ステータス・オープン」で召喚。敵にめり込んでも回収できるのは素晴らしい。
再召喚をすると形状が元に戻るので、〈変形〉を使ってまたうにょん、と縦に引き延ばす。
ちなみに、文字はちゃんとサイズやら行間やらを調整して収まりきるようになっている。
幾何学模様の入った剣、何かいいよね......今のところ俺の個人情報が公開されるだけだが。
俺は手元の斧と言うにはハリセンすぎる物体と、葉っぱをわさわさして威嚇してくる木の魔物とを見比べていた。
「行けるか......?」
いい感じのフラグが立った気がするが、まぁさっきまで散々木こりしてきたのだ。多分いける。
ステータスウィンドウはトレントに特攻があるはずなのだ。知らんけど。
膠着していたのは意外にも僅かな時間であった。トレント君(暫定)は葉っぱのわしゃわしゃをより大きくし、幹を仰け反るようなモーションをとった。
俺は咄嗟に左に飛ぶと、トレントの頭から葉が散弾銃のように放たれた
「ちょおま、ハゲても知らんぞ!!」
意外にも範囲が広く、右半身を掠めるように何枚かの葉が迫る。
咄嗟に手に持ったウィンドウを〈変形〉で盾のように引き伸ばし、攻撃を受け止めた、
なんてことはできなかった。こいつ、展開速度が遅すぎる。気分はアコーディオン奏者だ。にゅーって。陶芸家にもなれそう。
運良く1枚がピシッと当たってくれたが、脇腹と肩に一撃ずつ食らう。痛くないが、体感結構痛い(ゲーマー的に)。
「くっ、油断していたぜ」
別にしてなかったけど。悔しいから言ってるだけだよ。
実はこの攻撃、初見で見切るのはかなり難しいと言われている。
なんせ足元の根っこがうにょうにょしていて、いかにもそれで殴ってきそうなのだ。そっちに気を取られていると、案外大振りな仰け反りモーションでも対応が間に合わなくなってしまう。
このモンスターは、攻撃されるまで敵対行動を取らない。木を切り倒そうとしたプレイヤーは大抵近くにいるので、初撃は幹ぶん回し体当たり攻撃になるのだ。そしてくたばる。
あるいは、高レベルプレイヤーが素材集めのためにやってきた場合、一撃かその次の一撃で倒される。当事者からしてみれば、良い素材が取れるので、ラッキーだったとでも思うだろう。
また、あることをすると特殊行動を取るのだが、それはここでは省略させてもらう。
なので、まずこの攻撃はお目にかかれない、プラス初見殺し性能が高い、プラス技の火力も高く手数が多く範囲も広い。うん。
まぁ初心者......からすればク〇キャラ、である。
「斧......」
火魔法は持ってない。取る気もない。エンチャント......もする気は無い。
逃げるか?
否、こんな面白そうな敵、ぶっ飛ばして素材を剥ぎ取らないと。
ということで、トレント戦スタートだ。
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