ep2|ダサい。
第2話です
『スライムを倒した。経験値を獲得した。レベルアップ!APを10獲得した』
「はえ?」
スライムはぐにゃりと潰れて溶けるように消えた。そして、レベルアップを伝える通知が。
「いや、お前物理攻撃できたんか」
つい、ガチの素で板......そう、ステータスウィンドウに話しかけてしまった。
「oh、そうか。お前、そうか......」
清々しいオープンワールドのはずなのに、なんだかとても居た堪れなく窮屈な思いがする。
その発想はなかったわ。無我夢中で、ものすごくイラついていたから衝動的にやっただけなのだが、まさかこうなるとは思わなんだが。
だが、俺は思った。
「これ、めっちゃオリジナリティ」と。
ステータスウィンドウで戦うとか聞いた事ない。多分全人類やったことない。
まぁ、そう思っていて実は誰かの二番煎じでしたなんてことはザラにある。悲しいが、それが現実である。
しかし、そんなことを気にしていたらゲームは楽しめない。もしかしたら、まだ誰も発見したことのないかもしれないじゃないか。
ああ、そうだ、俺が、世界初......!
「世界初......!」
大好きな言葉なので口に出して言った。
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そうと決まれば、早速アビリティだ。
正直、俺はこの開拓に非常に可能性を感じている。
「何でも切れる極薄剣」!!
「絶対壊れない不可壊剣」!!
「幽霊も切れる魔法剣」!!
ああ、夢が広がる。この瞬間、自分でなんでもできるこの瞬間、好き。
「でも、まずはこんなところかな」
そして俺は、合計5つのアビリティを取得した。
これらのアビリティは、『ステータスウィンドウ』というカテゴリで纏められた。
それぞれ取得し、その後1APずつを投じてレベルを2に。取得したアビリティは、「レベル数分のAP」でレベルを上げることもできる。
これで、初期分の10APを使ったが、まだレベルアップ分の10APが残っている状態だ。
ここで思ったことがあると思うのだが、例えば〈全知全能〉だったりとか、〈GM権限〉と言った超つよつよアビリティも取得できるのか、できるならそれで全部できるようになるじゃないか、と。
結論から言うと、「取得することはできる」。
そんなものがあったらゲームバランスが崩壊してしまうし、俺の嫌いな最強環境アビリティが生まれてしまう。
と思っていたのだが、その辺しっかりしているらしい。
つまり、「1APあたりのリソース」というのが均等なのだ。
1APで取得したアビリティ〈全知全能〉と、同じく1APで取得した〈ラテアート〉は、同じくらの強さなのだ。全知全能というか、全部のことがほんのちょぉぉぉぉっとだけ分かる、みたいな......(ラテアートは、図形がそこそこ綺麗に描けるようになるくらい)
話を戻そう。俺がこの五つのアビリティを選んだ理由だ。
まず〈実体化〉。さっきの戦闘を振り返ると、やはり当たった感触がないのだ。なんでかダメージが通ったのだが、兎にも角にも相手に当たらなければ攻撃はできない。
そもそも、ステータスウィンドウの当たり判定ってどうなっているのかという問題なのだ。
俺はそれを検証するために、まずは地面やら木やらにウィンドウをぶつけてみたのだ。
うん、貫通。
普通にめり込むので、まったく武器としては欠陥すぎる。それはそれで壁越しに攻撃とかもできそうだが、透けるんだったら当たりやしない。
触れば感触はするのに、摩訶不思議物質だ。
そこで〈実体化〉である。
〈現実干渉〉とか〈物理攻撃性能〉とか表現の仕方はたくさんあるが、あんまりややこしくても、あるいは大雑把すぎても能力が扱いずらくなってしまう。と思う。
あと、実体化ができれば攻撃以外にも使い道が出来るはずだ。防御用の盾になったり、即席の足場にして跳躍したり、休憩時に腰掛けたりできそうだ。
嗚呼素晴らしき実体化。
早速取得、使用する。
「ステータス・オープン!」
フォン、と、この手のゲームにしては控えめな効果音が鳴る。いいね、ピコピコうるさくないのは好感度が高い。(通知の音は後で無効にした)
いつもと変わらない感じの、やっぱり薄青いThe不思議物体みたいな質感だ。
ただ、なんだか見た目がちょっとだけしっかりしたような気がする。
手のひらで触ってみても、まぁ石というかなんというかみたいな。
さて、これで攻撃ができるようになったのか。
俺はステータスウィンドウを鷲掴みにすると、試しにその辺の木に叩きつけた。
パリィィィィィィィィィィィィィィィ
「えぇ............」
どうしよう、ステータスウィンドウがぶっ壊れた。
・・・・・・え待って、ステータスウィンドウがぶっ壊れたんすけど。
「ステータス・オープン!」
やばい、音沙汰もない。
どうしよう、俺のオリジナルゲームライフが始まって3時間も経たないうちにオリジナル要素取得禁止縛りクソゲー化してしまった。
「っ!そうだ、アビリティ〈修復〉を......ってそのアビリティーを習得するためのウインドウがないんじゃああああああ!!!」
詰みました。お疲れ様です。
さらば、俺のVRMMOライフ。
「ステータス・オープン!くそ、HPが表示されない!どうやら俺達はこのゲームに閉じ込められてしまったようだ......」
仕方がないのでやり込んでいるMMOから異世界に転生して困惑する主人公(大体第一話での反応)ムーヴをかましてみたりした。
とかなんとかやってたらなんか普通に出てきた。
フォンって。
「うぉおおおおおお俺のステータスウィンドウ!!いなくなっちゃったと思ったよおおお!!」
感激した俺はステータスウィンドウを抱きしめた。
もしこの光景を端から見る人がいたら、〈目逸らし〉のアビリティをレベル2に上げたくなっただろう。完全に変人である。
どうやら壊れてしまっても、時間経過で治るみたいだ。あぶね。セーフセーフ......
というか、脆すぎる。
サクサク揚げたての米粉オブラートくらいの勢いで砕け散る。あれ美味しい。
そこで〈強度増加〉だ。まぁ、硬くなれば余計砕けやすそうではあるが、その時はふにゃふにゃさせるとか?いや、ダサいから嫌だ。
ついでに〈実体化〉と共にレベルを2に。心なしか重くなったステータスウィンドウ君を、今度は慎重に木に押し付ける。
「......おっ?」
ぐぐぐ、とそこそこ力を込めても耐えている。
一切変形しないから、「撓みすぎてもうやばいー」とかは分からないんだよな。
そして、体重をちょっとかけてぐいっと押すと、もっかい粉々に砕け散った。
身体の支えを失った胴体は、そのまま物理法則に従い俺の体を吸い寄せ、勢いそのまま鼻から木の幹に突っ込んだ。
体は痛くなかったけど、心が痛かった。
◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎
これは凄い。
何がすごいって、切れ味が。
さっきまでは面での耐荷実験だったので、次は縁での、線の攻撃を試す。
俺の予想では。というより期待では。
なんでもスパスパ切れる、絶対切断な剣ができるのだ。
そしてそれはある意味で正解だった。
濃い焦げ茶色をした、ゴツゴツとした樹皮。触るとパラパラと土くずが落ちてくる作り込みだ。
そこに、そろ〜とステータスウィンドウを差し込むようにして切断を試みる。
スっ。
「ギコギコはしません!?」
抵抗が無さすぎて切れてるかどうかわからない。また貫通してるだけかもしれない。手に持ったウィンドウを、木のまわりをくるくる回って切断?していく。
これで一応全面に刃が通ったはずだ。
体を押し付け、足を踏みしめて力いっぱい押してみる。
ぐぐぐ、と少しずつ幹は傾いていって、ふっと力が要らなくなるとそのままバキバキバキバキダァーンと倒れた。
「ほー・・・・・・すっげ」
断面は見事にツルツルだ。ヤスリかけてニス塗ったんかと疑いたくなるような出来だ。
縁をはしっと掴む手のひらをにぎにぎとする。
角やら辺やらを撫で回すが、やっぱり手は切れない。いや、ステータスウィンドウで手を切るとかおかしな話か......いやそれだと他のプレイヤーも攻撃できない、いやそれはそれでフレンドリーファイアがない武器ってことで......
傍から見るとステータスウィンドウを撫で回す人である。アビリティ〈目逸らし〉は早くもレベル3を想定した方がいいかもしれない。
切れ味については申し分ないので、次に改善するのはその使用に至るまでである。
「ステータス・オープン!」
毎回叫ぶのはそれはそれでダルいし、何よりダサい。小声で「ステータス、オープン(ボソッ)」とか言ってフード被ったまま突撃する不審者PKムーヴ......うーん、今んとこはなしでいこう。
なので、無詠唱で呼び出したい。よってここでは〈召喚〉を取得する。
頭の中でおいでおいで〜と念じれば、細かいレンガを積み重ねるようにしてウィンドウが構成されていく。
「おお......!カッコイイ......! 遅い」
おっそ。なんだこれ遅すぎだろ。
概算だが、30秒はかかってるだろ。
即レベル上げた。だいたい15秒くらいになった。
なんかいい感じのセリフを言いながらだったらギリなんとか持ち堪えられそう。
「お前はやはりここで〇さないといけないらしい......」とか
「この俺を本気にさせたこと、後で後悔しても知らないからな......」とか。
ゆっくりゆっくり抜剣して、「今殴れば勝てんじゃね?」とは思わせてはいけない。
......やっぱダザイ。ステータス・オープンでいいかも。
今んとこ高速召喚は優先順位高めの保留ってことで。
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さて、次の課題は見た目だ。
今のままだとまな板くらいの大きさの長方形を振り回すことになる。
言っちゃなんだが、猛烈にダサい。
というか、ステータスウィンドウを武器にするのは多分ダサい。主に絵面が。
性能に関しては申し分ないが、そこんところどうにかしたい。あとリーチもほしい。
そこでじゃーん、〈変形〉だっ!!
これでかっこいい剣の形、にはならなかった。
レベル1では、ちょっと長方形を引き延ばすぐらいしかできなかった。あと角がちょっと丸くなった。
これも即レベル上げ案件。レベル2だと、割と細く、割と長くできるようになった。幅5センチ、長さ40センチほどだ。
「......ハリセンやんけ」
見た目はハリセンだった。ただ、遠くから見れば剣に見えなくも無いかもしれない。
ハリセンウィンドウをいい感じに構え、木の幹を見据える。
「ヘアッ」
ピシ パリィィィィィィィ
一瞬で散った。
木にはちょっと切れ込みができた。
「・・・」
さっき言ったと思うが、なんでも切れる剣というのはある意味で正解であった。
ある意味では不正解であった。
なんせ、ちょっと力み具合がずれれば砕け散るのだから。
初心者が日本刀を扱えないあれと同じである。
あれよりもっと酷い。日本刀は剣筋がブレても粉々にはならないのだから。
ということで、この切断力を活かすには、両手でしっかり持ち、そーっと滑らせるようにするのが一番ということが分かった。
やっぱりダサい。
設定がねるねるねるねです




