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第5章 灯台の終わり
3日後、夜空にかすかに銀色の航跡が浮かぶ。
静かに、ゆっくりと、地球を通りすぎるように、宇宙の船が姿を見せた。
リナはピラミッドの前に立ち、石の残骸を胸に抱いた。
声が聞こえた。
「ありがとう。
君がいてくれたことで、わたしは“忘れられなかった”存在になれた。
それで十分なんだ」
空に浮かぶ光は、やがてゆっくりと消えていった。
音も残さず、跡も残さず。
ただ、「祈り」が届いたことだけが、静かに空間に満ちていた。
ピラミッドの石はその夜、風にさらされ、砕けて砂に還った。
しかし、リナの中には、確かに何かが残っていた。
「帰還の石」は姿を消しても、**“誰かが誰かを思う気持ち”**は、静かに灯り続けていた。
どれほど時が経っても、
空を見上げるたびに、リナは微かに感じるのだった。
自分の胸の奥で、かすかに石が鼓動しているような気がすることを――。