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第2章 忘れられた声
石との接触から数日間、リナは夢を見るようになった。
巨大な空、見たことのない星々、宙に浮かぶ記号の列。
そして、ひとつの存在――人でも機械でもない、“存在そのもの”のような何か。
夢の中で、声は何度も同じことを繰り返した。
「わたしは、地球に取り残された」
「あなたたちが生まれるよりも、ずっと前に」
「この石は、わたしの祈りであり、あなたたちの種の記憶でもある」
リナは気づく。
この石は「記憶媒体」であり、意志が宿った媒体だったのだ。
彼の名前は、アセト・オル。
太古に地球に降り立ち、地上の命と交信しようとした宇宙の観測者。
彼の声は哀しくも優しかった。
「あなたに受け取ってほしい」と、何千年も前から“誰か”を待ち続けていた。