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ネカフェ後輩を、私は……
「……なんて、私らしくないか」
駅のホームへ向かう階段。「待ってくださいよ〜」と言ってくる後輩くんを置いて、私は足早に階段を降りる。
さっき自分が言った言葉の恥ずかしさに若干頬が熱いが気にしない。
外と違って、人工的な光が駅の中を照らす。
「……宮本くんは、いつもそうだったね」
呟いた私は、ふと、高鳴る胸に手を当てる。
ドクンドクンと……鼓動が波打つ。
いつものスピードとは比にならないくらいの勢いで、その鼓動が鳴り続ける。
「君が悪いんだよ。宮本くん……」
そう言って後ろをむくと、かなり奥の方にその本人がいて。まだ大丈夫。と、胸の鼓動を噛み締める。
この気持ちを。
この感情を。
この心のざわめきの名前を、私はよく知っている。
恋だ。
恋なのだ。
私は彼に恋をしていて、彼を心から愛している。
好きなのだ。
彼の事が、『いまだ』好きなのだ。
両手をぎゅっと握りしめ、私は走ってくる彼を見る。
「……もう1回、君に好きって言わせるからね」
その言葉を胸の奥にしまい、私は彼の元へ向かう。