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セクハラ先輩は、たまにはデレを見せるのかもしれない

「まさか後輩くんと帰る方向が一緒だったとはね」

「先輩が同じ部屋に住めって言ってきたんでしょうが」


輝く夕日をバックに、部活を終えたふたりは、朱音の家に帰るため、駅を目指していた。


「にしても……まさか上茶谷がばかなめこ先生だったとは……」

「言ってなかったもんね」


忘れてた、と笑う朱音。


「そして、むっつりスケベだったとは思いませんでした」

「後輩くんの息子さんを元気にするイラストをかけるばかなめこちゃん……羨ましいなぁ」

「なぜ羨ましく思っているのかはあえて聞きませんが……」


そんな会話をしながら、ふと真太が朱音の方を見ると、何故かその顔は不機嫌そうで。

その視線に気づいた朱音は、「ふん」、と鼻を鳴らしてから、


「というか、ばかなめこちゃんと、一日で結構仲良くなったみたいだね」

「別に。……上茶谷の言う事、少し面白いなと思っただけです」

「私にはあんなに話しかけてくれないのに」

「セクハラ先輩に話しかける話題なんて、ありませんから」


口をふくらませて、むっとしながら真太の制服をちょいちょいと引っ張る朱音。


「私だって、君から話しかけられたいもん」


普段の下ネタムーブとは違う、朱音の真っ直ぐな眼差しと言葉に思わず面食らう真太。


「べ……別に先輩と話すのが嫌という訳ではないです。ただ、たまたま話題が湧いてこないというか……」

「猥談でいいじゃん」

「ちょっと可愛いなと思った俺の心を返せセクハラ先輩」


真太がそう言うと、朱音はそっぽを向く。


「可愛いとか、今言われたくなかったんだけど」

「知りませんよ。事実だったんだから仕方ないでしょ」

「へぇ、本気でそう思ったんだ?」

「ま、先輩美人だし」

「それはそうだけどさ」

「それ即答します……?」


褒めないって決めたんだった……と、過去に決めた事を改めて思い出す真太。


他愛もない話をしているうちに学校の最寄り駅に到着。

真太は駅のホームへ向かおうとするが、朱音が喉が渇いたと言い出したため、近くの自販機で飲み物を購入することにした。


「先輩は何を飲みますか?」

「君と同じものを飲むよ」

「じゃあ、麦茶2個で……」

「そうじゃなくて、君が飲んだお茶を飲むってことだよ」

「2本でいいですね」


さっさと購入し、ガタッと落ちてきたペットボトルを手に取る。


「冷たい……先輩。早く持ってください」

「後輩くんが間接キスさせてくれないから持たない」

「買ってあげてるんだからわがまま言わないでくださいよ」

「私は後輩くんが飲んだお茶を飲みたかったの」

「何だこの人……」


埒が明かない……と、ペットボトルの麦茶をゴクゴクと飲む真太。

容量の半分を一気に飲んだところで、「結構喉乾いてたな……」と呟き、朱音の前にそのペットボトルを差し出す。


「……え?」

「飲みたいんでしょ?飲んだらいいじゃないですか」

「え、でもこれ、後輩くんが今……」

「はい。しっかりと口をつけて飲みました。先輩が飲みたいって言ったから出してあげてるんですが?」


「俺何やってんだろう……」と現実に戻りそうな心を必死に抑え、真太はそのペットボトルを朱音に渡した。


「まさか後輩くんが反撃してくるとはね。お姉さん驚いちゃったよ」


そう言ってキャップを開け、そのペットボトルに口をつける。

ごくごく……と、朱音がお茶を飲んでいるだけなのに、そこれにはどこか淫靡な雰囲気が漂っており、真太はゴクリと生唾を飲む。


「んっ……ぷはぁ。うん。後輩くんの味がして美味しい!」

「先輩。完敗です。さすがに俺の味とか言い出したら、気持ち悪すぎて勝てない」


冗談だよ〜と、果たして本当に冗談なのか分からない言い方をして笑みを浮かべる朱音。


「先輩が言うと、冗談も冗談じゃなく聞こえます」

「それは良い意味?悪い意味?」

「……両方かもしれないです」


真太がそう言うと、朱音は「なにそれ」と軽く微笑する。

「……まぁそんな事はいいです。早いとこ、駅のホーム行きましょう」

「だね。そうしようか」


そう言ってから、朱音は先に駅のホームへと向かうべく、階段をおりていく──その直前に。




「あ、それと後輩くん」

「はい?なんです?」







「さっき可愛いって言ってくれて、嬉しかったよ」







こちらを振り向き、ほんのりと赤く染めた頬。

はにかんだようなその表情から発された言葉に、真太は胸を撃ち抜かれたように、その場で片膝を着くのだった。



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