七.五話 僕とルヴィエさん
「そういえば福崎君。あの時どうして戻って来たの?」
あのゴブリンの軍勢と戦ってからルヴィエさんと一緒に学園の依頼を受けることがなかったので、三日ぶりに声を掛けられた。
一緒に依頼を受けたら、さすがに依頼についてとか次の予定を話し合う――いや、話し合ったことなんてないから向こうから予定を告げてくるとかで声を掛けられることはあったけど、今回みたいな本来しなくともいいような会話になりそうなことで話しかけられたことは初めてかもしれない。
「一応、あの時答えたと思うんですけど」
「ええ。でも、あれだけじゃ納得できないわ」
「まあ、なんというか……。一応自分なりにも、ルヴィエさん一人に任せたことに罪悪感があったところに、デリックさんが一人でゴブリンの所に向かっちゃって……。それで逃げるのはちょっとなと思ったからですかね」
僕はある程度自分のことを客観的に見れてしまうから、あそこから逃げたことがどういうことなのかが分かってしまう。
で、あの時は小心者である僕は他の人がこのことを知ったとしたらどう思われるだろうという保身的な考えとか、本当にルヴィエさんに任せて逃げてもいいのかという罪悪感とかがあった。
そんなところに、デリックさんが一人でゴブリンの軍勢に立ち向かっていっていく姿を見て、あてられてしまったんだと思う。
そしてそのデリックさんの行動で、エルディーさんも自らおとりになるという決断をしたということも意識させられてしまったし。
「……そう」
ルヴィエさんの「そう」は、どんな感情から出たものかは表情とかからは分からないけど、今まで感じていた冷たい感じはしなかった。
「……あー、今回の依頼のゴブリン討伐どうしますか?」
なんか気恥ずかしくなってきた僕は、話題転換のために今日やる依頼について口にする。
「そうね……。私が前に出るから、福崎君は後ろから援護をお願い」
「えっ……」
いつもは実質何もしなくていいと言われていたから、援護という役割を与えられて思わず声が出た。
「……嫌なの?」
ルヴィエさんはいまいち感情が読み取れない表情で、僕のことを見つめる。
「いえ、そんなことないですけど……」
僕は面倒くさいなと思いつつも、なんか断る気にはなれなかった。
「そう……。じゃあお願いね」
「ええっと、まあじゃあ……、頑張ります」
今までみたいに見てるだけの方が楽だったのになーと思いつつも、そんなに悪い気はしなかった。
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