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二話 プロローグ2


 何とか一匹のゴブリンを倒した後、もう一匹のゴブリンは近くに来るまで息を殺して不意打ちをして意外と難なく倒せた。

 とりあえず僕のことを認識している二匹のゴブリンを倒したことで余裕が出てきたため、どうしてゴブリンの頭に剣が突き刺さるような状態になったのかが気になり、自分なりに考えてみた。


 一つ目の考えは実は天井に剣の柄の部分が突き刺さっており、偶然突き刺さっている部分が緩んでそのままゴブリンの頭に刺さったというものだ。


 これは前提条件の剣が壁にめり込むようにして突き刺さっていることさえもほぼあり得ないし、その突き刺さっている部分が緩んでゴブリンの頭に突き刺さるなんてどれほどの確率なのかという感じだ。


 二つ目は異世界の魔法で空間転移的なものがあり、ここにいない第三者がそんな魔法を使ってゴブリンの頭に剣を突き刺したというものだ。

 もしそうだとしたら、ここにとどまっていればその第三者が助けに来てくれるかも知れないけど、そうでなかった場合は状況が好転することはなく野垂れ死んでしまうだろう。


 三つ目は自分がやったというものだ。勿論、自分自身は何をしたかは分かってないけど、異世界に飛んだことによって得られた力を無意識に使った可能性はある。

 ただ今のところ、あふれ出す力的なものはなく何かしらの能力を使える気配もない。


 何故かゴブリンに刺さっていた剣は消えていたため、何かしらの条件で消える剣とかでもなければ、二つ目か三つ目の可能性が高いだろう。

 二つ目の考えだった場合は助けが来るかもしれないため希望が持てるが、それ以外だった場合はこの見知らぬ場所を自分自身の力でどうにかしなければいけないことになる。


 僕としては誰かが助けに来ることを期待して、ぬくぬくとしていたかったんだけど……。


「はあ……。考え込んでも仕方ないし、とりあえずここを探索するか」


 これからやることを決定づけるために、あえて声に出した。





 僕は石造りでできているように見える廊下で棍棒を引きずりながら歩いていた。

 最初は刃こぼれを気にしなくていい棍棒と相手の体に刺さったら致命傷を与えられる剣のどちらも持って行こうと考えていたが、その二つを持って行動していたところ、とにかく重くて大変だったのでどちらか一つにすることにした。

 

 最初は二つの中から選ぶときは剣を持って行こうと考えていたけど、確か血がついていると切れ味が悪くなるというのを聞いたことがあるので、長いこと使っていくことを考えて切れ味が悪くなるとかが起こらない棍棒を持っていくことに決めた。

 死体が身に着けていた鎧に関しては、着たくないというのと、あんな鉄の塊を身に着けながら動ける気がしなかったので置いてきた。


 で、今何をしようとしているのかというとこの城から出ようとしている。

 前提として何故ここが城であると考えているかというと、建物自体が石造りになっていて、いくつもの部屋がある。

 そして部屋の中には壁に木でできた窓があり、その窓を開けてのぞくと緑色に生い茂った地面が広がっていたからだ。


 次に何故外を出ることを考えているのかというと、おそらくこの城はずいぶん前に放棄された場所なため、人はおらず、食料があったとしても腐っていると考えているからだ。

 実際見つけた食料は腐っていたし。

 

 だとしたらここで暮らすことはできないため、外に出て人に助けを求める必要がある。

 最悪この城で過ごすとしても、やったことはないが動物を狩るなどして飢えを満たすために外に出ることは必要となる。

 よって、現状ここにとどまることはあまり利口な行為だとは言えない。


 僕は今までの考えの整理をしながら階段を降りていくと木でできた扉あり、その扉を開くと目の前には緑に生い茂った草原と、窓から見た時にはいなかった真っ黒な二足歩行の豚がいた。


「いや、なにあれ……」


 僕は平和な場所で生きてきたために戦闘経験などゴブリンとの戦闘しかなく、そのゴブリンと対峙したときは戦いが怖いとは思ったものの、震えあがるような何かはなかった。

 だけど、目の前の生物から感じる……。


「グモォ-!」


 黒いオーク的な生物は馬鹿でかい声を上げた後、でっぷりとした見た目と反してものすごいスピードで突っ込み僕の目の前にまで迫ってきて、ゴブリンが持っていたより大きい棍棒を振り下ろしてきた。


 使えそうだからと重さ的にギリギリ装備できた少し錆びているガントレットをとっさに盾にして、オークの振り下ろしてくる棍棒を受け止めた。

 

「ああぁぁぁー!!」


 なんなんだよ!なんなんだよ、これ!?腕曲がってる!

 痛い!痛い痛い痛い痛い痛い!!


 痛すぎて何も考えられず、どのくらいの時間か分からないが、痛くなくなるまで僕はずっと腕を守るようにしてうずくまっていた。

 なんとか何かをする気になった僕は顔をあげると、黒いオークのニタニタした笑みを浮かべていた。


 痛みがなくなってきて冷えているような感覚に陥っている腕や絶望的な現状を、恐怖を覚えないために考えないようにしながら、現状を打開する方法を見つけるために必死で考えを巡らせる。

 そんな何も行動しない僕に笑みを浮かべていた黒いオークは飽きたのか、僕の後頭部を目がけて棍棒を振り下ろそうとしてきた。


 また、さっきみたいに死が脳裏に過ぎると、黒いオークに僕が握っている棍棒と全く同じものが頭に目がけて飛んでぶつかった。

 黒いオークは頭への衝撃によって意識が飛んだのか、棍棒をドスンという音を立てながら落とす。


 僕はこの突然の棍棒が現れたことに驚きはなく、納得があった。なぜなら、その現象が自分のやったことだと自然と理解できたからだ。


「これが僕の能力、異世界転移の特典ってことか……」


 自分の力に気づいた僕は頭の中で一本また一本と今手にしている棍棒を増やすように念じた。すると、空中に三秒に一本づつ、棍棒が増えていく。


 意識が戻った黒いオークはその様子を捉え、怒りに満ちた表情を浮かべながら僕を見つめる。


「はあ、はあ」


 なにあいつ。めちゃくちゃでけーし、すげー力あるし。

 何とかなりそうな力を手に入れたっぽいけどすげえ怖いし、すげえ心臓がバクバクしてる。これうまくいかなかったら僕は死ぬのか?

 ハァ、ハァ、苦しい。


 僕は過呼吸になって酸素が薄くて頭に空気が回らなくてもう無理ってなりながらも、目の前にいる黒いオークに棍棒を射出する。


「グモォォォォォー!」


 黒いオークは腕を自らの顔を守るようにクロスさせて飛んでくる棍棒を受け、痛みのためか声を上げながらこっちへと突き進んでいく。


 僕は倒れろ、倒れろと祈るようにして唱えながら、考えが回らない頭にしっかりしろ、考えろと、無理やり脳みそを働かせて黒いオークの隙が出来る瞬間を見極めることに集中する。


 もう二、三歩という距離で、棍棒によって頭を守るようにしていた黒いオークの腕がはじかれた。

 僕はその好機のときに複製している予備がなかったため、これから複製される棍棒を待つか、今手に持っている棍棒で自分から殴りに行くかを悩んでしまった。

 黒いオークはその一瞬の隙を見逃さずに、僕の腹部へと右ストレートを放ってきた。


 反射的に黒いオークの右ストレートの軌道に棍棒を複製した。それでも、黒いオークの右ストレートが、棍棒が砕け散りながら僕の腹部へと貫通する。


「グハッ」


 僕は意識が朦朧として体が宙に浮ていているのを感じながらも、黒いオークが燃えているのが見えた。

 そして地面に倒れ込み、激痛と苦しみの中、意識が飛んだ。


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