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一話 プロローグ

これは二作目です。

つたない文章だとは思いますが、楽しんでくれたらうれしいです。

 

 キーンコーンカーンコーン。

 下校を告げる鐘がなり、下校前の挨拶する前から握っていたカバンのひもの部分を持ち上げて立ち上がる。

 他の生徒達が楽しげに会話をしているのが聞こえている中、早く帰ってゲームがしたい僕は一番乗りで教室の扉を開けた。


「……えっと、何これ?」


 扉を開けた先には本来あるべきはずの木造の廊下ではなく、石のようなものぽい素材で作られている見覚えのないものになっていた。


「何か新手のドッキリかな?」


 ドッキリを掛けて来るような友人もいなければ、テレビからドッキリを掛けられるような知名度もあるわけでもない僕は、思ってもないことを言った。

 そもそもドッキリで済むような規模ではないけど。

 じゃあなんでそんなことを言ったのかというと、ドッキリであってほしいという願望から出た言葉だった。

 それは教室を開けたら見覚えのない場所だったからというのもあるけど、それ以上に、大体成人男性の身長を半分にしたよりも少し高い背丈でボロボロの布を腰に身につけ、棍棒とかいう現代社会では見ることはない野蛮なものを持っている生物が二体いたということが原因だ。


 ……これ、もしかしてゴブリンとかそういう感じの奴か?肌も緑だし。

 だとしたら、もしかしなくとも異世界転生?いや、この場合は異世界転移か。

 そうだとしたらチートとかは言わないまでも、何かしらの能力がないと今の状況かなり不味いんじゃ――。


「グギャー!」


 キョロキョロと辺りを見回していたゴブリンらしき生物は、特に隠れずに突っ立ったまま受け止めづらい現状を整理していた僕を見つけたからか、奇声を上げる。

 でもって、周りの仲間らしきもう一匹のゴブリンも僕の方を向き、殴られたら痛いだけではすまないであろう棍棒を振り上げながらこっちに向かってきた。


 いやいやいや、何それ!?なんか予想できた展開ではあったけど、何も分からないまま異世界転移してきたばかりの人間にする仕打ちとしてはひどすぎないか!?

 アスリートどころかスポーツマンでさえない、体をまともに動かすことすらない現代人にさせていいことじゃないだろ!


 僕はこの理不尽な状況に怒りを覚えつつも、とりあえず逃げるためにここに出た扉があった方向を振り返ってみたけど、そこには壁しかなかった。

 まじかよ!と焦りを覚えつつ、襲いかかってくるゴブリン達に立ち向かうとか現代社会でぬくぬくと暮らしてきた僕では無理なので、逃げることを選択した。


「グギャー!!」


 幸いなことに耳障りな声を上げながら襲いかかってくるゴブリン達のスピードは僕より少し遅いため、運動不足ぎみの自分でも追いつかれないで済んでいる。


 でも、どんな構造の建物の中にいるか分からないし、進行方向のどこかで行き止まりにでくわす可能性もある。そして、他のゴブリン――それ以上の厄介な生物に出会うかもしれないという不安を感じながら、僕はとにかく走った。






 ゴブリンとの逃走劇が始まってからどのぐらいなのかよく分からないけど、ゴブリン達から距離が離れたところに途中で見つけた扉を開けて部屋に逃げ込み、上手いことまくことが出来た。


「あー、しんどい」


 僕は久しぶりに本気で走ったことで荒い呼吸をしながら、痛くなった横腹を手で押さえながら床に座っていた。

 本当は横になりたいんだけど、座りたくもないぐらい汚い床だからそれは我慢した。


「はあ、とりあえずこれからどうしよう……。このままじゃ絶対に不味いよな……」


 今僕が何を不安に思っているのかというと、ゴブリン達の足が僕よりも遅いおかげで逃げることが出来たけど、次に出会った時は逃げ切れる自信がないということだ。

 理由としては、僕は体力切れをしているけどゴブリン達がスタミナを切れらしているとは限らないからだ。

 身長差のおかげで僕の方が速かったんだろうけど、争いとかが日常茶飯事であってもおかしくなさそうなこの世界に生きているゴブリン達の方がスタミナの多い可能性が高い。

 だとしたら、今のままじゃ不味い。


 今のところ僕に出来ることは、またゴブリンに見つかったら逃げるのを続けるか、戦うしかないと思う。

 このままずっと逃げ続けるとしたら、何か起こらない限り自分が力つきるだけで終わる。

というか、いつ終わるのかもわからない追いかけっこをするのは精神的にも肉体的にも絶対に無理だ。

 ただ立ち向かったとしても、戦いなんてしたことがない僕なんかがどうこうできるものではないだろうし。

 でも、このまま逃げ続けるよりは……。


「グギャギャギャギャ」


 もう走り回りたくないという気持ちもあり立ち向かうことに心が傾いていた所に、ゴブリン達の鳴き声が聞こえてきた。

 僕がこの部屋で立ち止まっていたのはもう動きたくないからというのもあるが、鎧を着ている骸骨が銀色に光る刃物と共に横たわっていたというのも理由としてあった。


「……やるか」


 僕は死体からものを奪いそれに触るという忌避感を無視して、銀色に光る刃物――ショートソードのようなものを手に取った。

 鎧は死体が着込んでいたものだから着たくはないし、今から一度も着たこともない鎧を着込むには時間がかかりすぎて無理だろう。


 戦うための武器は手に入れたが、次はどうやって戦えばいいかということになってくる。

 まず、一対一ですら勝てるかも分からないのに、今は分かれているかもしれないけど相手は二匹いる可能性がある。

 それに素人の僕じゃあゲームとかアニメみたいに剣で一刀両断みたいなこと、いきなりできるわけない。


 ただ一つだけ、こっちにもアドバンテージがある。

 それは、相手はこっちの居場所がまったく分かっていないが、こっちは足音とか鳴き声からゴブリン達が大方どこら辺にいるのか分かるということだ。

 そしてそのアドバンテージは向こうに居場所を気づかれたら終わりのため、時間が過ぎればすぎるほどなくなる可能性が出てくる。


「なら、今行くしかないよな……」


 そう思ってもなかなか立ち上がれなかったが、体と心に気合を入れて何とか立ち上がる。

 ただ疲れていた中で立ち上がったためかふらついてしまい、壁の方にドンッと大きな音を立てながら手をついた。


 ヤバ!と思ったのと同時に、グギャギャという鳴き声と共にドスドスとこっちに近づいてくる音がどんどんと大きくなっていく。


 ヤバイヤバイどうしよう!?これでアドバンテージがなくなっちゃったし、心の準備が出来てないし!

 そんな風に僕が焦っていても、木製の扉からガンッガンッと耳を塞ぎたくなるような大きな音を立て、徐々に棍棒らしきものがめり込んできた。


「あ―もう、やるしかないだろこれ!」


 僕はゴブリンの顔と胴体が見えるまで穴が開いたところで、何も考えずに扉の穴に向かって剣を突き刺した。

 そうするとなんとも言えない気持ち悪い感覚と、グチャっという生々しい音が聞こえてきた。

気色悪と思ったら、ゴブリンは口から緑色の何かを吐き出し、その嘔吐物が剣と僕の腕に掛かった。


 うわ、きたねえと思って一瞬自分の腕の方に視線を向けた後にもう一回ゴブリンの方を見ると、僕めがけて棍棒を振り下ろしていた。

 この時に初めてゴブリンの顔をしっかりと見たが、苦しそうにしながらも必死な形相でこっちを見ていた。


 終わった……。

 そんな言葉がよぎったが、予想とは裏腹に僕が手にしている剣と全く同じものがゴブリンの頭上に突き刺さり、腕に力が入らなくなったのか棍棒を落とした。


「えっ……」


 もしかして自分以外の誰かがいるのかも知れないと思い後ろを振り向いたけど、ただの石造りの壁しかなかった。


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