前世の世界はよくある世界
主人公の身内がBLに目覚めますが直接的な表現はありません。
わたしはお父さんとお母さんの最初の子供でしたから、上には兄姉はいません。数年後には弟と妹も出来ましたが、小さいことから仲良くしてもらったのは三歳年上の従姉妹のヨウコお姉ちゃんです。
彼女は一人っ子でしたし、近所に住んでいましたから、とても可愛がってくれた大好きなお姉ちゃんです。
ヨウコちゃんは幼少期はおままごとをしてくれたり絵本を読んでもらったり、わたしが幼稚園に上がるころにはテレビゲームなんかもやらせてもらいました。
やがてヨウコちゃんは年を重ねる毎に、ライトノベルや漫画・アニメの二次作の深みに嵌まって行き、イベントなどに参加するようになります。
わたしも「超おすすめ!読んでみて!!」といろいろ読ませてもらいましたが、現実に異世界で暮らした経験がある者としては空想上で異世界を楽しんでいる人とは捉え方が違うようで、ヨウコちゃんのように夢中になることはありませんでした。ヨウコちゃんは「同胞にはならなかったか、ッチ」と舌打ちをしていました。
ヨウコちゃんのお伴で(割と無理矢理)イベント会場に足を運ぶこともあります。そこで見た“勇者”や“戦士”、“魔法使い”などのコスプレを見たときはとても懐かしく感じたものです。
“聖女”とされる女性のコスプレが、やたら肌の露出度が高い事を度々見かけることにはやや遺憾ですが。
それからまた何年かが過ぎ、ヨウコちゃんから貸して貰うライトノベルを読み、ゲームをプレイして、あらゆるイベント(ヨウコちゃんのお伴)に参加して、一つの結論に達しました。
わたしの前世、テンプレだらけじゃね?
国王の「おお!勇者よ!!」の台詞も、過去の勇者様がもたらした、という記録ではありましたが、食、為政、医療など数々のチートもほぼ全て前世で実際にあった事柄です(ついでに悪役令嬢系も婚約破棄系もありました)。
それらのおかげで前世の世界の発展は著しいものがありましたが。
しかしいくつも転移物、転生物、異世界物のラノベを読んでいると、遠回しに異世界の人物や世界観を下に見るような表現が多いような気がします。食チートにしても職チートにしても、果ては治政チートにしても、根本には「異世界人知らないんでしょう?」という意思があるように思います(超主観ですけど)。
こちとら元異世界の住人、しかも王族に近い貴族の上に聖女でもあり、民を導く立場としてかなり必死でした。新しい技術や知識を取り入れ善政を敷き、豊かな国とすることは民を導く立場の者の永久命題です。
その為、異世界の未知なる知識を持つ勇者様を引き留めようと城の者も神殿の神官も、わたしも自分達の世界の為に、皆あれこれ頑張っていました。…他力本願であることは否定しません。
全てのラノベや漫画がそうとは限りませんが、なんだかわたしたちの努力が嘲笑の対象にされているような気がしてモヤモヤします。その心境を吐き出さずにはいられません。誰かわたしのこの気持ちを聞いてくれないでしょうか。
しかし、誰かに話を聞いてもらおうにも子供のわたしの話を真剣に聞いてくれるのはおじいちゃんと中二病を小学生で発症したヨウコちゃんしかいません。そしてきっと、ヨウコちゃんに話したら「ついにセイも発症したのね…!」と言われるでしょう。中二病を否定する訳ではありませんが、わたしの場合病ではありませんから。
ちなみにヨウコちゃんの症状は「我の前世は大魔導師。魂の覚醒が成されれば今世でも魔法が使えるのだ!」というものです。夜の就寝前、眠れる魔力を蘇えらせるべく、瞑想の修行に勤しんでいます(この前ヨウコちゃんちにお泊まりに行ったらやってました)。
ですが、ラノベを教えてくれたヨウコちゃんは現在高校受験の準備で勉学に励んでいますし、おじいちゃんは勤めている会社の重役で忙しくしています。加えてなんだか最近経営の雲行きが怪しいお父さんの会社の手助けを(こっそり)しているみたいで突撃はかませません。
まだ幼稚園にも上がっていない弟妹はきょとんですし、両親も子供の妄想と思って「はいはい」と適当な相槌しかしてくれません。この時ほどお父さんに前世の記憶が残っていないことを歯がゆく思ったことはありません。
そこでわたし、ノートに元異世界の住人としての当時の思いや事実を書き綴って発散することにしました。
書いているうちに熱が入ってペンを握る手にも力が入ります。シャープペンの字が擦れて手もノートも真っ黒です。愛用の芯の濃さはいつの間にか2Hになりました。今時の小学生に珍しい筆圧です。
小学校の授業でパソコンの授業があり、タイピングを覚えると自前のパソコンに書き込む様になりました(現代社会で必要な物だからと、お父さんがくれたお下がりのノートパソコンです)。
パソコンはとても便利ですね。誤字・脱字があってもサクサク修正出来ますし、漢字もある程度知っていれば辞書を捲る手間を省けます。前世のインクペンと皮羊紙はほとんど一発勝負でしたので、鉛筆と消しゴムもとても画期的に思えます。
修正魔法の習得が採用の最低条件だった文官に是非紹介したいものです。
…はっ、もしかして、かつて召喚された勇者様もこんな気持ちだったのでは…?
ともあれ、数ヶ月もキーボードを叩いていればブラインドタッチもマスターしましたので、『わたしの前世の記憶』(データのファイル名)の執筆もどんどん進みます。
もちろん小学生としてちゃんと勉強はしてましたよ?執筆は趣味みたいなものです。というのはあまりパソコンに向かいすぎるとお父さんに「遊んでばかりいるんじゃない」と叱られてしまいます。わたしとしては遊びではなく、至極まじめに執筆しているのですが。
あまりに夢中になってパソコンに向かいうっかり貫徹してしまったときはとても怒られました。それから執筆は宿題が終わってから一時間だけとルールが課されてしまい、進捗はだいぶゆっくりになってしまいました。
そんなこんなで、わたしの前世の生涯を書き綴って一年。わたしが中学一年生になったある日。
宿題をサクっと終わらせて、夕食までの間にパソコンに向かっていますと。
「とうとうセイも中二病を発症したのね」
「ぎゃああああ!見ないでぇぇぇ!!」
めでたく受験戦争を切り抜け高校一年生になったヨウコちゃんがわたしの部屋にいつの間にか来ていました。夢中になって書き込みをしていたので全く気が付きませんでした…。
実は結構な時間覗き込んでいたヨウコちゃんは、全く気が付かないわたしに焦れて両肩を後ろからがっしりと掴んでとうとう声を掛けたようです。ヨウコちゃんガン見です。
さらに両腕を取られてパソコンをシャットダウンはおろか画面を隠すことも出来ません。ヨウコちゃん文芸部なのにどこにこんな力が…!?
ヨウコちゃんにうっかり読まれていた場面は、何の変哲も無い結婚二年目の夜会に向かう馬車の中での一幕でしたが、会話が恥ずかしすぎます。当時は全く気になんてしていませんでしたが、転生を経て今改めて思い返してみますと、でろでろ甘々、胸焼け必至の内容です。前世の自分の事ながら「このバカップルが!かあぁぁっ!」と思わずおっさん的なつぶやきが漏れてしまうほどです。思わずヨウコちゃんに忘却の呪文(禁術)を唱えてしまいました(もちろん無効です)。
「へぇ~、私が受験中にセイは創作活動に目覚めていたのね」
読まれています。わたしの『わたしの前世の記憶』が一巻から順にヨウコちゃんのラノベに肥えた目で読まれています。ヨウコちゃんは椅子に足を組んで座り、マウスのホイールボタンをグルグル回してパソコンの画面をじゃんじゃんスクロールして行きます。驚くべき早さです。
ちなみにわたしはヨウコちゃんに奪われた机の椅子の横で正座しています。特に強要された訳ではありませんが、なんとなくそうしたくなってしまいました。
「独特の言い回しとか、異世界人の目線で詳細に書いているのが新鮮」とヨウコちゃんは評してくれていますが、内心ドキドキです。何故なら記憶を頼りに書き綴って来ましたが、日常生活や魔王討伐に関することだけでなく、先ほど読まれてしまった部分以外に、黒歴史も含めかなり赤裸々なことも書いているからです。
うっかり見られた場面もそうですが、自分の内に秘めておきたいことは誰にでもあること。ですが詳細に全て、本っ当に全部書いています、わたし。元々誰にも話すことが出来ない元異世界人としての思いの捌け口として書き始めたものです。他人に見せることは無い事だし、と思っていたことが仇になりました…。
ヨウコちゃんは“聖女”の一番古い記憶、物心が付いた頃に遡って『わたしの前世の記憶』を読んでいます。
ちなみに『わたしの前世の記憶』は幼少期の一巻から現在執筆中の結婚して二年目の十五巻まであります。
一つの巻がかなりのページ数になっていますが、ヨウコちゃんはすでに三巻の冒頭に差し掛かっているようです。ヨウコちゃんの速読力に戦慄を覚えます…!
ですが、さすがのヨウコちゃんも読み切れず、わたしの足が痺れ夕刻となった頃、「全巻読破したいからUSBにコピらせて~」と言って常に持ち歩いている記憶媒体に『わたしの前世の記憶』を強奪してその日、ヨウコちゃんは帰って行ったのでした。
ていうかヨウコちゃん、何の用で来たのでしょう…。
次にヨウコちゃんが家に来たのは学校が休みの土曜日の朝でした。
家族揃って朝ご飯を食べているとヨウコちゃんが突然来て、わたしの部屋に連行したのです。なお、ヨウコちゃんは無施錠だとチャイムも鳴らさないで家に上がるのはいつものことです。
「ヨウコちゃんおはよう。朝ご飯食べていく~?」とのんびりしたお母さんの声が聞こえて来ましたが、返事も無しです。
腕をひかれ、二階に引き摺られるようにして上がり(ヨウコちゃん文芸部なのに以下略)わたしの部屋に飛び込むとドアに鍵をかけ、こちらをギュン!と効果音が付きそうな勢いで振り向きました。
ヨウコちゃんは朝から自転車を飛ばして来たのかやや汗ばみ顔が赤くなっています。その反面、目の下にはうっすらと隈が出来て何となく疲労の色が見て取れます。
そしてドシドシとわたしに近寄り、ガシッと両肩を掴むと「セ、セイさんよ…」とやや躊躇いがちに話始めました。
「貴殿はいつの間に、お、大人の知識を、身につけたのでござるですか…?」
…いつもとしゃべり方が違うヨウコちゃんに面食らって一瞬何を聞かれているのか理解が遅れてしまいました。
支離滅裂なヨウコちゃんが言うには、わたしのパソコンから強奪した『わたしの前世の記憶』の新婚編、初夜の様子を書き綴ったところまで読んでパニックになった模様です。
ヨウコちゃんが今まで読んでいたラノベは実に健全な全年齢もので、恋愛物もキスや抱きしめる等の比較的軽めの愛情表現までです。
意外にもヨウコちゃんは律儀に年齢制限を守ってラノベや同人誌を楽しんでいたようです。古今東西、思春期の男子だって一体どういうルートで手に入れるのかエ○本を所有していることも珍しくないといのに。…これはヨウコちゃんに失礼ですね。
もちろんヨウコちゃんがわたしに貸し出す本も同じ全年齢対象のものですし、貸されるものは読むけれどわたし自身はそこまでラノベにもハードブックにも積極的ではなかったので、まさか男女のあれやこれの詳細をすでに知っているとは思わなかったのでしょう。
わたしは成人どころか寿命を迎えるまで九十年以上生きた記憶があります。今生も合せれば百年以上です。精神だけなら若エルフ並です。
男女の酸いも甘いも、それどころか前世では子供が五人もいましたからそれはもう、その辺は熟知しておりますわよ?
ですが失念していました。
前世では、幼少期に聖女の素質を見出されて聖なる力を高めるべく神殿で修行をしておりましたが、いずれは還俗して唯一人の公爵令嬢と戻る身でしたので、淑女教育も並行して受けていました。
その一環に同世代の令嬢とのお茶会もありました。貴族社会に戻った時に備えて顔を繋いでおくという理由もありましたが、そこでの会話は今考えるとなかなかエッグい恋バナが多かったような気がします。
貴族令嬢は初潮が来れば家庭教師あるいは母親から閨の座学を受けます。ですからお年頃の令嬢になれば、特に仲が良い友人同士のお茶会となればそれはそれは深~いお話になることは当たり前のことで、現代日本の同年代と比べると早熟だったことは否めません。
だから、『わたしの前世の記憶』の一節はピカピカの高校一年生な純情ヨウコちゃんには大変刺激が強かったようです。
なにせよく考えてみなくても、ぜーんぶ書いてある『わたしの前世の記憶』はR指定ものです。それも十五ではありません。
ヨウコちゃんは順調に読み進めて行って、(前世の)わたしの初体験を読んでしまい、ここ二日ほど悶々として眠れなかった様子。そのせいで顔に疲労の色が見えていたのですね。
「なんで、可愛いセイちゃんが○○の事とか、○○○で○○の○○があ゛あ゛あ゛になることを知ってるの…。お姉ちゃんだってまだ保健体育レベル以上のことなんて知らないのに…。パソコンの検索制限解除されてたの…?情報大洪水現代社会のせいで知らないうちにセイちゃんが汚れてしまった…」
ヨウコちゃんは椅子に体育座りをして顔を膝に埋めてしまい、ブツブツ言い始めてしまいました。わたしはヨウコちゃんが座る椅子の横で正座です。なんとなく。
伏せ字の部分がわたしの日本語の知識の中に無いのでどういった意味かはわかりませんが、高確率で卑猥な隠語なのでしょう。…何故ヨウコちゃんがイロイロな言葉を知っているのかは追求しません。
なお、パソコンのインターネット検索制限はお父さんからもらった時からもちろん最強になっています。無料・有料アプリまで使ってこれでもかという徹底ぶりです。
前世で例えるなら魔法攻撃全般を無効化する上位結界魔法と物理攻撃を弾く最高級防御魔道具でガチガチにしている、と言ったところでしょうか。
おじいちゃんに乳幼児の頃から異世界と常識の違いを教わり、現代日本人の子供から逸脱しないように振る舞っていたのに、まさかのところでボロが出てしまいました。でも今なら健全な中学生らしからぬ知識を(図らずも)披露してしまったのはヨウコちゃんだけなのでなんとか誤魔化せそうです。
「ほら、理科の授業でさ精子~とか卵子~とかの授業があったし、保健体育の教科書見ると結構直接な事書いてるじゃん?そこから色々想像してさ。あとねあとね、この前カメちゃん(愛犬:ダックスフンド)の散歩で河川敷歩いてたらさ、どっかのバカが捨てたエッチな本が開いて落ちててね、ほんと、これは事故なんだけどそういうことしている写真見えちゃってさ、あ、ほんとほんと、わたし自らページなんて開いてないよ?ほんとだよ?なんか本汚そうだったし。触ったら手ぇ腐りそうだったし?でも使える!と思ったら結構具体的になっちゃってさ。でも年齢制限があるラノベとか漫画とかはまだ読んだことないよ?だってまだ中学生だもん」
よくこんなに言い訳がすらすら出てくるとは、自分自身でも驚きです。ですが、わたしが『わたしの異世界の記憶』で用いている言葉は、日本人として転生してから知った日本語のみでしたので嘘は言っていません。男女のなんやかんやの表現も、無限の想像力を持つ人間であればきっと思いつけるはずです。多分。そうすると、卑猥なことを考えているエロ脳中学生の烙印を押されるかもしれませんが。
時々涙目のヨウコちゃんがジト目でこちらを見てきますが、必死の言い訳の末なんとか誤魔化せたようです。
「セイちゃんは想像力がすごいのね…。創作活動をするのにほんと向いてると思うよ…」
その後「朝早くからひとんちに押しかけるんじゃ無い!」とお迎えにきたヨウコちゃんのお母さん(ちなみにお母さんもチャイムを鳴らさないで入って来ます)に連れられて若干よろよろしながら帰って行きました。朝ご飯は食べて行きませんでした。
今夜は眠れるといいですね。
『わたしの前世の記憶』の一幕に衝撃を受けたものの、ヨウコちゃんはどうにかUSBに強奪したところまで読み切ったようです。
翌週改めてうちにやって来たヨウコちゃんは「続き、楽しみにしてる(真顔)」と言ってくれたので、わたしの前世はつまらない物ではなかったみたいです。なんだかヨウコちゃんが妙にツヤツヤしているのが気になりますが、取りあえず体調は良くなったみたいで安心しました。
もともと誰かに見せるつもりで執筆をしていませんでしたが、ヨウコちゃんが楽しみにしているならこれからも張り切って綴っていきます。でも今後は、最低子供五人分のあるそういう場面は中学生らしく、全年齢向けのぼんやりとした表現にすることを固く誓いました。
やがて大学に進学したヨウコちゃんは晴れて成人向けの表現がある本も読めるようになり、「読んだら絶対抜け出せなくなる。今はその時では無い…」といって断腸の思いで手を出していなかった、BでLな薄い本にものめり込むようになりました。立派な腐女子の誕生です。
そういった本はまだ高校生になったわたしには読ませない分別はあったようですが「早くセイ先生と語れるようになりたいわ」と言いながら、男性同士の恋愛やほにゃららな事をぼやかしながら語ってくれます。どうやら高校生の時に中学生の従姉妹が書いた大人な表現で何やら先を越されたと思ったようで、わたしの知らない世界をどうしても先達として教えたい模様です。
ちなみにわたしが書いた『わたしの前世の記憶』を読んで以来、ラノベ関係の話をするときはヨウコちゃんはわたしを「セイ先生」と呼ぶようになりました。
でもねヨウコちゃん、前世では“衆道”というのが割と普通にあってね。それに人族の他にもいろいろな種族が存在していて、有性も無性も、男性しかあるいは女性しかいない種族もいたし、わたしが生きていた時代には完璧な性転換魔法も開発されていたりしてね(魔王討伐の仲間だった魔法使いが随分尽力した)、そういうのって割と新鮮みは無いのよ…。
それにBでLな本に相当する娯楽本も存在していて、特に城下の若い平民の女性の間では貴族と平民、王と騎士の身分差恋愛もの(実在の人物がモデル)なんか人気でした。…不敬にならないあたり、本当におおらかな王族貴族だったと思います。
なお、わたしの侍女が市井に降りた時に持ち帰った本を「庶民の間で流行っている衆道本です!」とお勧めされて何冊か読んだ事がありました。それを初めて読んだ時はさすがに驚きましたが、その前世の経験もあったせいでしょう。
わたしを驚愕させたいヨウコちゃんがその手の話を熱く熱く語りますが、目新しさがあまりなく反応がどうしても薄くなってしまいます。ごめんね、期待に添えなくって…。
ついにヨウコちゃんは「百聞は一見にしかず!」と言いながら、薄い本(年齢制限あり)そのものを持ち出して来ました、が。
「セイちゃんの何読ませてるのー!!」
何かを察知したヨウコちゃんのお母さんがヨウコちゃんの部屋に乱入してきて止められてしまいました。「高校生にはまだ早い!」とヨウコちゃんの秘蔵本を取り上げ、エプロンのポケットにねじ込んでしまいます。
ですがわたし知っています。ヨウコちゃんのお母さんはBでLなラノベが一等好物であることを。熟練の腐女子であることを(何故ならおじいちゃんが教えてくれましたから)。きっと後でその本を読むつもりでしょう。
つまりヨウコちゃんは叔母さんの遺伝子をがっつり受け継いでいるわけです。
高校生のわたしに現物を見せることは未遂に終わりましたが、ヨウコちゃんは仲間を増やしたいタイプの腐女子のようで、めげずにBでLな世界をプレゼンし続けました。「いつかセイ先生の創作物を拝見したいです」と熱望しながら。
そういった創作物は書いたことはありません(今も書いている『わたしの前世の記憶』は実話です)から書く事は約束出来ませんが、ヨウコちゃんと本の感想を語り合うことはとても楽しいです。十八歳になったらその方面の読書もチャレンジするのでヨウコちゃん、もうちょっと待っててね。
とりあえず大学の受験勉強させてね。お願いだからわたしの部屋にゲリラ的に突撃しないでね、土日にヨウコちゃんのお家に拉致らないでね、高校の校門前で待ち伏せしないでね(若干学校内で問題になってるよ)。
なんだかヨウコちゃん友達いないのか心配になっちゃうよ…。