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05 学園都市へ

******


そしてラムダが俺に弟子入りして一ヶ月後。

学園都市ルーツポリスへ向かう馬車の中、彼女は俺に牛乳瓶の底のように分厚いレンズが嵌められた丸メガネを手渡す。


「と、いうことでこれが変装用の魔術具です」

「えぇ……本気でこれかけるの?」

「そうです!これをかけることでその人の印象について『メガネ』という感想しか浮かばなくなる認知阻害の魔術が施されています!」


私もよく外を散歩する時はこれを使っていたものです……とラムダは昔を振り返るような遠い目をする。正直、こんなダサいメガネをかけてる人間が姫様だなんて認知阻害の効果を抜きにしても思わないだろう。


「ふーん、なるほどねぇ」


若干不服ではあるものの、これをかけずにで顔バレしたら、あの皇子からどんな横槍が入るかわからない。

メガネを受け取り、しぶしぶかけてしてみる。


「プフっ、うわー本当にメガネくんだ……プっ」


俺の顔を見て、ラムダはすぐさま吹き出す。

しかし、流石に失礼だと思ったのか、彼女はすぐに弁明する。


「いやいや、認知阻害の魔術はしっかり効いてるよ!ってことで、別に……その、可笑しいわけじゃ、プフっ」

「自分で渡したもの人に付けさせておいて笑うのやめてよ、怒るよー」


笑いを堪えて涙目になる彼女。

それに対して俺は「怒り」よりも「カワイイな」という感想が完封勝利をおさめている。

だから口では「怒るよ」と言いつつ、まあずっとこんな時間が続くのも悪くないな、なんてことを考えていた。


道中の馬車で学園に入る前の打ち合わせを済ませておく。

どうやら組合長が用意した俺の名義は「メルクス・マークリー」で「元冒険者の父に憧れて入学した」ということになっているらしい。


「あ、そうだそうだ……はい、これ生徒手帳!」


ラムダは肩掛けのバッグから学校の紋章の入った手帳を手渡そうとする。


と、グラッと馬車が揺れ、生徒手帳は床に落ちてしまう。

どうやら馬車が急停車したようだ。


「あ、ごめんなさい!揺れですべっちゃいました……」

「ん、いいよ気にしなくても……ってあれ?もう着いたのか?」

「いやいや、そんなはずないですよ!後2時間はかからないとおかしいです!」


俺は客車の窓を開け、馬車の御者に何事かと尋ねる。


「それが、山賊共が道を塞いでまして……」


御者のいう通り狭い峠道を検問するかのように山賊がワラワラと待ち構えている。

実を言うと、ラムダの修行に熱が入りすぎて出発したタイミング的に入学式に間に合うか結構ギリギリのラインだ。

ここはささっと俺がどこかに吹っ飛ばしてしまおうかと思ったところで、別のアイデアが浮かぶ。


「おーいラムダ!」

「はーい、どうかしましたか?」


呼び声に応じて窓をガラリと開け、ラムダが顔を出す。

目の前の状況を把握した彼女は気の抜けた表情から一変、引き締まった顔を見せる。


「山賊10人、伏兵は……なしですね」

「上出来だ、その調子で修行の成果見せられるか?」

「……フフッ、もちろんです!この日を待っていたんですよ!」


そういうと彼女は客車から飛び降り、山賊の真正面へと歩み寄る。


「嬢ちゃん、ここ通りたきゃあ金目の物全部置いていくんだなぁ!」

「……イクシーズ王国で関所を設ける権利があるのはその地を治める領主のみです。あなた方はここを治める領主様ですか?」

「ギャハハハ!おもしれー女だな!」

「おうおう、そうだぞ!俺らはここの山を縄張りにしてるもんだ!さあさあどうする?金品置いていくか?よく見たらお嬢ちゃん結構カワイイじゃねえか……特別に身体で払うのでもいいぜ!そしたら後ろの御者とそのヒョロいガキも見逃してやるよ!ガハハハ」


山賊のリーダーと思しき男はラムダをジロジロと品定めした後、定石通り(テンプレート)な提案を彼女にする。


「おい……そこの下郎、今師匠のことなんて言った……?」


ブチンッ、とラムダから何かがキレる音がした、ような気がした。


「……あー、ご愁傷様」

「あ、あのお……あの女の子一人で本当に大丈夫ですか?」


俺は目の前で未だにヘラヘラしている山賊に手を合わせ、お悔やみを申し上げる。

すると、不安げな馬車の御者が彼女一人で大丈夫なのかと尋ねてくる。


「言っとくけど彼女かなり強いから……ピンチになったら俺が()()するしね」


俺はこれくらいの敵であれば、彼女一人で蹂躙できると判断している。

思い返せば一ヶ月の修行で俺はラムダのスポンジの吸収力の高さに何度か舌を巻かされることになった。

かなりのセンスに合わせ、「勇者になりたい」という本人の目標も相まって熱心に訓練していたことも大きい。


そして、この修行期間で彼女の性格も、全てではないにしても大体は把握できた。


____彼女は冷たい炎のような、冷静な怒りを見せる時が最大の力を発揮する。


「……今から貴方たちには私の修行の成果を確かめるサンドバッグになってもらいます」


ラムダは身につけている呪文処理装置の腕輪を起動する


「____【勅命(オーダー)勇者変化(メタモルブレイブ)】ッ」


彼女の全身が赤みを帯びた光に包まれ、完全な戦闘態勢に入った。


略して「しかくまる」です


ちょっとでも「面白そう」「続きが気になる」と思ってくれればありがたいです!


さらにブックマークとか評価、コメントなんかしてくれると泣いて喜びます!

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