これが戦争、これも戦争7
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自分の領地に関するあれやこれやをやっているうちに明日が会戦の日になってしまいましたとさ。
準備は出来てるからいいんだけど……
よく考えたら俺、新興貴族だから譜代の家臣とかいないし、騎士もいないんだよね。
戦爵なのに。
戦爵なのに!
この世界においての騎士とは、領地持ちの貴族によって任命されたその貴族直属の部下だ。
人数は領地の規模に依存するが、小領の貴族でも2、3人は自分の騎士がいる。
リオンだったら、シュルムのおっさんを筆頭に50人くらいだったかな? リオンの領地は国境に近いので、平均よりは少し多めだ。
平時は村とその周辺の治安維持、裁判の議長など村のとりまとめなんかが主な仕事で、戦争が起きた時には主の軍に合流する部隊長ぐらいの役割だ。
領地持ちで騎士を連れて行かない貴族なんて鎧は着ていても剣も槍も持たないで戦場に行くようなものなので絶対にありえない。
だがしかし、今度の戦争で全軍の総指揮官であるこの俺には騎士がいないのだから大変だ。
というのも、よほどのことがない限りは騎士も世襲されるので自分の騎士を持たない領地持ち貴族など普通はいないのだが、俺の場合は違う。
王家は騎士を持たないので、王家の直轄地だった俺の領地にはただの1人も騎士がいない。
騎士の代わりに代官が派遣されているので村の管理は問題ないのだが、今回は騎士がいないことが問題だ。
騎士がいない領地持ち貴族ってけっこうメンツの意味でやばいんだけど、どうしましょうかね?
「セバス、騎士に当てはないか?」
「候補はこちらにございます」
さすがはセバスだ。
リストを見ると並んでいる名前は10人ぐらいで、領地の広さと村の数を考えればずいぶんと少ない。
まぁ、つい先日まで直轄地だったんだから、棋士を目指したりするような腕自慢は他領に流れるよな。
新興だってことを考えれば十分か……って、マジか!?
え、こいつら本気で騎士にするつもりなの?
Bクラス冒険者でも盗賊専門とかの対人が得意な連中じゃん。
普通に2級のやつも混ざってるんだけど?
こいつなんか拠点はカッツェだろ? こっちのこいつは王都が拠点だ。
なんでこいつらがドルーフェンにいるんだ?
つーか、本当にこんなやつらが騎士になってくれるわけ?
「戦爵閣下の武名は鳴り響いておりますので、ぜひともその旗の下にという方は後を絶ちません。そちらの候補に残った方も、自ら売り込みに来た方でそれなりの実力がある方に限定しております」
つまり、本当はもっといたわけね。
戦爵のネームバリュー舐めてたわ。
そりゃそうだよな。
戦爵家の騎士となれば、それだけで人生勝ち組だ。
男爵家の騎士ですらエリートなんだから、侯爵家相当の戦爵家の騎士は超エリートだ。
普通なら騎士の家に生まれないと戦場でよほど活躍しない限り騎士にはなれないのが、1人も騎士がいない侯爵家が突然生まれたんだから腕に自信があるやつが殺到するのも当然だろう。
「それと旦那様にお客様です」
「客?」
「セロドア様と名乗っております。なんでも王立学園時代の学友だと」
「ああ、知ってる。セロのやつか……何のようだ? とりあえず通してくれ」
「かしこまりました」
部屋から出て行くセバスの背中を見送り、いったいセロが何の用でやって来たのかを考える。
俺が学生だった頃の同窓生で、実家は領地持ちの子爵家だったはずだ。
何度か実地での授業や試験で同じ班になったことはあるが、リオンのように用もないのに顔を見せに来るほど親しくしていた覚えはない。
言うなれば、学校では会ったら会話するけど休日に一緒に遊びに行くほどではない友人ってところだ。
いったい何故来たのかを考えているところで扉がノックされ、入室を促すと金髪の貴公子然とした男が入ってきた。
面影は残ってるし、セロドア本人だな。
「お久しぶりです戦爵閣下」
「おう、久しぶり。堅っ苦しいのは嫌いだから、楽にしてくれて良いぞ」
「そうですか? ではお言葉に甘えさせていただきます」
物腰柔らかな感じは学園卒業以来会っていなかったが、ぜんぜん変わってないな。
「で、どしたん?」
「閣下の下で騎士として働かせていただけませんか?」
おぅ……単刀直入ですね。
「いいぞ。とりあえず、俺の騎士一号な」
「……いいんですか? 理由とかは聞かないので?」
「まぁ、為人は知ってるし、実力も学生時代に十分だったから問題ないだろ? 理由は聞いて欲しいなら聞くけど、正直な話どうでもいい」
俺に敵意を持っていたところでどうとでもなるし、学生時代の性格からすればその可能性はほとんどない。
まぁ、人間は変わるものだから絶対ではないけどな。
たぶん、家督も継げず、かと言って兄弟の下では働きたくない。冒険者やってたら、学生時代にそれなりに親しかった友人が出世したことを知ったから雇って欲しいとかそんな理由だろう。
学生時代に実家が嫌いみたいな話をした記憶がある。
「相変わらずですね、あなたは」
「そうそう簡単にこの性格は変わんねえよ。とりあえずお前は一等騎士だから。他の騎士次第だけど、そのまま筆頭も任せることになるから給料は期待して良いぞ」
「それはありがたいですね。妻と子どもがいるので少し心配してたんですよ」
「うわぁ……お前も墓場組? どこで出会ったの?」
「冒険者時代にパーティを組んでいたんですよ。子どもが生まれて彼女は冒険者を引退、僕も安全を重視するようになって稼ぎが減ってしまいましてね」
「安全重視なのに騎士になって良いのか? これから戦争だぜ?」
「あなたの下なら安全でしょう?」
意外と計算高いのね。
これも人生経験詰んだからか?
「ご明察だ。つーか、今回の戦争は俺も働く気はない」
「あなたが働かない? どうするつもりですか?」
「それは蓋を開けてのお楽しみだ。たぶん、今までに経験したことのない戦争を見ることが出来るぞ」
まぁ、俺らの年齢だと経験のある戦争なんて前の帝国との戦争ぐらいしか経験あるはずないんだけどね。




