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これが戦争、これも戦争6

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 必死の抵抗空しく俺は自分の領地となった地の領都ドル―フェンの中心にある領主館へと連行されることとなってしまった。

 長距離転移トラベルの魔法を使うから一瞬で移動が終わるのだけが救いだ。

 てか、転移先室内なの?

 普通にシシカいるんだけど?

 転移先ぐらい考えてくれません?

 あ、窓から町並みが見えるけど、聞いていた通りけっこう都会ですね。

 カッツェはカッツェ領の領都とは言え、いかんせん王都と距離がある田舎町だったので農村に比べれば都会だが、王都やこのドル―フェンに比べれば垢抜けないイメージがぬぐえない。

 その点、このドル―フェンは王都まで普通の馬車でも朝出れば夕方に到着するという近場なので、王都の影響を受けて非常に栄えている。

 なんだろう……東京に対する横浜みたいな感じ? その例ならカッツェは奥多摩ってところだな。

 今度会ったらリオンを田舎者扱いしてやろう。

 それぐらいの仕返しは許されるはずだ。


「お待ちしておりました戦爵閣下」


 勇者様パシリくん長距離転移トラベルの魔法で飛んだ部屋には見るからに執事といった風貌をした老齢のジェントルメーンがいた。

 見覚えあるな。

 たしか、あなた義兄の教育係って言ってなかった?

 もしかしなくても超一流の執事さんじゃない?


「わたくし、陛下より戦爵閣下の代官を務めるよう申し付かったセバスチャーノ・マルカと申します。どうぞセバスとお呼びください」

「うむ。知ってると思うが、カイト・コルネリアス・フォン・ドル―フェンだ。陛下より戦爵の位を賜り、この地の主となった。しかし、私は領地の運営には明るくない。陛下の教育係まで務めたあなたがそこを補うと言うのなら安心だ。よろしく頼むよセバス」

「うわっ……気持ち悪」


 おい、そこのパシリ兼アッシーくんよ、気持ち悪いとは何だ!?

 これでも元とは言え公爵家の次男坊だったんだぞ?

 きちんとした態度で接する相手にはそれなりの礼節を払うわ!


「身に余る光栄にございます。早速ですが、領地の運営に関しての書類がございます。目を通していただき、サインをお願いいたします」

「あ、はい……」


 ワゴンで運ばれている書類はけっこうな山に見えるけど、それ全部ですか?

 全部ですよね……

 今夜は寝られるのか?




「あぁ~終わった……」


 日もとっぷりと暮れた時間になってようやく最後の1枚にサインを終えることができた。

 これがあるから領主なんて仕事は嫌なんだ。

 今度からはセバスに丸投げしよう。

 陛下だってその辺をわかってるからセバスみたいに信用できて優秀な人間を送ってくれたんだろうからな。

 しかし、書類に目を通して分かったことは、このドルーフェン領と呼ばれる一帯は王国にとって――というか王家にとって非常に重要な土地だと言うことだ。

 まず第一に王都から近い。近すぎると言ってもいい。

 それに加えて、王都の南西に位置しているため王国の南部と西部から王都に行く場合、必ずドルーフェン領を経由する。

 これだけで経済面の心配が必要ないことが確定している。

 次に領地全体が農耕に適しており、王都の食料は大部分がドルーフェンでの生産に依存している点だ。

 王国の北部は竜の山に近いため全体的に山が多いので主な産物は鉱物資源だ。

 ドルーフェンが南部と西部からの壁になるため、ドルーフェンを経由せずに食料を入手するには東部に頼るしかないのだが、東部は農耕に適しているとは言い難い土地が多く、十分な量の食料を王都へ回す余裕があるとは限らない。

 今まで直轄地だったドル―フェンを渡すとは義兄もそうとう俺のことを買ってくれているようだ。

 これだけ信頼しているということの証明であると同時に自分への戒めなんだろう。

 俺を使いすぎれば、俺は義兄へ不満を持つ。

 そうなれば面倒なことをしないでもドルーフェンから王都へ行く物への関税を上げるだけで王都は大ダメージだ。

 俺というカードは非常に強力であるが、強力であるだけにその矛先が自分へ向かわないよう自らを戒めているのだ。

 つーか、自分が調子に乗ったら暴れる前に経済ダメージだけで済ませてくれってメッセージだな。


「終わった?」

「おう……なんでお前まだいるの?」


 ソファに腰掛けた勇者様パシリくんが紅茶を飲みながら不満たらたらの表情でこっちを見ているじゃあーりませんか。

 俺の送迎って仕事は終わったんだから自分の部屋にでも戻ってれば良いのに……


「戦争になるんでしょ?」

「まぁな」

「僕の仕事は?」

「ああ……そういうことか」


 戦いが嫌いな勇者様だが、帝国には恨みもあるし王国には恩もある。

 心境的には複雑だが、覚悟を決めて自分の仕事を確認しようとしてたってわけだ。


「ないよ」

「え!? ないの!?」

「最初は魔族の相手をしてもらうつもりだったんだけどな」

「……マジで?」

「マジで」

「魔族がいるとか聞いてないんだけど?」

「義兄上陛下とお前しか知らない情報だ」

「了解、誰にも話さないよ。でも、魔族が相手なのに僕は戦わなくていいの? 君が前に出るわけ?」


 皆まで言わなくても察してくれるのは助かるよ。

 不安に思うのも分かる。

 王国の一般兵だと魔族を相手にするのは厳しいからな。

 普通に戦おうとすれば、具体的に言うと魔族1人に対して5人の精鋭で当たる必要がある。

 どれくらいの魔族が出てくるか分からないが、王国で精兵と呼べるのはそう多くない。

 それこそ精兵全員を出すくらいなら勇者1人出した方が強力だし、戦力の計算も楽になる。

 が、今回はそれも必要ない。


「詳細は秘密だ。ただ、お前だってあの変態共の相手はしたくないだろ?」

「出来ることなら二度とごめんだね」

「俺もだよ」


 あいつらの相手は本当に精神的に疲れるからな。

 俺だって魔族を相手にするのは遠慮願いたい。


「まぁ君がそう言うなら僕はのんびりさせてもらうよ。好き好んで戦場に出たいと思わないし」

「お前はそれでいい。俺なんか出たくないのに出なくちゃならないんだぞ?」

「ご愁傷様」

「本当に変わって欲しいぜ」


 俺は苦笑を浮かべ、最後にサインした書類を記入済みの山へと乗せるのだった。


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