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ドラゴンの卵2

02

 ドラゴンとは、数多のファンタジーな世界観を有する物語において最強の名を冠する生物である。時折、そうでないものもあるが、まぁ多くの物語においては圧倒的強者だろう。

 少なくともこの世界においては、ありとあらゆる種族を比較した場合、まず間違いなく最強と呼ばれる種族である。

 まぁ、どこにでも例外というものは存在するが、例外は例外だから例外なのであって例外は例外として例外にしておこう。

 さて、そんなドラゴンであるが、その圧倒的な強さの他に特筆すべき点がある。

 ものっそいキレやすいのだ。

 マジでパなくチョベリバ(死語)で簡単にMK5(死語)になっちゃうんだYO!

 ……うん、意味分からないね。

 混乱しているんだ、勘弁して欲しい。

 まぁ、この世界において「誰々さんはドラゴンみたいだ」と言えば、くだんの誰々さんは非常に怒りっぽい人だとわかるぐらいにドラゴンのキレやすさは常識だ。

 ドラゴンがどれくらいキレやすいかと言えば、誰でも知っているような話がいくつもあるくらいに有名だ。

 その1、食べた魔獣の骨が喉に刺さり、イライラして山1つ消し飛ばした。

 その2、ドラゴンを退治しようとする軍とドラゴンに関わるべきではないとする軍がドラゴンの塒の近くを戦場に争い、うるさいという理由で両軍を・・・消し飛ばした。

 その3、「ドラゴンなんて大したことがない」と言ったと噂される勇者を消し飛ばした。

 その4、卵を盗まれたので、犯人をみつけるでもなく国を1つ消し飛ばした。

 などなど、数え上げれば切りがない。

 ちょっとイラッとしたぐらいで簡単に消し飛ばしてしまうのだ。

 と言うか、ドラゴンの話と言えば基本的にオチは決まって消し飛ばすの一言だ。

 それはさておき、お分かりいただけるだろうか?

 今回のこの状況はまるっきり『その4』に当てはまっているのだ。

 犯人はすでにご臨終しているが、ドラゴンにそんな理屈は通用しない。

 ドラゴンの思考回路というか行動は、卵盗まれる。キレる。暴れる。そして、結果的に国が滅びるのだ。

 一度キレれば、そう簡単には落ち着かない。

 この卵――ではないな生まれてるし、この竜の赤ん坊を返したところで結果は何も変わらないだろう。


「さて、どうするか……」


 けっこう距離が離れているとは言え、キレた竜ならばここから最も近い街を襲う可能性が高い。つまり、俺の拠点が襲われると言うことだ。

 まぁ、襲われると言っても対処法はある。

 先ほど、この世で最も強い種族はドラゴンだと言ったが、それはあくまでも一般的な話であって、先ほど例外にしていた例外にご登場いただけばいいのだ。

 ドラゴンが最強の種族・・であろうとも、個としてそんな常識をゴミ箱にポイっとしてしまう存在にいくらかの心当たりがある。そう言った、化け物(笑)たちを動員すれば、どうにか出来るはずだ。

 しかし、それはいざと言う時まで取っておきたい手段であって、出来ることなら他の方法が望ましい。

 化け物(笑)を動員するためには犠牲が必要なのだ。

 パシリくんAを召喚(笑)するためには、頑張って恩を売りつけて14個ほどまで貯めた貸しを減らす必要がある。相手がドラゴンだと考えれば2個ほど返済扱いにする必要があるだろう。

 1つの問題で2つも返済扱いにするのはもったいない。

 小間使いちゃん2号――は、ダメだな。ドラゴン相手だと殺される不安しかない。

 変態mk-Ⅲを動かすには29個ほど握っている弱みを使ってきょうは――くではなく、お願い・・・する時に思い出して口にしないと誓う必要がある。やっぱりドラゴンが相手だって考えれば2個ぐらいか? しかも、けっこう大きな弱みを交渉材料にする必要がある。

 やっぱりもったいない。

 あれもこれもと考えるが、どいつもこいつもこのぐらいの問題のために動員するほど気軽には動かせない。

 では、どうすればいいのか?


「放置?」


 いやいや、それはまずい。

 いくらドラゴンが最強の種族とは言え、こいつはまだ生まれたばかりの赤ん坊である。森の中でも最深部と言っていいこの場所を縄張りにしている魔物に教われでもしたら簡単に殺されてしまうだろう。

 なにせ、ドラゴンには勝てないが、魔物というカテゴリーの中で最強を決める際の候補で必ず名前が挙がるレベルの魔獣ばかりが闊歩する場所だ。

 先ほどの猪頭だって、オークの最終進化形で、オークキングすら雑魚扱いできる魔物なのだから。

 普通のドラゴンをレベル100としたら、この辺りにいる魔物はおおよそレベル40から60と言ったところだろう。このドラゴンベイビーはせいぜいレベル1ってところだな。

 さすがに、死ぬと分かっているものを放置するのは心苦しいと言うものだ。

 だったら、ここで親のドラゴンがくるまで待つか?


「それは面倒だな」


 完全に俺が当事者になってしまう。と言うか、そんなことをすれば、俺がドラゴンに襲われてしまう。それは普通にめんどくさい。

 なんか、考えるのもめんどくさくなってきたな。

 なんで俺が他人の尻ぬぐいの方法を考えねばならないのか。

 そうだ。そもそも、この問題はこの仏さんたちの遺品である卵から生まれたドラゴンベイビーが原因であって、遺品それらの処分はすべてギルドが責任を持って行うべきではないか。


「簡単な話だな。よし、こいこい」

「クォ? クォッ!」


 ちょいちょいと手招きしてやれば、一瞬首をひねるが、喜色満面と言った様子で胸に飛び込んでくるミニドラゴン。

 目がくりくりしていてなんか可愛いな。

 全体的にデフォルメされた可愛い感じのドラゴンって感じだ。ものほんのドラゴンも見たことあるけど、こいつとは似ても似つかないぞ。


「ちょっと苦しいかもしれないけど、我慢しろよ」

 

 ドラゴンをマントで包み、回収したその他の遺品も確認する。

 忘れ物がないことを確認して……猪頭の回収忘れてたな。

 改めて、忘れ物がないことを確認し、街へと戻る。

 ちょっとしたトラブルもあったけど、今夜は牡丹鍋だ。


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