Made
ヤギューの館の中は外観の危うさに反してとても美しかった
チリひとつない木の床に、俺の部屋の10倍はある広さの部屋がいくつもあった
そのひとつ、大きな宝石があしらわれた椅子のある部屋に入り、勢いよく腰かけると、ヤギューは呟いた
「さて、ロジエルスカ、来なさい」
ヤギューが指を左右に振ると
ゆかと天井に黒い染みが滲み、そこから水泳の着水の様なポーズでメイド姿の女性が現れた。
全身黒を基調としたフリルの少ないメイド服に、頭からは黒く渦巻く角が生えている
顔は整っていて、眼光が鋭い。キツめの美人という感じだ。胸は全く無い!
「お呼びでしょうか。ヤギュー。」
全く感情が読み取れない、どこまでも冷たい声で返事をするクールメイド
「ああ、また赤ん坊を手に入れてね、『変えられる』状態まであなたに預けるわ。しっかりね。」
今度はとても軽い口調で、ヤギューが命じる
「承知しました。」
そう言うが早いか、ヤギューから俺を受け取り、抱き抱えた
正直、ババアに抱かれるよりも美人の方が良かったので、役得だ
ロジエルスカと呼ばれているこのメイドは明らかに赤子を抱き慣れていると言った様子で、ジグよりもババアよりも居心地が良かった。
しかし、人とは思えないほど体温が冷たく、本当に生きているのか、そもそも人間なのか疑わしいところだ。
「あう(よろしくな)」
ひとまず『変えられる?』までの間らしいがロジエルスカが俺の育ての親になりそうなので挨拶しておいた
「では。部屋へ連れていきます。御用があればお呼び立て下さい」
そう言うと部屋を出て、階段を上がった右の部屋へと入った
「ここに寝ていろ」
俺をベッドに置き、冷たい口調でそう言うと部屋を出ていった。
久しぶりのベッドの感触に気が抜けたのか、謎の場所で赤子になったストレスで疲れたのか、俺はそのまま沈むように眠りについた。