夢想
「はあ、疲れた。まったく運動部なんて入るんじゃなかった。中学に引き続き帰宅部をやっていればこんなことには…」
なんてため息を着きながら服を洗濯機に脱ぎ捨てている男の名前はハセガワ タカヒロ、俺である
化粧台の鏡にはメガネを掛け、目の下に大きなクマがある、いかにもオタクといった風貌の男がいる、俺である
女子と話した思い出はほぼ無いに等しいという暗い中学時代を過ごした俺は
高校に入って心機一転『明るいヤツ』になろうと思い運動部に入部したのだが、破滅的なセンスと体力の無さにより同級生の足を引っ張ってしまっているのだ。
「妄想の中でなら、俺は美少女に囲まれカッコよく勝利するナイスガイなのに…」
平均的無双系アニメを夢想しつつ、シャワーを浴び終える
「ぐうおぉ…!」
銭湯で熱い湯に浸かった爺の様な声を出しながら、肩まで湯船に入った
「そういや、明日も朝練だっけ、か…」
そう呟いて天井を見上げた瞬間、急激な睡魔が脳を支配した
「うわ、やべ…これダメだ」
体に力を入れようとしても、手足は鉛のように重く、もはや意識を維持することさえ叶わず、俺の体は湯船に沈んでいく
「(あぁ…俺の人生ここで終わるのか……せめて来世は、可愛い女子と話しをした…い)」