第2話
美術館を後にして、家に向かってしばらく歩いていると、
ガサガサ…
突然、音が聞こえた。
「!?」
ベルは足をとめ、辺りを見渡す。しかし、誰もいない。
「・・・だ、誰!?」
普段全く人が通らないこの場所で、こんな事は初めてだった。ベルはしばらくその場に立っていたが、音は聞こえない。
「何だったんだろう」
ベルはまた歩き始めるが、またしばらくすると同じようなガサガサという音が聞こえた。
コツコツ・・・
次は足音までし始めた。
(やっぱり、誰かいる?)
「…誰かいるんですか!?」
ベルは叫んだ。
「いるんだったら、隠れてないで出てきてください!」
すると、背後に気配を感じた。振り向くと建物の上に、1人の少年が立っていた。
風になびく白髪に、大きく鋭い赤い瞳がベルを見ていた。スーツぽいお洒落な服装に、すらっとした身体・・・そして、漂うオーラ。
ベルは彼から目を反らせずにいた。少年はニヤリと笑みを浮かべ、
「さっきは残念だったな」
気づいた。今、目の前にいるのはあの、怪盗ホワイトテイルだという事に。
「ホ、ホワイト・・・テイル!」
ベルは驚きのあまり、足が動かなくなっていた。
「正解♪俺が、ホワイトテイルだ」
ホワイトテイルはまたニヤリと笑い、建物から飛び降りた。
「お前が美術館に行ってるところを見て、面白そうな奴だなって思ってさ」
「僕を、見ていたの…?」
「あぁ、そうだ」
ホワイトテイルの表情は、明るい。
「警察に通報するか?…別に構わないんだぜ。通報したって。俺は何があっても捕まったりしないからな」
「通報は、しない」
ベルはそうはっきりと言い切った。
「ほう、そうかい」
「・・・っ!」
ベルは内心、焦っていた。僕は今から何をされるのだろうか。もし、銃でも向けられたりしたら…
「・・・俺の勘は正しかったようだな」
「・・・え?」
「俺とお前、真逆な人生かもしれないが、気が合いそうだなって思ったんだ」
「いきなり何を…」
「通報なんて、死ぬほどされてるけどな。まぁ全て逃げ切ったけど。・・・で、お前、何。俺に何かされるとても思ってるのか?」
「まぁ・・・そう、だね…」
「俺が、お前に何をするって?殺人か?それとも、金をよこせって?」
ベルは何も言えなかった。
「俺は何もしないよ。俺は人は絶対に殺さない。ただ、物を奪いたいだけなんだよ」
「…君は、なんで、怪盗なんかに・・・?」
ベルはそれが一番最初に頭に浮かんだ素朴な疑問だった。何故、彼は何のために、怪盗になったのか。
しばらく黙っていたが、ゆっくりと口を開けてこう言った。
「・・・俺には、目的がある」
「目的?」
「あぁ。絶対に叶えなくちゃいけない事があるんだ」
「その目的って、何なの?」
するとホワイトテイルは、ゆっくりとベルに近づいてこう言った。
「お前、俺の相棒にならないか?」