恋の魔法
好きな人の為に、一生懸命努力する女の子はとても可愛いと思います
女の子は恋をすると綺麗になるって言うけど
今までそんなこと信じてなかった
でもね・・・
いつもの休日ならヤドカリよろしく潜り続けるベットに別れを告げて、クローゼットの扉に掛けてある服を手に取る
昨日、散々悩んで決めた服。
靴もアクセサリーも髪型もバックに至るまで今日のコーディネイトは完璧にしなくちゃいけないから。
天気予報もNHKからネット、データ放送果ては気象庁のサイトまで見た
そのおかげで昨日の予定の通りの服を着ることができる
買ったばかりの若草色のワンピース。
マキシ丈でレースとフリルが裾についているのがとても女の子らしい
普段、パンツスタイルのかっちりした服装が多いし、基本通販や安価なユニクロとか多いけれど。
この間、私が着た若草色のカーディアンを見て『似合う』って貴方が言うからほんの少しだけ冒険してみた
それの上に、デニム生地の丈の短いジャケットを羽織って、ベージュの編み込みレザーベルトでウエストを絞る
これで少しはスタイルがましに見えるといいんだけど・・・
鏡の前で丁寧に、丁寧に髪を梳かしていく
一昨日は、美容室にも行ってきた
貴方が、髪が綺麗な子が好きだって聞いたから
しっかりトリートメントもして、ブローも教えてもらった通りにやった
そしたら、自分でもびっくりするくらいさらさらなの
そりゃ、テレビで見る女優さんみたいにつやつやな髪じゃないけどそれでも、頑張ったんだから
最近出たばかりの新色のグロス
大人っぽいのに媚びない感じのピンク
つけまは・・・練習してみたけど結局上手く出来なかったの。だからビューラーで持ち上げるだけ
もっと目が大きければいいのに
ネックレスはアクセサリーケースに入れっぱなしだったのを引っ張り出してきた
安物だけどリボンの結び目の所に私の誕生石のローズクォーツがあって可愛い
私のお気に入り。
バックはベルトとお揃い。
思わず衝動買いしちゃった一品だけど、中々に使い勝手も良くて気に入っている
靴はほんの少し背伸びして、いつもより3cmアップ。
ちょっとでも貴方の見ている景色に近づきたいの
玄関にかかってる姿見の前で一回転
頑張ってセットした髪とネックレスとスカートが揺れる
鏡の中の私が照れ臭そうにはにかむ
なんだかくすぐったい
私が私じゃないみたいね
って、もうこんな時間なの!?
待ち合わせ場所まで20分ぐらいかかるのに
取りあえず、今から出るって連絡だけ、でも
…えっ、ちょっと
携帯何処!?
玄関の床に鞄の中身を拡げて、大捜索。
急にカノンが鳴り響いたが、すぐに切れた
内ポケットが光っていたので、探ると無事に携帯を発見。
メールの着信表示が出ていたので、開けてみると…
あっ、やば。
即座に返信をして、玄関に広がっているのも質を雑多に詰め込んでいく
扉を勢いよく閉めて、階段を駆け下りる
エレベーターが来るのを待つ時間すら惜しい
5分くらい、遅れてしまった
ああ、やっぱり先に来てる
サンダルに気を付けながらも、噴水へと急いで近寄る
気が付いてくれたくれたみたいで、携帯から顔を上げて
こちらに手を振ってくれる
笑顔にほっとした反面、凄く申し訳ない気持ちにもなった
「遅れて、ごめんなさい!…待った?」
本当にごめんなさい。
初デートで遅刻とは、自分でもないと思う
朝、起きた時にはそれなりの余裕があったはずなんだけど。
「10分くらいかな。…俺の方が待ち合わせより先に来てたしそんなに気にしなくてもいいよ。
…でも、どうしても気になるっていうなら、この後何か奢ってもらおうかな」
ニヤリと意地悪な笑みを浮かべて、私の手を握ってくる
確かに、遅れた私が悪いけどもうちょっとこういう時のテンプレートな言い方ってものがあるでしょ
まあ、知ってるけどね。
そういう人だって、分かっててそんなあなたを好きになったんだから。
そうじゃ無かったら、こんなにオシャレして、今日を待ち望んだりしないもの
繋がれた右手に心臓があるんじゃないかってぐらい、今ドキドキしてる
「分かった、じゃあ水族館入る前にアイス食べよう。
暑かったでしょ」
顔も赤いし、掌も私と同じぐらい熱いから。
「そうだな。うん、そうしようか。
ほら、行こう!
…食べる時、気を付けろよ。
それと、後
今日のお前、凄い可愛いから」
良かった、頑張って。
でも、顔見て言って欲しかった…やっぱり、いい!
貴方と同じくらい私の顔も赤いから
ギュッと、繋がれた手を自分からより強く繋ぎかえす
次も頑張ってオシャレしてくるから。
また、言ってね。




