第3話 守護者〈ガーディアン〉フール
前回からかなり間を空けてしまい、申し訳ありません。
言い訳すると、5000字過ぎた所で寝落ちしたら消えていたと言うハプニング&テストがあって遅れました。
次はもう少し早く投稿できるよう努力します。
…………あれ?俺は何でここで寝てたんだ?
目が覚めると、見覚えのある天井が目に映った。
すぐに分かった。何度もお世話になった、ギルドの医務室だ。体を見ると、服も患者用の服に変わっていた。
しばらくボーッと天井を見つめたあと、なんでここにいるか記憶を整理する。
おかしいな。確か俺は昇格試験を受けて、クリアしたんだよな。そんで救助の発煙筒を見て、オーク達と戦って、それから……………………そうだ。
一度死にかけて、ペンダントが光って、変な女の子に助けられたんだ。
矢を受けた左腕を上げてみた。
……うん、動く。肩に痛みも感じない。
本当に傷が無くなってる。
いや、そもそもあれは現実か?しかし、だとするとどこからが夢だ?なんで俺はここにいる?
「あ。おはようございます、ご主人様♡」
「へ?」
思考に没頭していると、突然、横から声が聞こえてきた。声のほうに顔を向けると、すぐ目と鼻の先に桃色の髪の少女の顔があった。
…………………………………………………。
「どわあああああああああああっ!?!?」
ドッターン!
「な、なななな!だ、誰だ君は!?」
俺はあまりの驚きでベッドから転げ落ちた俺の質問に、少女は悲しそうな顔をした。
「だ、誰だ君はって!非道いですご主人様!昨夜、あんなにも私の身体を、まるで獣のように求めてくださったのに!それなのに忘れるなんて……よよよ」
「嘘を言わないでください!!」
ぶっ倒れて今まで眠っていた人間が彼女に何か出来る筈がない!あと嘘泣きすんなら顔を隠している指の間からチラチラ見んなよ!
「チッ、バレたか」
「舌打ちかよ!」
なんつー態度だ。ついツッコんでしまった。
少女はバレた途端嘘泣きをやめ、咳払いをして、ニコリとこちらに笑顔を向けてきた。
「まあ、冗談はさておき。おはようございます。ご無事で何よりでした、ご主人様」
「え?あ、ああ、はい……」
突然の切り替えに少し驚きつつ、助けられてすぐに気絶したので、まだお礼を言ってなかったことに気付いた。
……変な娘だが、命の恩人だ。お礼を言わないのは失礼だろう。
「助けてくれてありがとうございます。君は命の恩人です」
「キャッ!そんな面と向かって言われると照れちゃいます♡そんなにかしこまることなんてありませんよ。私は当然のことをしただけですから!」
…………何だろう初めて会うタイプの娘だな。ていうかご主人様って…………。
俺の礼に、クネクネと身体をくねらせながら照れているのを見て分かったのは、この少女、絶対ブってるな、ということだった。
「おや?ずいぶん元気だねリュート」
「あっ!マスター!」
いつの間に医務室に入ったのか、顔に傷のある長身の女性、ギルドマスターがこちらに近付いてきた。俺は急いで立ち上がろうとしたが、立ちくらみを感じ、ベッドに手を付いてしまった。
「まあ3日も寝てたからな、座ってろ。だが大事なさそうだな」
「は、はい。ご迷惑をおかけしました」
と言うか3日も寝てたのか……相当ヤバかったのかもしれない。俺はベッドに座り直してマスターのほうを向く。ちなみにあの少女は、俺がベッドに座るとベッドから降りて、脇にどいてくれた。
「いや、良いさ。こうしてちゃんと生きてるしな。うちのモンが死ぬのは、流石の私も嫌だからね」
「マスター……」
ヤバい、ちょっと涙が出そうになった。
「それにお前の葬式代はこっちが受け持つことになってるし面倒くさいからな。死ななくて良かった良かった」
「マスター……」
すいません、今別の意味で泣きそうになりました。
「さてと、お前も起きたことたし。伝えなきゃいけないことと、聞かなきゃいけないことがある。まずは……」
そういってマスターはポケットから一枚のカードを手渡してきた。
「ほらよ、お前のギルカ、更新しておいたぞ」
「あ!ありがとうございます!」
マスターが渡してくれたカード、〈ギルドカード〉は、冒険者の証である。カードを見ると、ランクについて書かれている場所には、「B」という文字が書かれていた。
……これで、ようやく俺もBランク冒険者になったのだ。
「さてと、んじゃあ次に質問だ」
「あ、はい」
マスターのその言葉につい、姿勢を正した。何だろう?
「単刀直入に言うよ。リュート、お前どこでそいつを手に入れた。そんで、どうやって契約したんだ?」
そいつ、と言ってマスターが指差したのは、あのピンクの髪の少女だった。少女の方を向くと、ニコリと愛嬌のある笑顔をこちらに向けてきた。
「…………すいませんマスター?言ってる意味がよく分からないんですけど……」
「……ふむ、知らないかい。じゃあ、質問を変えるが、こいつはどこで手に入れたんだい?」
そう言うとマスターはベッドの脇の見舞いの品を置く台に近づいた。台には俺の剣も立てかけてあり、マスターは台の上に置いてあった物を俺に見せた。
俺が持っていた、5枚の花弁の花のペンダントだった。
俺は正直にそのペンダントを手に入れた経緯を話した。
「ふーん……成る程、合点がいったよ」
「あのマスター?そのペンダントに何が……?」
マスターの態度を見ていると不安になる。何か、
持っているとやばいのだろうか?
「ああ、そうだね。お前も知っておかないとな。リュート、こいつは〈守護者の証〉と言われる〈宝具〉だ。そしてどういうわけか、お前はこいつに封じられていたフールちゃん、そこの女の子の〈ガーディアン〉と契約した、らしいぞ」
「……………………はい????」
……は?宝具?ガーディアン?契約?どういうこと?
俺は混乱して、マスターと少女の顔を交互に見た。
「ではでは、私が説明と改めての自己紹介をさせていただきます!私はあの糞お……ごほん!〈英雄王・ギルガメッシュ〉が作りし宝具、22体の〈ガーディアン〉の一体、名をフールと申します。どうぞ、不束者ですがよろしくお願いします、リュート・リード様!」
「愚者?」
「はい!あのタロットカードのフールです!」
少女、フールは頭を下げながらニコニコと輝く笑顔を向けてきた。
「えーっと…………フールさん?」
「『さん』はいりませんよ。『フール』で良いです。もしくは『フーちゃん』でも、『お・ま・え♡』でも、もちろん『ハニー♡』でもOKです!」
「………………じゃあフールで……えっと、フール。聞きたいことがあるんですけど」
「はい!でも敬語もいりませんから、気軽にいってください!」
とフールは指摘してきた。しかしそんな指摘をする彼女の顔はとても楽しそうだった。まるで俺と話すのが心底楽しいと言うかのように笑っている。
まあ、それは置いといて。
「まず、君が名乗った〈ガーディアン〉ってのを教えてくれ」
「はい!ではご主人様、確認ですが宝具は知ってますよね?」
もちろん、と首肯して答えた。
〈宝具〉。
それは、ギルガメッシュ王が自身の従者たちに与えた神秘のアイテム。これは、半神半人であるギルガメッシュ王が、自身の神の力の象徴であり、具現化した武器である〈神器〉の力を、人間でも扱えるように劣化コピーして作った「神器の贋作」の総称である。
その力は、神ならぬ人の身には充分で、強力な宝具になれば一撃で都市を破壊することが可能らしい。現在、その多くは世界各地に存在する迷宮の最奥に眠っているらしい。
「私はその宝具の一つで、凄まじい能力を持った存在の魂に再度肉体を与え、契約者の従者として仕え、契約者を守護者として守る宝具なのです。とはいえ、私を含めた22体は全員、名称の呪いによって本来の力を封じられていますけど」
「名称の呪い?」
「早い話が偽物の名前を対象に与えてその存在を貶めると言う呪術です。私達ガーディアンは、タロットカードの大アルカナの名前で真名と共に存在を封印されました。当然ですね。誰だって飼い犬に手を噛まれたくはないですし」
「へー。初めて聞くな、そんな魔法」
「では続きを説明しますね。私達はマスターと契約するまでは、〈守護者の証〉と呼ばれるアクセサリーに封じられます。因みにご主人様の傷が治ったのは、『契約時に、契約者を万全な状態にする』と言う機能によるものです。まあ、仕える相手が今にも死にそうなJJIやBBAだったら契約した意味が無いですし、当然の処置ですね。寿命ならそのままポックリですけど。とまあ、一通りご説明いたしましたが、何か質問は有りますか?」
ふむ、大体ガーディアンについては分かった。しかし、更に謎が増えたぞ?
「何で俺は君と契約できたんだ?だって俺、〈加護無し〉だぞ?そもそもいつ俺は契約したんだ?」
そう、まず宝具を使うには魔法を使う力、〈魔力〉が大量に必要なのだ。
ちなみに、現在世界中で普及している魔力で動く〈魔法具〉と呼ばれる道具は、宝具を解析し、一般人でも使えるように開発されたものである。
「私もそこら辺が気になって、契約したあんたも知ってると思ったんだがやっぱり知らないか。フールちゃんもお前が起きてから話すっていってたし」
と、マスターが言った。
成る程、だからあんな質問をしてきたのか。
「はい、ご主人様は魔力の代わりに〈気〉の力を代用して私と契約したんです」
「キ?」
「簡単に言うと、魔力とは別の身体エネルギーのことです。契約についてですが、こちらは私の〈証〉に『もしご主人様に命の危機が迫った場合、〈気〉を使って私と自動的に契約する』という術式が書き込まれていました。この術式は元々から有るものではなく、『ご主人様に私を与えた者』が付けたものだと思います」
……………ちょっと待て……………。
……………それって、つまり……………。
「ふーん、そう言うことか」
「え?な、なにがですか、マスター?」
フールの話を聞いて、マスターはしきりに頷いている。謎が全て解けて安心したような感じだ。
「リュート、〈宝具所持法〉って知ってるよな?強力な宝具を個人で所持する場合、宝具と所持者の審査を行い、〈同盟〉の所持者名簿に登録しなければならないってやつ」
「あ、は、はい」
確か、この所持法を破った者は、バビリニア王家に伝わる魔法で宝具の力を封じられて、宝具を取り上げられる。また、所持者も国や〈ギルガメッシュ同盟〉に敵対意志ありと見られてすぐさま捕縛、その後、死刑か無期懲役で牢獄に入れられる。
そこで気づいた。
…………あれ?それじゃあ俺、ヤバくね?
だって知らなかったとは言え俺、宝具の登録とかしてないぞ!?
「それについて私も気になって調べたんだが、名簿の中にお前の名前を発見することができた。まあ、名前が有るだけだったから、お前が眠っている間に審査させてもらったよ。結果は合格だ。良かったな」
とマスターが言った。
……………それって、俺は眠っている間に凄いピンチにあってたってことかよ……………。
いや、それより。名簿に名前があっただって?
「そうだ。お前の名前があったんだ。そしてお前の話から、お前にフールちゃんを与えたのは、お前の親ってことになるな」
…………俺の親が、俺にフールを、宝具を与えてくれた…………?
…………彼らは、俺に生きる力を、与えてくれた…………?
「……心中お察しするが、リュート。謎が解けたところで次は仕事の話でもしようか」
思考に没頭しそうになったとき、マスターの言葉にハッとなった。
「リュート、これからお前に受けてもらう仕事は、世界各地にある〈迷宮〉の攻略だ。お前には世界を巡り、迷宮を攻略して宝具を手に入れてもらう」
だ、迷宮攻略だって!?
「何でいきなり迷宮攻略を、俺に?」
「ああ、〈同盟〉からの依頼なんだよ。お前も知ってるだろ、〈グレゴリオ教団〉のこと」
「え?は、はい。あんまり詳しくないですが、ギルガメッシュ王は悪魔であるって説いてる新興宗教団体、ていうかテロリストたちですよね?確か宝具も所持してるって噂ですが……」
「そうだ。実はな、最近連中が、恐らく宝具を狙って〈同盟〉の宝具保管庫や宝具所持者を襲撃するっていう事件が多発してんだ」
「え!?」
何だって!?そんな事件まったく聞いたことが……いや、当然か。
グレゴリオ教団は世界各地で活動している。奴らのテロ活動による被害は、各地で波紋を広げている。そして宝具は強力な兵器だ。奴らが仮に宝具を手に入れたと聞いたら、元々戦うためにいる冒険者や騎士ならともかく、一般人が聞いたらパニックになるだろう。だから箝口令がしかれ、そういった情報や噂は聞かなかったのだろう。
「無論、連中に宝具を奪われた、と言う話はない。だが、仮に連中が迷宮を攻略し、宝具を手に入れたらまずい。現在、あたしら冒険者はSランクやAランクの連中を中心に、〈竜王の墓場〉や〈大地の胎〉みたいな高レベルの迷宮の攻略は行っているが、例えば宝具が戻った迷宮とかを再度攻略されちゃたまらないからな。そこでBランクの連中に声をかけて、そういった迷宮の攻略をし、奴らより早く宝具を回収するのがお前の仕事だ」
「…………」
「もちろんこれは受けなくても構わない。現在この依頼を受けてくれたのは、エリナとかそれなりに実力のある連中だ。なんたって迷宮は危険だからな。お前はまだBランクに上がったばかりだし、無理にとは言わないよ」
そう言って、マスターは俺と目を合わせて、言った。
「さて、どうだい?この依頼、受けるか?」
……マスターは、俺を試しているのかもしれない。俺が冒険者になった理由を知っている。だから、こんな事を聞いてきたのだ。
…………そんなの、もちろん…………ーーー。
「……はい。その依頼、受けさせてもらいます!」
☆
「何でこの依頼を受けたんですか?」
「ん?」
俺が依頼を受けた後、マスターは依頼受理の準備をするため、医務室を出て行った。
俺はもう外に出ていいと言うことなので、俺が下宿しているギルドの寮からフールが持ってきた着替えに替えていた。そんなときに、着替えの為にひいたカーテン越しにフールが質問してきた。
「口答えするつもりではありませんが、この依頼は受けなくても良いですし、他にも比較的安全な依頼はいっぱい有るはずです。なのにわざわざ受けた理由が分からなくって……」
……ふむ、当然の質問だ。なにせ彼女は、俺のガーディアンとして従うのだ。嫌でも俺に従わなければならない以上、危険な行為を行うのだから目的を聞きたいに決まっている。
……うーん、でもちょっと恥ずかしいな~……。
「うーん、なんて言うか……俺の夢へ近づけるかなって思ったから、かな?」
「ご主人様の夢、ですか?」
フールの疑問の声を聞いて、更に恥ずかしくなる。
うーん、そういやこんな話今まで誰にも言ってなかったな~……。
「俺はさ、〈加護無し〉だろ?だからさ、いろんな人から哀れまれたり、子供の時なんて馬鹿にされたりイジメられたりしたんだ。で、親も居ないから一時期ネガティブになってた時期があったんだ」
自分は何で生まれてきたのか、なぜ捨てられたのか、生きている意味があるのか、なんて、悩んでいた時期があった。
「そんなとき、院長先生が言ってくれたんだ。『確かに君には人より少し足りないものがある。でも、無いからって、人より出来ないからって、塞ぎ込んじゃダメだ。寧ろ、見せつけてしまえ!足りないなら今ある物で補えばいい。無いなら、もっと別の物を手に入れればいい。君を笑う者がいるなら、君が自分で手に入れた「力」を証明すればいい。自分で頑張って手に入れた力は君を裏切らない。まずは、誰かに認めてもらえるように頑張ることから始めよう』ってさ」
魔法が無いなら、剣の腕を磨けばいい。魔法でしか出来ないことがあっても、それを補えるように考えればいい。
「俺のことを加護無しだってバカにする奴らに、一泡吹かせるために、証明する。例え加護無しでも、Sランク冒険者になれるって」
Sランク冒険者は、誰も彼もがとんでもない功績を残している。
分かっている。
加護の無い俺には、絶望的なまでに難しいことは。
でも、それでも力がないからって諦めたくないから。誰かに認めてもらいたいから。まだ、頑張れるから。
無茶でも、無謀でも、夢ぐらいはでかく持ちたいと思ったから。
Sランク冒険者になる。今回の依頼は、その夢に近付くためのチャンスだと思ったから、俺は受けたのだ。
「あー、やっぱり恥ずかしいな……何か幼稚な感じで……」
「いいえ、素晴らしいと思います」
カーテンを開くとそこには、微笑むフールの姿があった。
「夢を持つのは良いことですし、それに邁進するのは、良いことです」
はい、とフールは俺に剣を渡してくれた。
「ご主人様、私はガーディアンです。貴方のご命令とあれば、敵を倒す剣にも、敵を止める盾にも、災いから守る鎧にもなりましょう」
そう言った彼女の微笑みは、その言葉に絶対の自信を持っているように見え、何よりも頼もしく見えた。
「ていうか、ご主人様を馬鹿にするような輩がいたら問答無用で呪令で丸焼きにしてやります!努力する人を笑う者は努力に泣くのです!」
シュッシュッ!と見えない敵にシャドウを繰り出すフール。その姿に、笑いそうになるのを堪えながら
「ありがとう、フール」
と改めてお礼を言った。
俺の親は俺に彼女を与えてくれた。何故俺を捨てたのかは分からないけど、でも俺の親は俺にちゃんと愛情をくれた。そして彼女はその証明であり、そして死の運命から、両親が、何よりも彼女が救ってくれた。
これほど嬉しいことはない。
「…………!」
バッチーン!
いきなり彼女は両の手で自身の両頬を思いっきり叩き、しゃがみこんだ。
突然のことと、あまりにも痛そうな音に、つい動きが止まる。
すると、彼女は小声で何かをつぶやき始めた。耳を澄ませてみると、
「……あっぶねー、今のご主人様のイケメン笑顔見て反射的に押し倒してR-18 なことしそうになりました。やべえ、うちのご主人様マジイケメン!落ち着け私ー、ここはまだ、貞淑な女性的なところを見せてフラグを建てるのがベスト!それにこれから新婚りょ……いや迷宮攻略の旅がある!チャンスはこれから!急がば回れの精神で着実に、確実に!フラグを建てるのです!」
ガバッ!と立ち上がるとフールは
「すみませんご主人様。持病のしゃくが出てしまったみたいです。でも大丈夫なので、ご心配なく!」
「お、おう……」
オホホホ、と明らかに誤魔化すような笑みを作るフール。
……大丈夫だよな?このガーディアン……。
俺は、何故か分からないが目の前のガーディアンに少し不安を感じながらも、彼女に手を差し出した。
「フール。これから俺は、自分の夢の為にも、迷宮攻略を行う旅をする。だから、一緒に戦ってくれるか?」
そう、これから俺は大きな戦いに臨む。途中で力尽きるかもしれない。諦めてしまうかもしれない。
でも、俺には諦められない理由があり、そして彼女の力が必要になる。そう、これからは相棒として。
「はい。もちろんでございます、ご主人様。貴方が望むなら、どこまでもご一緒させていただきます」
フールは笑顔で俺の手を取り、答えてくれた。
ふと、昇格試験の依頼を受けた時にした、あのタロット占いを思い出す。
目の前にいる、自分を主と言った少女と同じ名を持つ愚者のカード。
新たな一歩を踏み出す者を表すカードの意味。
変化の始まり。
もしかしたら、彼女こそが変化の始まりなのかもしれない。ここから始まるのだろう。
俺の、新しい物語は。
「ぐっ!またしてもご主人様の魂のイケメン度が上がった!ヤバい!は、鼻血でそうです!」
「……………………………………」
……すごく、不安だけど……。
〈ガーディアン〉についての補足説明……………
ガーディアンとは、元々凄まじい能力を持った存在の魂に、再び肉体を与えることで使役出来るようになった使い魔の総称。
本来の能力を名称の呪いによって封じられている。
ガーディアンとなった存在の半数は、自らギルガメッシュ王とその従者に忠誠を誓った者や、自ら志願した者がいる。が、それ以外にも、ギルガメッシュ王がその力を欲したものや、能力はあるが犯罪を犯した者などがガーディアンになる。つまり王のわがままからなった者や、死後も服従させられるという罰を与えられた者もいる。
フールはギルガメッシュ王のことを「糞王」と言いかけたりと嫌っている。しかし、リュートに対して忠誠を誓っている模様。果たして彼女はどのパターンなのか?