衝撃
日々モヤモヤとした気持ちでいた桜次郎は遂に決断をした。
(梨々ちゃんに気持ちを伝えなきゃ...。告白しなきゃ一生後悔する)
と覚悟を決め今日の卒業式に至ったわけである。
しかし結果はものの見事に玉砕。
(あ~あ...成功しなかったか~...。もしかしたらとは思ったけれどやっぱ無理だったのか...覚悟はしていたけれどショックだな~...。)
と心の中で呟きながら、一人家路に着いた。
桜次郎の通っていた(卒業したからあえて過去形)中学校は家から距離があると自転車通学が可能で、桜次郎も距離があった為、自転車通学をしていた。
(これで最後なんだよな~。)
と感慨深く考えながら3年間通い慣れた道を帰っていた。
(この通学路も今日で最後か~...この文房具屋も角の駄菓子屋も見納めなんだよな~。3年間の思い出としては...ん~...特にないかな~...。ってのは冗談だけれど、駄菓子屋のばあちゃん長生きして欲しいな~。)
と桜次郎は思った。
高校に進学してしまうと、この道を通らないからだった。
桜次郎の通う中学は学校帰りに買い食い禁止だったのだが、桜次郎はちょこちょこしていた。学校にバレたら大変な事なのだが、一度もバレた事は無かった。
それは本来であれば、店側が注意するのだけれど、駄菓子屋のばあちゃんは怒ったり、学校に報告したりせずいつもニコニコしながら、たまにオマケしてくれたりと、桜次郎にとって学校帰りの憩いの場だった。
夏にはアイスを、冬には温かい飲み物をよく買っていた。
そんな思い出しか無いのだが、中学生までしか人生を過ごしていない桜次郎には立派な良い思い出だった。
そんな思い出を深く噛み締めながら少し上の空で一路家に向かっていた。
そして後、坂を下って少し行けば自宅に着くという所で、桜次郎にとって運命だったのかはてまた偶然だったのかわからない事が起きてしまった。
桜次郎が坂にさしかかり自転車に乗ったまま下って行くと、自転車のブレーキが効かない事に気が付いた。
先程までは普通に効いていたのに神様のイタズラか何かの様に効かなくなっていた。
そこまで急な坂では無いのだが、ブレーキをかけて減速をしないと危険な坂道だった。
桜次郎も必死になって考え何とか減速を試みようと思うのだが、足でブレーキ代わりにしようとするも多少はスピードが落ちるものの、まだ危険な状況からは抜け出せなかった。
そのうち坂も下り終えてしまい、そのまま車道へと飛び出してしまった。
またまたここで桜次郎にとって神様のイタズラなのか普段はそこまで通らない自動車が桜次郎の飛び出してしまった目前まで迫ってきていた。
【ドカッ...】
と言う音と共に桜次郎が気が付いた時には桜次郎は宙を飛んでいた。
(あれっ...?飛んでる?それにもしかして...さっき思い出していた思い出が走馬灯?)
とか思っているうちに
【ドスンッ!!】
と地面に叩きつけられると共に桜次郎は気を失った。