寝起きと親友と時間
「次の授業体育だぞぉ! 起きろー!」
大きな声が、男子しかいなくなった教室に響き渡る。
大声の主の目の前には机に伏せて寝ている男子がいた。
だが、その寝ている彼は大声に気づいていなようで、ただただ寝息をたてているだけだった。
「起きてくれよぉ、親友の頼みだぞぉ」
必死で起こそうとしているその親友はなぜか、揺すって起こそうとはしない。
耳元で起きろ起きろと同じ言葉を繰り返すだけだった。
それからも声をかけ続けていたが、寝ている男子はまったく起きず、ついに教室は二人だけになってしまった。
「まったくもう!」
時計と起きない彼を交互に見ながら地団太を踏み、短いため息をついた。
そして、腕を組みながら仕方ないという顔をした。
「今回もまた、あの人の名前を借りるかな」
親友はさっきよりもっと耳に口を近づけて、ボソボソっと何かを呟いた。
すると突然
「それは絶対に見なくては!!!」
と叫び、すごい勢いで机から顔を上げた。
「よし、じゃあ行こうぜ運動場に」
したり顔の親友を見て、寝ていた彼はいかにもだるそうにこう言った。
「……はぁ、仕方ないなぁ」
大きく伸びをして、せかす親友を横目に、彼はゆっくりと着替え始めた。
「今日の体育は野球だぜ!」
満面の笑顔で親友は彼の周りを飛び跳ねる。
その跳ねている途中で机の角がわき腹に入り、震えながらうずくまった。
「い、いたい……」
「大丈夫か? 保健室で寝ようか」
「……そ、それって、ただ瑞高が寝たいだけでしょ!」
いつの間にか着替え終わっている瑞高に、痛がりながら突っ込みをいれた。
「ああ、そうだ。俺は寝たい」
きっぱりと瑞高は言い切った。
「そんなことよりも空」
「何、また寝たいとか言わないでよ」
素早く釘を刺す。
瑞高は言わないよと一言ですませた後、時計を指さした。
「時間、大丈夫なのか?」
「えっ、時間?」
空が間の抜けた声で聞き返し、時計を確認した。
時間は9時55分だった。次の授業の開始時刻は10時00分である。
「やばい! 急ごう瑞高!」
教室の床を思い切り蹴り、教室を飛び出した。
前を空が、後ろを瑞高が必死の形相で追いかける。
「なあ! 空よぉ!」
「なんだ?」
「やっぱ保健室で」
「寝ないよ!」
二人は靴箱へと駆け込み、靴を履き替えて運動場へ出て行った。
今回だけ同じ日に投稿です。
わかりにくいですが、瑞高が主人公で空が親友です。