ホストはお客さんとやり取りをする
岩佐さんの告白を断った日はそのまま帰路に付いた。
今日はホストとしての仕事が入っていなくて良かったと心の底から思った。
さすがに今日はメンタル的にホストの業務を全うできる感じがしなかった。岩佐さんの告白を断ってしまったことを後悔していないけど、やっぱりああいう顔をされるとキツイ。
少しでも早く彼女が僕への好意を捨てて、次の恋に歩み出せるようにサポートするつもりだ。この世界で男と付き合うというのは難しいことではある。
だけど、岩佐さんのような明るい性格で、相手に対して恐れずに向かって来れるような人であれば男の心を掴むことすらできるかもしれない。
僕は携帯を立ち上げて、メッセージアプリを開くとハルさんとのやり取りで埋まっていた。
最近のやり取りだとこんな感じ。
『テツさんにオススメのゲームをピックアップしました。この中で興味があるゲームがあったら教えてください』
『白の空と赤い龍…ってゲームは面白そうかなって思ってます』
『そのゲームは名作です!ノベルゲームなんですが、とっても良いゲームで絶対にやっておいて損はないゲームですよ』
『ハルさんがそこまで言うんだったら、やってみようかな』
『やってみてください。クリアしたら感想を語り合いたいです。ボクも久し振りにもう一度プレイしてみます』
こんな感じでゲームに関するが多い。やっぱりハルさんのゲームに関する知識は豊富で、どんなゲームの話題でも絶対に食いついて来る。
僕が友達からこんなゲームをオススメされたって話をすれば、そのゲームの評判やハルさんが良いと思っている部分を教えてくれる。
ハルさんがゲーム好きであることは知っていたけど、まさかここまでとは。
あんまり個人的なことをお客さんに連絡するのは気が引けるけど、僕が連絡できる同級生というのはハルさんだけだ。男子の連絡先は持っているけど、この相談はこの世界の男に聞いても意味がない。
だから、同級生の女性が一番相談相手としていいはず。
僕は勇気を出してハルさんに対してメッセージを送った。
『急で申し訳ないんですが、フッてしまった相手にしてあげられることってなにかありますか?』
岩佐さんに対してこれからどんな風に接していけばいいのか分からない。もう二度と関わって欲しくないと思っているかもしれないし、いつも通りに話しかけて欲しいかもしれない。
僕としては前と同じように接していきたい。ここまで仲良くなれた相手は学内で彼女ぐらいだ。その関係を崩したくはない。
でもこれはあくまで僕の気持ちだ。やっぱり彼女の気持ちを尊重してあげたい。もう話したくないと望むのであればそうする。
そう考えていたら、ハルさんからの返信が返って来た。
『…ボクは告白されたことがないから分からないけど、今はそっとしてあげた方がいいんじゃないかなって思う』
そこからはハルさんとリアルタイムでやり取りを続けた。
『話し掛けない方がいいですかね』
『難しいです。ボクも参考が恋愛ゲームなので。でも、振られた後に話しかけられた時って…どういう反応になるんだろう。やっぱりボクにはそれに答えられるだけの経験がありません。ごめんなさい』
『謝らないでください。僕が勝手に相談しているんですから』
『でも、テツさんの悩み事ならボクの悩み事です。少しでも解決になる手助けをしてあげたいです』
『ありがとうございます』
『たぶん、ボクだったら好きな人にフラれて、フッた相手に励まされたりしたら余計に気にしちゃうと思います』
『気にする?』
『はい、やっぱり好きな人に気を使わせたりするのは嫌ですから。それも告白してフラれた相手となれば尚更』
『…じゃあ、僕は何もしない方がいいのかな』
『難しいですけど、いつも通りに話しかけるのが一番無難かもしれないです』
『いつも通り…』
『もし相手がもう二度と関係を持ちたくないと思っているのであれば、嫌な顔をされるかもしれないですが、それでも相手の方から今のテツさんに声を掛けるのは難しいと思います』
『だから、僕の方から声を掛けてみる…』
『はい、これが現状では一番良いとボクは思います……ってすいません。部外者がこんなことを言って』
『いいんです。僕がハルさんにアドバイスが欲しいとお願いしたんですから』
そしてその後もハルさんに色々とアドバイスをしてもらった。
改めて考えると女性に対してこんなことを聞いている時点でダメな気もするけど、僕には経験がなさ過ぎるので許して欲しい。
何より、岩佐さんのことは大切な友人としてこれからも良い関係を築いていきたい。




