第二章 オネェな伯爵様との出会い
伯爵邸に到着した時、私は思わず目を疑った。
屋敷の外観はまるで劇場のようだったからだ。
カラフルな装飾が施され、庭には珍しい花々が咲き誇っている。
かと言って決して下品ではなく、全てが綺麗に整えられていた。
主人のセンスの良さが伺えるお屋敷だ。
屋敷内に入ると、そこは更に別世界だった。
豪華な調度品が並び、壁には美しい絵が飾られている。
そして、そこには屋敷の主人──ギャズリィ・ローゼンバーグ伯爵が居た。
伯爵の手足はすらりと長く、美しい顔立ちがそれを際立たせている。
だが、その服装は私の想像を超えていた。
伯爵はその紫の髪色に合わせた、濃い紫色のキラキラしたドレスを見に纏っていたのだ。
「あら。ようこそいらっしゃいましたわ、イヴィリア様」
その声は少し高めだったが、とても柔らかく優しい。
「貴方が伯爵令爵ですか?」
「そうですわよ」
「し、失礼いたしました。私はイヴィリア・スカーレッドローズと申します」
急いでカーテシーをして見せると、伯爵は優し気にクスクスと笑った。
「愛らしいお嬢様ですわね。では、わたくしもご挨拶申し上げますわ。ギャズリィ・ローゼンバーグ伯爵と申します。どうぞ、お気軽にギャズリィとお呼びくださいませ」
雰囲気に圧倒される私に、伯約は私より美しいカーテシーをして見せる。
それは、私への敬意を表していた。
そうして私は、新たな婚約者との出会いを果たしたのだ。
殿下から押し付けられる形で婚約者にされたが、伯爵は望まない結婚は無理にしない方が良いと言ってくれて、婚約の話を保留にしてくれた。
ただ、婚約破棄をされた挙句に義妹に婚約者を取られた身としては、実家では肩身が狭い為、暫く伯爵邸にお世話になる事にした。
保留にしてもらえたとは言え、表面上は婚約者な訳だし。