2. はじめての方には問診票を記入していただきます
ひと騒動のあと、テオドリックさんと一緒に受付にご案内。
「受付を担当しているミシェルさん」
「ミシェル・ラングレーです」
「テオドリック・ラーベです、はじめまして」
「やだなあ、初めましてじゃないですよ、テオ君。初診の時、帰りの車の手配したの私だよ」
「…その節は、大変、お世話になりました」
「ミシェル、業務中はテオドリックさんと」
「もう、ノラさん硬い。よろしくね、テオドリックさん」
「よろしく、お願いします」
テオドリックさん今日一日メンタル保てるかな?絞り出すような声しているけど。胸のあたりをぎゅっと握りこんで羞恥心と戦っていらっしゃる?
「ミシェル、新人君をいじめない。私含めだいぶこう、精神的苦痛を与えてしまっているから」
俯いているテオドリックさんに近づいて背中を摩る。がんばれ新人君。できれば逃げないでね。歓迎しているんだよ。
「やだなあ、いじめていませんよ。今日からもうオリエンテーションですか?」
「そうそう」
「…っ」
あらら、テオドリックさん顔真っ赤にして震えだした。過去の思い出の元凶である私はちょっと距離を置いたほうがいいかな?最後に頭をよしよしして。あれ、これセクハラ?
「ミシェル、ちょっとお願い。業務の説明は私のほうからするんだけど、ざっくりと受付のレイアウトとか伝えてもらっていい?書類取ってくる」
「はーい…」
「テオ君お顔が真っ赤だね?」
「…触れないでください」
「うち、職場恋愛ありありのありだよ?ただし、ノアさんは別。仕事が恋人みたいな人だから。
まずは男性として見てもらうところからだね!」
「触れないで、ください!」
「お待たせしました。じゃあ、これからミシェルの業務を見てもらいながら、後ろで私が補足説明しますね」
「はい…」
あれ?どした?ちょっと離れている間にテオドリックさん大分消耗していない?
ミシェルのほうを見たら満面の笑みだった。これは、いじられたな。からかわれたかな。
「ミシェル…」
「いじめていませんよ。からかいはしましたけど」
「職場でプライベートなトラブルは控えてくださいよ。止めませんけど」
「違います、から!」
「そ、そう?」
お水のむ?ちょっと休む?と聞けば断られたので、とりあえず気にしつつ業務の案内に移りましょう。
「こちらに来られるのは初めてですか?では、こちらの問診票をご記入ください」
初診の方にはかならず初診の患者用の問診票をお渡ししています。
今回受診されたきっかけ、症状があるとしれば、どのようなものか、いつからあるか。
ほかにも年齢、性別、連絡先、過去の病気、今治療中の病気、今飲んでいる薬、アレルギーなどなど。
どこの医療機関でも、大体同じ内容です。何度も同じように聞かれて飽きるかもしれませんが、いずれも治療には大事な項目ですのでご協力をお願いしています。
あ、もし、ご高齢の方が来られた場合は記憶が定かではない場合もありますので、その時には付き添いのご家族様にも確認をお願いします。意外と大きな病気を抱えていることもよくありますので。
あとは、そうですね。
当院独自の項目としては、所持している魔法の性質についてでしょうか。
当院、魔核科総合診療所という変わった看板名を掲げています。
聞きなじみがないかもしれませんね。おおよその治療院は治癒魔法が使える光魔術師が経営しています。
病気、怪我は治癒魔法や飲み薬であるポーションで対応できるので、一般の方にもあまり知られていません。
何のためにあるのかと申しますと、当院は魔術師のためにある診療所です。