第6話「明日」
ピットガレージに戻ると、予選を戦った2人のドライバーがエンジニアにマシンのフィーリングを伝えていた。
すると隣にいた監督が大声でドライバーを集める。
「ドライバーはちょっと集まってくれ。明日の戦略について伝えたいことがある。」
10人がホワイトボードの前に集合する。
「今回走るのは常設サーキットと市街地サーキットを組み合わせた少し珍しいコースだ。それとこのコースの特徴とい言ったら…1周が約13kmと長いこと、それとやっぱりこのユノディエールだろう。このコースでも屈指の長さのストレートだ。スリップストリームをどう使うかでレースが変わるかもしれん。」
「ちなみになんですけど、ドライバーのローテーションは?」萩原が尋ねる。
「ドライバーはこの順番で行きたいと思っている。」監督が紙を貼る。
「スタートドライバーは萩原、次に大塚、その次に大竹、それで松下、最後に堀本って感じだ。」
「最初の2人は今日の予選と同じですね。」
「あぁ、それと、今回男子の場合は5人中3人がル・マン初体験だ。だから3人は長く乗れるスティントで行こうと思っているんだが、大丈夫か?」
「異議ナーシ。」
「異議なし。」
「OKでーす、いっぱい走れるの楽しみです。」
「大丈夫です。」
全員合意となった。
「よし、今日はホテルに戻ってゆっくり休め。明日からは徹夜も覚悟してくれ。」
「「「わかりました」」」
ホテルに戻ると萩原が話しかけてきた。
「松下くんって、DreamRacing のドライバー?」
「そうだよ。」
「萩原くんはTRPだっけ?」
「そうだよ。監督から聞いてるよ。松下くんのこと。」
「どんなこと聞いたの?」
「最初は速かったけど、最後の2年はクラッシュが多かった、って」
「あの監督、そんなこと言ってたのか。」
実は去年までTRP racing teamに所属していたが、萩原の言う通りクラッシュが多かったので、修理額も膨らみ、その影響でチームを離れることになったのだ。
もちろん、壊したくて壊してたのではないが。
そしてシートに空きがあったDream Racing projectへと移籍したのだ。
「まぁ、明日からのレース頑張ろう。おやすみ。ゆっくり休んで。」
「萩原もね。」
お互いの部屋へと戻っていった。