第5話「伝説」
予選30分前、ピットガレージにて。
「今回の予選メンバーを発表する。」
レーシングスーツに着替えた10人のドライバーたちが監督を囲むようにして聞いていた。
「98号車、萩原陸斗、大塚裕貴。」
2人が返事をする。
「99号車、佐々木優衣、森村日芽香。」
こちらも2人が返事をする。
「以上だ。各自準備をするように。解散!」
「監督、我々3人は何をすればいいですか?」
「そうだな…じゃあ、堀本と大竹連れてル・マンミュージアムでも行くか。」
ル・マンミュージアムとは、サルト・サーキットの近くにある、ル・マン24時間耐久レースの優勝車両などが展示されている博物館だ。
少し歩くと、建物が見えてきた。
入口では、優勝こそできなかったものの、NISMOが開発し、ル・マンに参戦させたLM NISMOが出迎えてくれる。
中に入り、少し歩くと、日本勢初の総合優勝を果たしたマツダ787Bが展示されていた。
「すげぇ、787Bじゃん。こいつの音、生で聞いてみたいよな。」
「大輝聞いたことないのか?俺は鈴鹿のイベントで聞いたことあるぞ。」
「監督だけずるいっす。俺も行きたかった。」
「わりぃな。まぁ、来年忘れてなければ連れて行ってやるよ。」
「やった」
本当にすごい。ここには憧れていた伝説のマシンたちがズラッと展示されている。
ここに展示されているマシンたちも駆け抜けたサーキットをこれから走れるんだ。
その時、監督の携帯電話が鳴った。
「あい、もしもし。おうわかった。3人連れてそっち戻るよ。」
「予選終わった感じですか。」
「あぁ、今終わって、ドライバーも帰ってきたと。」
予選は、上位者が進める予選2回目(Q2)には届かなかった。
結果、LMP2クラスの19位と21位で予選を終えた。
決勝のスタートは明日の午後3時。そこから24時間を走り抜き、翌日の午後3時のチェッカーフラッグを目指していく。