わし男爵、ピンク頭をひきとる。
ヒロインて頑丈だよなと思った話です。
よろしくお願いします!!(´∀`*)
わしはモリン男爵。しょぼくれ転生者である。
チートとかなかった。ファンタジーっぽいけどわりと発展した世界で知識チートとか無理だった。しょんぼり。
そんなこんなでしょんぼり生きて数十年、市井におり平民として生きていた弟夫婦が死に、その子供をひきとることとなった。
その子供マリーはピンク頭のかわいらしい少女だった。
こいつ……ヒロインでは!?
わしはピンときた。貴族家に引き取られた元平民の美少女。頭はピンク。
転生前なろうを読んでいたわしは、よくあるよくある〜となった。親転生系ね。りょ!
まあどーせならわしが浮気してできた子とかがよかった。そんな機会なかった…。まあいいけど…妻すきだし…。
さてヒロインといえば正しい意味でのヒロインか、悪役令嬢ものの「ヒロイン」か。それが問題だ。
ざまあされる方かする方か。
ことによっては巻き添えをくらう。やだ。
そうだ!ルートをはずれよう!
転生ヒロインがとんずらこくとかもよくあった。
しかしこの子…マリーに、どんな才能があるかわからない。この世界魔物とかいる。万が一魔王とか復活して、ヒロインがいないと詰むやつだと下手に会計士になんかさせられない。
うーんと悩み、わしはまたもピンときた。
「マリーよ」
肩ポンする。
「両親をなくしたばかりで辛いことだな…。だが、いつまでも悲しんでばかりではいられない」
「はい…」
「わしが鍛えてやる…。
お前は冒険者に——『タンク』になるのだ!!」
「はい??」
ヒロインの特性——それは硬さだ!!
ヒロインといえば階段落ちである。それでもピンピンしている。悪役令嬢ものなら冤罪の場合もあるが、その場合もその「原作」ではほんとに落ちてるわけで、本質的に硬いのだろう。
ドアマットならろくに飯も食わずに平気で生きてるし、逆ハーものなら東奔西走のバイタリティ。ぼろぼろになっても風呂に入れればすぐにピカピカの肌の強さ。攫われても何されても大丈夫、傷ひとつなくかけまわるタフネスさ。まあそんなことないのも全然あるけど基本主人公もラスボスも死んだら終わるから強いよね。すぐ死ぬやつはしらん。
しかも正ヒロインでも悪ヒロインでもヘイトを買うのはお手の物。
耐える力とヘイト集め——……
タンクこそが適職だ!!
魔王とかでても役にたつ!!
「さあ!マリー!!特訓だ!!」
「はーーーーーーー!!!????」
わしはタンクの星を指さした!!
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「ですからね、お父さん。それは虐待にあたるんですよね。おわかりですよね。お、わ、か、り、で、す、よ、ねえ???」
「はい…はい…すいません……はい…」
わしはしょっぴかれていた。
あの日から、マリーに特訓をほどこす日々だったのだが、なんと恩知らずにも警備隊の駐屯所にかけこみやがったのである。
「父親じゃないすよ。親死んだんで引き取られたんすよ。邪魔もんだから殺そうとしてんすよ!」
マリーは可愛らしい顔を歪めて吐き捨てた。ヒロイン〜!!
「ああ、実子じゃないのか…え、ちょっと待って。じゃあ家庭内でのことにってのも…あ、待って、マリーちゃんお父さんの遺産は?事件性はなかった?」
「まってーーーーー!!!」
弟の遺産狙いで殺したみたくなってるーー!!
「違います違います!!!弟夫婦は魔物にやられたんです!マリーだけ家にいて…」
「まあー?ほんとにー?魔物かどうかなんてー?わかんないすけどー?」
へっと鼻を鳴らすマリー。厳しい目になる警備兵。
「ほんっとにちがうんすよ!!目撃者いますし!!あっちの警備隊に記録残ってますんで!!
虐待でもなくて!特訓なんです!!この子タンクの才能あるんで!!ほら両親魔物にやられたでしょ!仇もとれるようにって!!特訓なんです!!」
「タンクって…こんな子に?大体特訓って…」
「油かけて火いつけられたら人間死ぬんだよボケがッッ!!!」
「生きてんじゃんん〜〜〜〜!!!!」
そう、マリーはほんとにタンクの才能があった!!
はじめは小石をなげつけるとかだったが、すぐにそれくらいじゃ痛がらないようになり、普通の石、大きな石、投石器、と進化していった。
刃物も、はじめはカミソリでちょっと傷をつくることができたが、今では大剣を叩き込んでも無傷である。
また熱耐性ははじめからすごく、サウナに入れても平気にしてんなと思い、サウナストーンを投げて見たら平気だった。さらに焼きごてをあてても無傷。
「まあなんか…途中から、逆に何やったら死ぬんだこいつってなったとこはあります……すいません……」
「ほら言った!!殺意すよ!!自白っすよねこれ!!自白!!!」
マリーがしょぼくれわしを指差してさわぐ。
はじめはやめて…!お願い…!だったマリーがやめろ!殺すぞ!になり、クソが死ねや!!になってしまった。ヒロインなのに…。
「いやまあ確かに…ええ…まじで…?あっちょ!なにやってんの君暖炉に手をつっこんだら………嘘でしょ!!!!?何君マジで!!!???」
「無事でもやなんすよ!!ふつーーーに!!!」
「ま、まあ…だよね…!!でもあの、それだけ強くて、どうして反撃しなかったの?」
「正当防衛でも経歴に傷がつくかもと思って」
「賢い…」
「あと…」
マリーが暖炉の火かき棒を手にとり——わしの頭に打ち下ろした!!
「こいつも硬えんすよ!!!くそが!!!」
「ええ〜〜」
そう、わしも硬かった。ヒロインの血縁だった。
今まで喧嘩一つしたことなかったんで気づかなかったのだ。
やめてやめてから殺すぞになったマリーは順調に反抗し、拳で、蹴りで、刃物で襲いかかってきた。マリーの成長とともに次第にエスカレートする攻撃。それは日々育つ葦をとびこえるニンジャのように、わしの防御力を上げていったのだ!!わしも特訓してしまった!!
「ええー…なにこれどうしよ…。いやでも弟さんは?硬くなかったの?」
「あー、襲われた魔物が伝説の古竜だったみたいで……。特訓してなかったから……」
「低レベルだとだめなやつだったのか…」
警備兵は、うーんこれどうしたらいいんだと悩み始めた。
わしはマリーに向き合った。
「マリーよ…すまなんだ!!」
「!」
「お前が傷付かぬようにと…世界から自分を守れるようにと…お前を鍛えてきた…。
しかし同意も得ず、親を亡くしたばかりの幼いお前には、酷なことだった。辛かったろう…。焦るあまりに思い至らずすまなんだ……」
「ふ、ふん…!そんな、あやまったって……」
「あとちょっと面白くなっちゃってすまなんだ…」
「死ね!!」
結局もうなんかよくわかんないやってことでわしは釈放された。マリーに叩きのめされてわしは泣いた。ヒロイン様にはかなわないよ〜〜とほほ…(泣
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「おら行くぞ!!とっととこい!」
「は、はいはい〜〜!!」
あれから色々あった。わしの手を離れたマリーは冒険者ギルドに入り攻撃力も鍛えた。なんか聖魔法とかも生えた。こわっ。
わしは反省し、せめてお詫びにと弟の仇である古竜を追った。そして挑んだはいいものの流石に力及ばす、ひえ〜てなってるとこをマリーが助けてくれた。おめーのためじゃねえかんな!とか言って。さすヒロ!瞬殺だった!!
そして今、わしらは魔王城の前にいる——……
マジで復活したのだ!こわ!
「さっさと片付けて帰るぞ。母さんがご飯作ってくれてんだから」
「もちろんじゃい!タンクと皿洗いはまかせとけ〜!!」
「ふ……。よし、そんじゃあいくぞ!………クソ親父!!」
「!!!」
走り出すマリー。わしはあわててその背を追う。
「ま、まって!まってマリーちゃん!!今なんて!!」
「うるせえばか!!」
わしは目に滲むものを感じながら、マリーとともに、魔王城へ走るのだった——……!!
お読みいただきありがとうございました!!(´∀`*)
晩御飯までには帰りました!!♡