第34話 女子会(議)Ⅱ 水不足②
食堂において、女子による女子の為の女子会(議)が、今、始まった。
子恋「出席者は、子恋、渚、岸尾、浜、初島、来宮、桃山、仲谷、逢初、泉。インカム参加が、七道、多賀、網代、折越、紅葉ヶ丘、ね」
早速、逢初愛依が挙手した。
逢初「女子の、3Fの男子浴室の使用について意見があります」
子恋「ああ、実は渚もちゃっかり使ってたんだよね。さっき聞いたよ」
子恋が一瞥すると、渚は舌を出しておどけた。
子恋「とはいえ、メンテ3人組とか、入浴が遅い子達が可哀想だよね? お風呂が渋滞してると。私たちそれぞれはぶっちゃけ、自分のタイミングで入りたいしね」
逢初「出合い頭の事故が予見されます」
子恋「うん。事故がおこって得をするのは男子ばかりだからね。そんな男子向けラブコメ展開はこの艦では起こさせないよ! この私が」
岸尾「でもさ、暖斗くんのキャラから言って、事故がホントに起こったら向こうも相当困ると思う。ハッキリ借りるって言っちゃえば~?」
渚 「どうかしら。今の2Fみたいに予約制度を活用するのとさらに、かけ札とか作製して、女子が入ってることを彼に、視覚的に認知してもらう方法は?」
折越「ちなみは別に見られてもいいけどぉ~。混浴上等よ?」
折越など、食堂に来てないメンバーは、インカムから声だけで参加だ。
桃山「まず、あくまで『借りる』って前提を忘れないようにして、個人の責任で借りればいいんじゃないでしょうか」
来宮「賛成っス。イヤなら2Fでいいんだし。方法は任せるっス」
子恋「じゃあ、それでいいかしら。まず暖斗くんに話を通して、3Fのお風呂に『女子入浴中』の札を掛けるとかしましょう。あ、お風呂の予約アプリ使うのは必須よ? 暖斗くんには、岸尾さんお願い。‥‥ん?」
岸尾「‥‥‥‥くふふ。これゼッタイ事故が起こるフラグだゼ☆ その時のぬっくんのビビった顏‥‥‥‥ぬふふふふ」
子恋「何か言った?」
岸尾「イエ。暖斗くんには近日中に」
七道「『入浴中』のフダだってよ。3Dプリンター空いてっか? お~い」
網代「は~い。データ誰くれんの?」
紅葉ヶ丘「もう送った」
浜 「‥‥ちょうどお風呂の話が出たので、し、資材から。艦長には報告済ですが、生活水が足りません。み、みなさんに節水をお願いしたいです」
紅葉ヶ丘「節水って、具体的にどうするの? 数値で言って」
浜 「えっとそれは‥‥‥‥お風呂のシャワーを短めに、とか、回数を減らす、とか」
初島「え~! 練習の後に汗流せないとか? やだ」
泉 「私も困るわ。お風呂が癒しの時間なのに」
網代「そもそも5泊6日で終わる予定の旅だ~ね。足りなくなって当たり前」
多賀「‥‥‥‥。CAD/CAMでも流水下で研削するんで、水が要ります。ポイント=カタフニアまではもたないんですか?」
渚 「そうねえ。ラポルトはそこに向かってるんだから」
浜 「こ、このペースで減ってくと、ちょっと‥‥」
折越「や~だ~~」
この話題は、ざわついた。慣れない戦艦暮らしなのに、シャワーの水などが制限されたら気が滅入る。まあ戦艦のクセに今までは自由に使い放題、だったのだが。
紅葉ヶ丘「この艦『ウルツサハリ=オッチギン』はヤサ級の巨大戦艦だよ」
七道「なんかひさびさ聞いたな。ラボルトの正式名称」
紅葉ヶ丘「重力子エンジンと回路で、アホみたいに水を積み込んでも自重はゼロ、生み出される無限の電力で水浄化をし、なんなら飲料水にまでガンマ線滅菌してるこの戦艦が、水不足?」
浜 「実はこの前の大型BOT戦で、残量が30%切って‥‥‥‥」
紅葉ヶ丘「こっちでも今調べた。ああ、この時にか」
子恋「そうなのよ。暖斗くんを助けて大型BOTを退かせた時、艦の主砲を撃ちすぎてね。あの辺一帯の森が延焼しちゃったのよう。それで。あはは。ごめんなさい」
渚 「光莉。艦長設定忘れてる」
子恋「‥‥こほん。失礼」
初島「私たちドローン部隊で消火したんだよね」
岸尾「負けてへこんだ暖斗くんの顏、おかげで見れなかったゼ☆」
紅葉ヶ丘「それでアホほど水を消費したと。しっかりしなよ。子恋学生」
子恋「だって主砲撃つ時テンション上がっちゃったんだもん。『打ち方止め』って私が言わないと、そりゃ打ち終わらないよね。あっはは」
渚 「‥‥光莉!」
七道「森いっこ消滅させるトコだったぞ。業が深けえ」
子恋「‥‥こほん。‥‥‥とまあ冗談はここまでにして、うん。私から提案があります。あの救助した女の子、どうも『ハシリュー村』から来たみたいなのよ」
渚 「附属中トリオでちゃんと尋問してからなんだけどね。敵の可能性も万が一あるから。でも村までここからかなりあるのに、エアバイクで逃げて来たって。すごいわね」
逢初「辺境の人ならでは、なんでしょうか?」
子恋「その村にはスパがあるらしい。温泉で有名なんだよ」
浜 「そ、そこで補給をしてくれる訳ですね」
桃山「なんか聞いたことあるかも~。ガンジス島の『ハシリュー村』。山の温泉って、テレビでやってたような。実際来ちゃうとは」
泉 「ホントなら是非行きたいわ」
子恋「決まりでいいかな。うん。上手くいけば食料や資材も補給できるかも。尋問の結果はまたメールします」
会が終わり皆一斉にザワザワしだした。席を立つ者もいる。愛依は、暖斗の伝言を思い出しハッとした。
逢初「いけない。忘れるところでした。暖斗くんからみんなに伝言。今度『宴』を開く時には、準備があるんで、前もって教えてください、とのこと!」
慌てて言ったが、みんなに聞こえたかは怪しかった。
***
「で、その子の怪我は、大丈夫だったの?」
その日の夕食後、僕はまだ医務室にいた。身体はもう動くけど、まだ退院検査をやってないから。同室しているのは、当然愛依だ。
「うん、頭部と右腕に裂挫創。岩の破片が当たったみたいだったけど、もう元気だよ」
「良かったけど、やっぱり僕の戦闘のせいなのかな」
「わからないみたい。でも気にしちゃダメよ。暖斗くん。助けなければあの子はBotに捕まってたんだから」
「そだね。助けられたんだから、良しとするか」
「でね。その子の家が、『ハシリュー村』みたいなんだって。今、附属中3人娘が」
医務室の奥にいたその女の子は、別室で今頃、子恋さん達に色々訊かれているハズだ。その結果によって状況は変わるけど、たぶん、その子を村に届ける流れだと思う。
「『ハシリュー村』、艦の中央CPにデータがあったよ。農業と間歇泉、自治区なんだって。あ、女耳村だ」
「じょじそん?」
「あ、暖斗くん知らないの? 女の人、耳、の村。女耳村。さいはて中学の村バージョンよ。たぶん、色んな理由で、女の人だけの村になっちゃったんだよ」
「え、じゃあもう限界集落じゃん」
「いえ。たぶん男子とかは生まれるけど、どこかに留学させるはず。で、旦那さんは外からもらって、通い婚じゃないのかな。もう、男子って自分のことじゃないから、こういうことには無頓着よね」
「う~ん。知らなかったよ」
愛依はパッドPCを動かしながら。
「え~と。ほら、絋国に組み込まれて自治区になったのが20年前。この頃すでに男性が少なかったんだよ。ハシリューの血統を何とか残すために、絋国を頼った感じね」
あの子の言葉をおもいだす。
「あたしの名前はアピ。お兄さん、あたしと結婚してよ」
男性がいない村、と聞くと状況が全然違う。
あの小学生くらいの子にも、色々事情があるんだろうかと考えてしまった。
***
「逢初さん。助けて」
医務室に突然、渚さんが飛び込んできた。珍しく動揺してる。
怪我か病気か? あの子に何が!? 愛依も、僕まで緊張した。
「ちょっと、あの子のことで、手を借りたいの。いい? 私たちじゃ手に負えなくて」
そう言うと、渚さんは愛依を連れ出してしまった。
何だろう。
あの軍人の卵3人娘が「手に負えない」って!?
急に静かになった。
そりゃそうだ。医務室に僕ひとりなんだから。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
あれ? 何か忘れてないか? 運動負荷検査‥‥。
僕の退院は? お~い。
※入院期間は22時間。後遺症最軽度なのに最長入院記録(以後破られず)。
※「お風呂でバッタリ」イベは発動するのか? 第三章へ。
↑ ↑ こういう作り込みがお好きな方へ。
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