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第34話 女子会(議)Ⅱ 水不足①

 




 僕はまだDMT(ディアメーテル)を駆っていた。


 駆っていた、というとカッコイイ感じだけど、そうじゃ無い。DMTの両腕を使って土木作業中。


 アピ、と名乗る女の子を岩場から救い出すと、怪我をしていて。艦からクルーザーが降りてきて、念のため、折越さんが軽く拘束しながら、愛依(えい)が応急手当をして艦に戻っていったんだ。


 愛依(えい)は、女の子を搬入する時だけクルーザーから出てきたけど、DMTが動くのを見てちょっとびっくりしてたみたいだ。


 セーラー服に白衣、と色白で華奢な愛依の肢体は、荒涼とした大地にはすごく浮いて見えたけれど、――そう見えたの僕だけだろうか?


 あと、クルーザーに乗り込む時に背を向けながら、こっそり小さく手を振ってくれた。



 ――――あやうく見逃すトコだった。

 ‥‥‥‥よかった。昨夜の暴走はやっぱりセーフだったんだ。



 で、その女の子が、「あたしが乗って来たエアバイクが近くにあるから、持ってきて~」だって。そりゃそうか。こんな荒野をBotに追われて、徒歩な訳ないよね。



 麻妃がスキャンした地形で、金属反応とかで探したら、すぐに見つかった。


 けど狭い岩場に隠してあって、しかも故障してるみたいだから、こうして今掘り出している。



 あ、サリッサ使っちゃダメかな? あれまんまドリルだし。




 ***




 DMTを降りた僕に、マジカルカレント後遺症候群は少ししか現れなかった。


 やっぱ極力使わなかった結果だね。


 重力子エンジンが生み出すエネルギーを能力で増幅するんじゃなくて、あるものを適所に分配する方法、これが良かった。


 っていうか、普通のパイロットはそうやって戦ってて、僕が異常だったんだけど。



 しかし初陣とは大違いだ。愛依曰く、僕の身体が良くも悪くも副作用に慣れていくらしい。


「同じ薬をずっと飲んでると、だんだん効きが悪くなるのとおんなじだよ」と言われた。

 いや常用してる薬とかないし。



 医務室に一応運ばれてベッドに寝かされたけど、一応手足は動く。

 それならシャワー浴びて自室に帰りたい、と言おうとしたところで、奥から愛依が出てきた。


「あ、暖斗くん。お疲れ様。ミルク飲む?」


「え? あの子はもういいの? 忙しいんじゃない?」


「大丈夫だよ。さいわい軽傷だったし、今は食事とって寝ちゃったから」


「寝ちゃうんだ。なんかスゴイキャラだ」


「うん。Botに追われて何日も、だったらしいよ。正式には附属中三人娘が後で尋問するみたいだけど」


「尋問! まあ今回はその子がイレギュラーだったから、かなりゴチャついちゃったよ。やっぱ附属の子達はスゴイね」


「プロ軍人さんの卵だもんね。で、ミルク飲むでしょ? 作るよ」


 言うが早いか、彼女の姿はバックヤードに消えていた。



 僕は、女の子の言葉を思い出していた。

 結婚? どういうつもりだろ。



「その子の見張り役で、まだ奥に折越さんがいるからね」


 エプロン姿になった愛依は僕の耳元でそうつぶやいた。


 そういえば、奥からかすかに人の気配がする。

 あと、「仕事中」って折越さん静かなのか、意外だ。



 そして相変わらず愛依は近い。昨日の夜の事があるから、ミルク飲むのがすごいドキドキイベントになってしまった。う~む。



「この後、緊急女子会(議)なんだよね。あの子の事とか、いろいろね。あ、暖斗くんも何か意見があったら稟議(りんぎ)出すよ」


 本当に愛依は忙しいな。心配だ。


 他の女性パイロットが、全員マジカルカレント症候群にならなかったのは朗報(愛依にとっては)だったけど、そしたら次は負傷した民間人――と。


 そうだ。稟議書だすほどのことじゃないけど、みんなに伝えとく事はあった。それを愛依に頼んで―――。

 結局、若干ながらマジカルカレント症候群が発症しているのは事実なので、ミルク一本でそのまま寝落ちしてしまった。


 昨日からハードワークの愛依が心配だけど、眠気に勝てなかったなあ。




 ***




「#AI搭載全自動型最新鋭戦艦を、ガチ素人の中学2年生16人で廻してミタ」


陽咲(ひなた)。何その日報動画のサムネみたいな言い回し」


 医務室の隣の食堂。子恋光莉(こごいひかり)が渚陽咲に小声で話しかけた。


「でもまあ、ここまでまあまあ、大過無く旅を続けてこれたわ」


「運営が優秀だからよね。そこは感謝ね」


「とはいえ、戦場では不測の事態は常に起こる。うん。頭が痛い所だけど、艦長役として、しっかり差配(さはい)しないとだ」


 子恋は、厳しい表情で腕を組む。


「光莉もだんだん、というか、艦長の威厳がついてきたんじゃない?」


 陽葵は口角を上げると、つん、と子恋の肩をつついた。



「遅くなりました」


 ドアを開け、逢初愛依(あいぞめえい)が入ってきた。子恋が立ち上がり、傍らの渚と目配せしてから、声を出した。


「揃ったわね。じゃあ、第4回女子会(議)を始めます」





 子恋は食堂を見まわした。






※女子会議ももう4回目。

※ちなみに第3回は8月3日夕食時(描写なし)。議題については第二章冒頭「あらためて人物紹介」を参照。


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