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第33話 拾う②

 




 僕のDMT(ディアメーテル)の近くに人がいるらしい。武器を使うなと言われてしまった。敵の目標ってこの人か。


「ウチもわかんない。取りあえず敵のビームは(アスピダ)で受けて。敵を遠ざけて」



 一瞬アタマが真っ白になった。インカムから、色んな人の声が入る。



「私のドローン、ピンした場所に固定(フィックス)します。」

「006番機です。岩場から人が顏を出してます。女の子? 地元民みたいです」

「顏出したら爆風ヤバイって! ウチのドローンで警告を‥‥‥‥」



 僕も慌ててしまう。


「ちょ? 僕は何すればいいの? 指示を出してよ。お~い?」


 ワチャワチャしてる内にもう一機のBotも来てしまった。僕は後進して距離を取る。


「あ、ダメ。暖斗くん。その岩場に人がいる。離れないで」

「イヤ、近づきすぎると流れ弾と爆風がヤバイッス」

「待った! どっちかにしてくれないと動けない。どっち?」


 ‥‥ヤバイ。なんか戦闘どころじゃあ無くなってきた。



 プツン。



 いきなり声が消えた。


 あれ、全体回線(チャット)から声がしなくなった。みんなが喋り過ぎたから容量超えたとか?

 んな訳無いか? 



 ――と、インカムから凛とした声が。

 子恋さんだ。



「暖斗くんはそのまま回避しながら聞いて。まずみんな落ち着いて。ここから私と渚学生がコマンドします。まず、戦闘行為の目的。暖斗くんのBot撃破を第一、岩場の人名救助を第二とします」


 ハキハキとして、落ち着いている。


「岸尾さん。あなたのドローンで岩場のクレパスに近接して。クレパスをKRM(ケラモス)で塞ぐの。あなたの技量なら出来るでしょう。それが出来るまでは暖斗くんは力を溜めて回避重視。Botにはミドルレンジで対応」



 なんか一気に頭がスッキリした。


 えっと、回避重視で力を溜めるということは、「設定A」だ。僕はあの青いパネルに手を置く。変更成功。


 そこへ渚さんの声がした。


「あとの人はクレパスの監視。情報があったら岸尾さんに伝えて。岸尾さんはその中から必要な事だけを暖斗くんに伝達」


KRM(ケラモス)了解」




 そして、インカムから、子恋さんの凛々しい声が響く。


「ラポルト始動。エンジン臨界。主砲セーフティ解除。泉さん。お願い」


 インカムの向こうで、微かに「了解」という声が聞こえた。




「ラポルトメンバーの総力戦よ。岩場の子は助けます。国民を助けずに何が軍よ!」

「あ~。そんな事言っちゃって~。記録に残るわよ。光莉(ひかり)



 ボソッと話す渚さんの小さな声を、僕のインカムが拾っていた。





 麻妃から聞いた。岩場のクレパスに、なんか地元民の女の子が逃げ込んでるらしい。


 子恋さんじゃないけど、ピンチなら助けたい! 


 それに、ラポルトが来ても、この状況じゃ主砲は撃てないよね。岩場ごと蒸発するよ‥‥‥。



 と、いう事は、僕が働くのが最善だ。



「ウチが近づいたら、恐がって奥に引っ込んでくれたゼ☆。暖斗くん。お待たせ~」


 麻妃だ。




 僕はDMTの設定をC、「攻撃重視」に切り替えてサリッサの予備回転を開始した。


 砲撃戦は確かに流れ弾の可能性があるけど、KRMが盾になってる今なら、サリッサでもたぶん大丈夫。



突撃(アサルト)!」


 敵の懐に飛び込んで、数合打ち合う。2機目が撃ってきたが、盾で防いだ。


「右から回りこんで」


 艦のAIから来る最適な行動を、麻妃が教えてくれる。みるみる、岩場からBotを引き離していった。これなら!



 突如頭上が暗くなった。ラポルトだ。でも、Botを威嚇するだけで主砲は撃ってこなかった。


 目前の敵に致命の一撃が入った。腹を大きく抉られたBotは、血肉のように内部機器やオイルを四散させた。もう一機は!?



 そのもう一機は、ラポルトに気を取られそちらを向いている。後ろから狙いすまして刺し貫く。


 全機撃破!




「戦闘終了。みんなお疲れ様。人命救助に移ります」


 子恋さんの声だった。




 麻妃の支援ドローン、KRM(ケラモス)の所まで戻ると、例の岩場をドローンがウロウロしていた。


「暖斗くん。クレパスがあったはずなんだけど」




 艦から送られてきた映像を見返す。確かにここのハズだけど、印象が変わってる。岩とかが崩れて景色が変わっちゃったんだ。


 初島さんのドローンが見つけた場所から動いてないハズだ。



「さっきは失敗したけど」


 僕は左右外側の青いプロテシスパネルに、両手を置いて瞑目した。僕の脳波がDMTとリンクして、両腕が感覚操作出来るようになった。


 これで、自分の手を動かすような感覚で、DMTの(マニュピレータ)を動かせる。



「そっか。その手が。任せた暖斗くん」



 事故が起こらないよう、ゆっくり枯れ木とか石を取り除いていく──と、あった。岩の割れ目だ。

 そこも少し掘り起こす。



 折越さんと愛依が、クルーザーで降りてくると言っていた。折越さんは対人向けのガード役、愛依は、中の人が怪我してた時用だね。




「助けて!」



 ぴょこっと、掘り起こした岩の裂け目から人影が飛び出した。

 僕のDMTの指に抱きついている。


 一瞬身構えたけど、見ると、11歳くらいの女の子だった。


 日に焼けた肌、エンジ色と白の文様の入った独特の衣装、辺境民の子だ。

 あ、頭と腕の辺りに血が見える。大丈夫かな? 



 その子は僕のDMTに、手を振りながら呼びかける。





「このDMTちっこいね。あたしの名前はアピ。中のお兄さん、あたしと結婚してよ」






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