第28話 リベンジ①
「出るよ」
艦長役の子恋さんから発信許可がおりた。
僕はDMTをハンガーデッキから乖離させる。
重力子エンジンの駆動音が、徐々に大きくなっていった。
「暖斗くん、機体番号」
サポートドローンKRMを操る麻妃からたしなめられた。
そうだった。
今回は複数機が参戦する初めてのミッション。固有の機体番号を名乗らなくては。
「002番、咲見機、出ます」
「006番、桃山機も、は、発進準備入ります」
桃山さんの声もインカムから聞こえた。ちょっと、というか、かなり緊張してる声だ。そりゃそうか。初めて自機で空から降りるんだし。
「大丈夫。下で先に僕が待ってるから。反重力装置使えばDMTだって風船みたいな重さなんだから、ゆっくり降りてきなよ」
そうか、桃山さんが006番機、で、スポ中ペアの初島さんが004番機、来宮さんが005番機と。
またインカムに麻妃の声が入る。
「そうだぜ。気楽に行こうぜ。暖斗くんも、今回はシールドにエネルギー回すからね、前回の失敗を踏まえて」
桃山さんを待つその間、手持ち無沙汰になった。
「前回の失敗か‥‥。大型のビーム喰らってシールド割られたのが良くなかったなー」
「そだよ。デブリや静電気で常に減衰していっちゃうんだからね。100%以上は積層できないんだから」
反省会になる。そういえばちゃんとやってなかった。
「でもさあ、DMTって意外と不便な兵器だよね。サリッサは回り出しが遅いし。シールドもエネルギー回したからってすぐには積み上がらない」
「そうなんだよ。ってか、戦闘に有効なレベルまで機能を高めるには、相応のエネルギーとチャージ時間が必要だ、って話なんだけどな。シールドって結局、素粒子エネルギーの集まりなんだけど」
「うん。『光電子格子』、別名『光電子フテローマ』」
「DMTや戦艦の発生装置で作られて全身を覆うよね? でもシールド発生装置が一度に作れる光電子フテローマの量は限られてるから、イイ感じのタイミングで作り溜めといて、積層を積み増ししとかなきゃ、っちゅうこと」
「もっと前からシールド積層しとけば、はダメなんだよね」
「そうそう。早すぎる積層はエネの無駄使い。結局空気中のデブリや静電気で減衰するからね。とにかく接敵した時にMAX近くにまでなってればいいのさ」
そんな会話をしてたら、上から桃山さんが降りて来た。
「はああ、怖い。わたし外の景色が見えるエレベーターも苦手なんです」
そこから散開して、僕と麻妃のKRMは森の中央部を目指す。
大型BOTはあの後一旦後退してから、僕らの艦を追尾する動きを見せていたらしい。
いつも、僕が医務室にいて動けない時は、戦艦ラポルトもリスクオフで停止してるんだけど、その時艦の周囲を見張らせているドローンの一体を、この大型BOTを探し出して張り付かせたんだって。
やっぱり附属中3人娘は手際がいい。だから今回は、こちらが既に敵を捕捉している。
***
艦橋では、各機の発進する様子を、子恋と渚が見守っていた。
「暖斗くんいい表情だったね。附属中の先輩みたい」
「うん。みなと市、なんてイチ地方都市から、よくもまあこの質の人材を揃えたよね。運営は暖斗くんの人柄とマジカルカレント能力を期待してたけど」
「暖斗くんて002番機なのね。ふふ。面白い」
「いいじゃないか? 渚学生。見た目は同じなんだから」
***
桃山さんの声がした。
「暖斗くん、006番機所定の位置に着きました」
「よっしゃあ。じゃあ、002番機のシールドも溜まったし、始めるか!」
麻妃の声と同時に、僕は構えたサリッサの予備回転を始める。
「2時方向、3戦闘距離。見えてるよね?」
「‥‥うん。‥‥いくよ。突撃!」
こちらの初手!! 敵の位置バレを生かす。長距離突撃だ!!
ドッ!! ――――ガギギィン!!
決まった!!
回転槍が大型BOTの「手」を捉えて、かなりの装甲を削った。正に「手」そのものの形をしてるんだけど、掌の部分に大穴が空いた格好だ。
僕は一度バックステップをして退く。
案の定、大型BOTは追いかけて来た。
独立浮遊する左右の「手」を展開して、砲撃をしてくる。
僕はそれを盾で受け、ホバーリングで躱しながら、さらに後退する。
「シールド残85%」
麻妃のアナウンスだ。まだぜんぜん余裕がある。
今度は大丈夫‥‥、と自分に言い聞かせた。
「森を抜けたよ」
「了解!」
中型DMTが隠れるくらいの小高い木々が並んでいた森林から、少し開けた場所へ出た。
と、同時に、あの大型も木々の間から姿を現わす。
改めて見ると、小型のBotよりかなり大きい。クリーム色の球体だ。
その本体と同じ大きさの「手」で、僕を取り囲もうとする。
僕は、そうされる前に、向かって左の「手」に近接。敵の爪を盾で受け止めた。
「‥‥‥残心」
インカムに声がした。
凛々しくて透き通った、桃山さんの声。
そして。
ゴチッ!! ドドォォン!!
僕の盾に爪を立てていた「手」が地面に接触した。桃山さんの狙撃、有質量弾が命中したんだ。
そいつにすかさずサリッサで加撃する。
「後ろ5時」
もうひとつの「手」が僕にアサルトしてきていた。
ギリギリで躱す。
本体BOTの砲撃も受け流した。
「‥‥‥‥残心」
また声がした。ゴォォォォン! と周囲に響く音がして、今度は奥にいる大型Bot本体がグラッと傾いた。
桃山さんの砲撃が、僕に動く余裕を作ってくれる!
いい感じだ。
BOTは、左右の「手」を僕に集めて、突ったりビーム砲を撃ったりしてくる。
「006番機、砲撃注意。本体がチャージしてる!」
麻妃の声が聞こえた。マズイ!
大型BOTから、幾条もの光線が放たれて、放射線状に山側の丘の上に降り注いだ。
「わああ!!」
「きゃあああ!!」
轟音と共に、インカムに女の子の悲鳴が響く。イヤな汗を背中に感じた。
「暖斗くん、マジカルカレント起動するよ。回路に印加電圧を負荷!」
着弾して煙が上がる方向に一瞬気を奪われた僕を、麻妃の声が引き戻す。
そうだ。
砲撃をさせないためには、僕がこいつらにアサルトしなくては。
※「そうだぞ暖斗。男をみせろ!」 と思ったそこのアナタ!!
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