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第26話「年上好き」情報

 第26話「年上好き」情報





 なんの意図だろう。


 僕は彼女の顏を見る。



 桃山さんは、目が無くなる例の笑顔で、ニコッと笑った。


「あ、こんなに接近したら、逢初さんに怒られちゃいますか?」


「へ? 何で?」


「‥‥‥‥そうですか。それならいいです。まあ、逢初さんは『年上男性がタイプ』ですしね」


 桃山さんは、僕を横目で見ながら、こう話した。



 一体何の事? って言うか、今何か――重要な事をサラッと言ったような。



「で、どうですか? 暖斗くんの午後の予定は」


 と急かされたので、話を流してしまった。



「うん。時間なら‥‥‥あるよ。このあとは休養して、また夕方合同訓練だよね」


「はい。で、実はこの後に、重力子レールガンの現場講習(レク)が入ってるんです。ご一緒にどうかな~~って思って」



 僕は彼女の思いがけない提案に思わずのけぞった。


 お! つまり、DMTもレールガンも実物で見れるってことか! 

 整備班の説明付きで。

 それは熱い!!


「え? 見れるの! 行く行く。行くよ!」


 僕はもう飛びついた。返事を聞いて、桃山さんはさらに笑顔になった。


「わっかりました~。じゃあ、後でメールしますね」




 ***




 14時15分、戦艦ラポルトの第二デッキに向かうと、既に桃山さんと浜さんがいた。


「あ、浜さん。お疲れ様です」


 僕の言葉に、浜さんは無言で会釈する。

「この子、勉強熱心なんで、一緒に講習受けたいっていうんで、ね」


 桃山さんが被せる様に言った。


 確か浜さん、「副任務」では桃山さんみたいな「準パイロット」では無く、本当に人がいない時用の「予備パイロット」だったよな? でも勉強しようって心構えがいいよね。僕も見習わなくでは。




「そろったあ?」

 作業着姿の網代千晴(あじろちはる)さんが、姿を現わした。編み込んだ少し赤みの髪を作業帽に入れ込んでいる。


「じゃ、な~んかギャラリー多いけど、説明してくね。桃山さん。よろ、で~す。あ、みんなパッドPC持ってんよね?」


 僕らは乗艦にあたって、スマホ、パッド型PC、インカムを軍から貸与されてる。これらは艦の中央CPとつながってて、外界との接続が出来ない今でも、戦艦の内部とある程度の周辺まではネット構築されてて、通信が出来る様になっている。


 特に艦のCPは優秀で、ある程度の検索や過去の動画も見れる。当然更新は無いけれども。


 あと、ホントは式典用礼装と艦内服も貸与されてるんだけど、礼装は出航式典と記念撮影の時だけ、艦内服は機能性とデザインが不評で、みんな自室のクローゼットに突っ込んであるよ。


 あの付属中(ふぞく)の三人娘すら着てないんだもん。いいよね別に。

 夏にあんな分厚い服、普通着ないよ。



「じゃあ、レジュメ送ったからスワイプして見てってね~」


 網代さんがそう言いながら奥へ歩いていくのでついていく。


 と、懸架された長大なレールガンが見えてきた。



 なんて巨大な! うおおお!! 僕はテンションがMAXになる。



「これが重力子電磁投射機、MSK社のUM500-GT、全長17メートル、口径90ミリ、初速は800キロね。重力子回路で弾体を軽量化しながら回転も加えて、押し子がローレンツ力で投射しま~す。普通火薬銃は後ろに反動が来るんだけど、これはバッキュ~ンすると重心が前に持ってかれるから、桃山さん、前につんのめらない様に注意だ~ね。ま、この(アスピダ)があるから大丈夫か」


 レールガンの向こうに見えたのが巨大な盾、僕のDMTの盾も大きいタイプだけど、それよりもさらに横に大きい長方形型、さらに上部に変な突起が2つ付いてる。


「これが、ダブルマメロン型アスピダ。この突起の間にロングライフルを乗せるよ。銃架台としてね。弾体は恒常劣化ウラン弾、タングステン、鉄などの先進運動エネルギー弾。炸薬弾もあるけど、艦のCADで作れないから温存ね」


「ダブルマメロンてどういう意味だろ?」


「咲見くん。‥‥‥何か言った~?」


「いえ。どうぞ続けてください」



 あくまで僕は飛び入りで見させてもらってるので、邪魔したら悪いよね。

 それよりも、実際にレールガン見れて感激だよ。こんなに大きいし、金属の塊がゴリッと存在して、デザインも機能的なモノを求めたハズなのに、それが「カッコイイ」んだよ!

 実に。実に中二男子(ぼく)の琴線にふれる。


 いやあ。やっぱり実物は違うなあ。



「レールガンってさ~。超高速で打ち出すから超高温じゃん? 銃身が気化したりして痛むんだよね。でも重力子回路のおかげで、押し出すエネルギーが少なくて済むし、銃身と非接触になったから、すごい寿命が延びました~。でもさぁ、あ~しらも気ぃ付けるけど桃山さん、ライフルのコンディションは常に気を付けて下さい」


「はい。わかりました」


 桃山さんは凛とした声で返事をする。普段の気さくな感じとちょっとギャップがある。弓道部モードかな?


「あと、BotやDMTの装甲、S-HCR-N(シュクルン)は耐衝撃性がヤバいんで、基本それ以外を狙って下さ~い。弾体の硬度、重量、初速とかを上げれば威力は増すけど、それでも撃ち抜けるかどうか」




「‥‥‥‥ま、こんなトコかな。ダルいから説明終わり~」


 網代さんはパッド型PCを下ろすと、ふう、と言いながら首をぐりぐり回した。そこへ桃山さんが話しかける。


「お~、その気取らない感じ、さっすが余裕だねえ」


「何が?」


 彼女もぶっきらぼうに返した。桃山さんはさらに、


「いやいや。やっぱ故郷に待ってる人がいるとさあ。ね。そろそろ寂しいんじゃない?」


 と言ってから僕に振り返った。


「暖斗くん。網代さんはラポルト15人の女子の中で唯一の彼氏持ちよ。変な気起こしちゃダメよ~♡」


「へ、へ~~。そうなんだ~~」


 僕はそう返事するしか無かった。あんまりそういう会話を女子とした事がないから。


 公式に「彼氏持ち」、の女子と会話した事ないよな。うん。変に意識するのもおかしいし‥‥って逆に意識しちゃいそうだ。



 ん、待てよ?


 という事は他の14人は今現在彼氏的な人はいない、という事で、‥‥と、いう事はつまり? ――――そういう事、なのか?



「そんなんじゃないし。あ~しらケンカばっかだから。アイツの顏見なくてちょうどいいんだよ」


「またまた~。ごちそうさまです」


 網代さんは照れてるのか半笑いで、桃山さんとこんなやり取りをしてる。

 桃山さんはなんか基本誰とも親しげな感じで話してる気がする。コミュ力高いのか。

 僕には無理だ。

 その横で黙って立ってる浜さんに、今はシンパシーを感じるよ。


 でも女子と話すと得るものが意外と大きかったりする。特に恋愛事に関して。今日は桃山さんから色々情報をもらった気がするな。


 夜にでもゆっくり思い出そう。




 その後、桃山さんと浜さんとで少し雑談した。先ほどシンパシーを感じた浜さんは、予想通りあまり発言が無かったけれど。


 それで2人とも、自分の仕事があるから、と別れた。    



 実は乗員にはそれぞれ「担当」があるんだよね。僕の主任務は「メインパイロット」、愛依だったら「医官」、で、その他にも、桃山さんは実は「艦内清掃」が主任務で、「準パイロット」は副任務なんだよね。浜さんは「資材管理(非戦闘品目)」、さっきの網代さんは当然「DMTのメンテ」なんだけど、3Dプリンターと兵装系も担当なんだって。


 だからレールガンの説明役が七道さんじゃなくて彼女だったんだ。



 その夜、昼間桃山さんが言ってた気になる事をあれこれ考えようとしたんだけど、寝てしまった。まあ、連戦でゆっくり自室で寝ることも少なかったから、しょうがないか。



 でも、なぜか鳴沢さんの夢を見たよ。何でだろ。故郷が懐かしいとか? 



 この前「宴」で思い出話をしたからかな? そう言えば、大きくなってからあまり話さなくなったけど。真由保ちゃん。





 今頃どうしてるんだろ。





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