第139話 突撃する赤ちゃんの物語Ⅸ ~異世界成分無添加Vr.~②
咲見邸。ラポルトのみんなで旅の打ち上げ会。
網代「そういえば。暖斗くんってミルフィーユ爆撃の第二波防いでくれたんだっけ~」
暖斗「うん。ほら。あの妊婦のオリシャさんがいた病院にも着弾したじゃんか、第一波が。それでカチンと来たんだよね。そんな病院にまであんなもの落とすとか‥‥今でも許せないよ」
紅葉ヶ丘「‥‥『誰かを守りたい』っていう感情的なブースト。‥‥からの、カタフニア無双」
愛依「あ、そのオリシャさん。無事赤ちゃん生まれたそうよ。女の子」
桃山「わ。逢いたい」
ゆめ「行けないかな? まほろ市。そういう機会ないかな?」
多賀「‥‥‥‥。それでまた島から帰れずに、戦争に巻き込まれたりして」
コーラ「それはもうコリゴリだよ」
子恋「残念ながら、その第一波の爆撃で実弾ミサイルが病院に着弾してる。シールドバリアが割られてビームも数発ね。病院は今、立ち入り禁止だったと思う」
渚 「あそこも、人的被害あったのよ。でも、暖斗くんが第二波防いでくれたおかげで、その犠牲もだいぶ減らせたはずよ」
初島「今日はそれを聞きにきた、とはいえ。あの戦闘で犠牲者が出たって思うと、なんかね」
桃山「夜の戦闘でビームの光が交差してたでしょ? 私は暗視スコープだったから、よく見えたよ」
七道「その光の一個一個に、人の生き死にが‥‥か。ふう」
浜 「で、でも暖斗くんやみんなは、敵を殺してないし」
子恋「それははっきり言っておくよ。うん。カタフニアの威圧もあって、今回部隊A、B各隊の戦果には、戦死者は含まれてない」
渚 「戦果に対して、すごいことだわ」
コーラ「そんなんジブンの故郷蹂躙されたら違うっしょ? 敵の生死なんかかまってられないよ? そんなんなったら」
ソーラ「コーラ! 言いかた!」
コーラ「アタシは間違ったことは言ってない。例えばさぁ。もし本土に大軍が攻めてきて、この面子が敵兵のオモチャにされそうになったとしたら暖斗くん? そんな『舐めプ』みたいな、敵の生死なんて気にしてられる?」
暖斗「‥‥‥‥無理だね。俺は全員殺すと思う。即座に」
コーラ「ほらね~~」
ゆめ「ぬっくん‥‥‥‥(あと一人称『俺』になってる!)」
ソーラ「ご、ごめんなさいねみなさん‥‥実際、武娘って、敵に捕まると、ほぼほぼ無事では帰ってこれないから‥‥」
岸尾「お~い。ダメじゃないけどハナシが重くなってんぞ。せっかく暖斗くんがケーキ作ってんだから食べようゼ☆」
暖斗「そうそう。食べて食べて。まだ厨房にたくさんあるから」
桃山「こういう時の常套句。ダイエットは明日から!」
岸尾「でも暖斗くん。ひと夏の戦闘経験のゆえか? 何だかオトナになっちまったゼ~。ウチはさみしい」
暖斗「何だよそれ」
愛依「そうねえ。初めて医務室に来た時は、おっきな赤ちゃんだったのに」
暖斗「ううそれは。でも、愛依が後遺症の対処をしてくれたからこそ。僕は戦えたんだ。感謝してるよ」
愛依「ふふ。ありがと。そう言われると素直にうれしい」
岸尾「やっぱりだ。新兵はオトナになっちまったぜい」
紅葉ヶ丘「しかしその、介助役の逢初女史が、暖斗くんのマジカルカレント後遺症候群、その攻略のキーマンだったとはね。それに‥‥‥‥」
ゆめ「な、何っ!? わっ私っ?」
紅葉ヶ丘「そうだよ。まさかのまさか。姫の沢さんと暖斗くんが一次的な接触、つまり添い寝をすることで、マジカルカレントの基礎能力が底上げされていくとは、ね」
七道「一晩一緒に寝るだけで基礎値がレベルアップしてくとか、どんな放置ゲーだよ?」
ゆめ「で、でも私のほうはまだ暫定値で」
子恋「確かにまだそうだけど。マジカルカレントってつまるところ脳波だからね? 愛依さんが【鎮静】、姫の沢さんが【活性】、の属性を持っていてもおかしくはない」
七道「ま、確率論から言ったら出来すぎだけどな。そんなんが体験乗艦でふたりも揃うなんてな」
愛依「カタフニアのAI曰く、マジカルカレントって①瞬発力、②持続力、③基礎値、④回復速度、があって、①から③を合わせて、⑤総合評価、をしてたのよ」
子恋「軍の指揮下を勝手に離れちゃう超問題児だけどね、うん。何故かカタフニアだけが、問題の核心に迫ってた」
渚 「とにかくマジカルカレントの知見は、ものすごかったのよね~」
紅葉ヶ丘「そりゃそうだよ。カタフニアAIから見たら、能力者はエサを用意してくれる人なんだから。それで演算しまくって、誰よりも詳しくなったんでしょ?」
七道「で、さっきのハナシからすると、逢初女史の【鎮静】が④副作用からの回復速度、姫の沢の【活性】が③基礎値を底上げしてたと」
紅葉ヶ丘「だとすると①瞬発力、と②の持続力、はどんな要因で変化するのか?」
渚 「他のどの子と寝たらいいのかしら?」
暖斗「ちょ? 渚さん?」
渚 「ごめんなさい。冗談よ」
姫の沢「‥‥それ‥‥直感なんだけど。②持続力、も、この中の誰かのような気がする‥‥」
暖斗「さすがにそれは無いよ」
岸尾「ひめっち~。ライバル増やしてどうすんだよ~?」
姫の沢「え~。そう感じたからそう言っただけだよ」
紅葉ヶ丘「じゃあ残る、①瞬発力、は?」
初島「コーラさんとか? 瞬発力あるし」
浜 「イ、イメージ的にはそうかも」
コーラ「アタシが暖斗と? ハッ! や~なこったい!」
ソーラ「こら! 言いかた!」
暖斗「なんでこんなハナシに??」
岸尾「‥‥ウチが思うに‥‥‥‥ぬっくんのキャラからしたら、正論モードでブチ切れた時に『ブアッ』って来そうだゼ☆」
愛依「‥‥わかる気がする‥‥赤ちゃんは、正義の怒りで覚醒するのよ」
姫の沢(‥‥そうよ‥‥! 私が捕まった時、ぬっくんはブチ切れてくれた‥‥!)
折越「暖斗くぅん。ちなみも近くにいていい? ちなみにちなみも能力アゲる、運命の女神かもだよぉ?」
暖斗「でももう。DMTに乗ることも無いだろうし。軍の研究には顔出すけど」
桃山「あ、そっか。そうよね」
来宮「今となっては、謎のままっス」
泉 「姫の沢さんと逢初さん。私としては、暖斗くんの近くにいたふたりだからこそ、そういう能力が開眼した。何か通じ合うものがあった、そう思いたいわ」
折越「ちなみをスルーしないで~~」




