第138話 突撃する赤ちゃんの物語Ⅷ ~異世界成分無添加Vr.~⑦
紘和60年 8月26日(月) 01:05
敵兵「な、なんだこれは!?」
敵兵「突然、我々の直上に!?」
敵兵「なんて巨大なんだ‥‥!」
敵兵「一瞬、一瞬で空が塞がった」
暖斗「まだ撃つなよ? 撃つのは、テオブロマを拘束するDMTが妙な動きをしたらだ。あ、ひめちゃんには当てんなよ? 当てたらどうなるか、わかってんな? カタフニア」
敵兵「れ、例の巨大砲台です!」
敵兵「全幅は400メートル以上、戦艦よりデカいぞ」
敵兵「突然我々の真上に、いつの間に!」
敵兵「彼我の距離は10メートルもありません。それこそ‥‥‥‥目と鼻の先に」
敵兵「駄目だ! 砲門が集光してるぞ」
敵兵「真下を向いてるんだ! あんな巨大なエイみたいなヤツが、真下を! 我々を!」
敵兵「ひいぃ! 逃げ場が無い!」
敵兵「焼かれる‥‥‥‥お母さんっ」
敵兵「く、空から口の中に、銃口を突っ込まれた気分だ‥‥!」
暖斗「突撃」
敵兵「ぐわっ!?」
ゆめ「ぬっくんっ」
暖斗「ひめちゃんを、放せっ!!」
敵兵「「うわぁ~~!!」」
敵兵「敵の前衛を人質にしたつもりが、一瞬であの悪魔が降りてきた。ゼロ距離で砲を向けられ、自身の命を人質に取られたのは、我々だった」
暖斗「俺が全部やる。シールドバリアだけ剥がしておけ。カタフニア」
敵兵「ぎゃ! 砲撃だっ!? 終わった‥‥!」
敵兵「ひぃいい!」
敵兵「生きてる‥‥?」
敵兵「違う! シールド残量ゼロだ! 剥がされた!」
暖斗「‥‥よくも‥‥ひめちゃんを‥‥‥‥卑怯者め」
敵兵「な、なぶり殺しにする気だ我々を。あの黒い回転槍で‥‥」
桃山「これは‥‥中々にスゴイ映像よ。あのカタフニアが、地面すれすれ、縦に空中停止して、全砲門地面に向けてる。‥‥向けられたすぐ下には、敵のDMT部隊が」
初島「全幅400メートルだっけ? そんな巨大エイみたいのが、縦に」
桃山「シュールな絵面ね‥‥」
来宮「あ~戦艦サイズだけど戦艦じゃないし。やりたい放題っス」
桃山「あのカタフニアに、上から押しつぶされるみたいに砲門向けられたら、どんな気分なんだろ?」
来宮「さあ? でも自分は金輪際、冗談でも暖斗くん怒らすのは遠慮するっス」
初島「姫の沢さん害するのもね」
桃山「あっ。暖斗くんが突撃始めたよ。姫の沢さんを攫った相手を、赦すつもりはないみたい」
初島「敵機はシールド割れてるからねぇ。ほぼ勝負になんない‥‥ってか、抵抗したらカタフニアが撃つだろうし、ね」
来宮「全滅かな? 敵」
桃山「うん、今そうなった」
暖斗「待たせてごめんね? ひめちゃん」
ゆめ「ぬっく~~~~ん!!!!」
暖斗「カタフニアが言うには、僕のマジカルカレント能力がアップしてるらしいんだけど?」
ゆめ「それで、チカラを貸してくれることになったの?」
暖斗「そうらしいんだ。マジカレ能力は『瞬発』、『持続』、『基礎値』の総合で決まるらしいんだけど、アイツの判定で僕は『瞬発:A』、『持続:C』、『基礎値:C→B』で、基礎値がB判定なら『ソレナラ、ソウゴウデAダカラ。ボクノチカラヲカスヨ』だってさ」
ゆめ「ぬっくんの基礎値がB‥‥って、じゃあ? 今までの能力者さんはどんな判定だったんだろうね?」
暖斗「それが‥‥各能力、ほとんどEかFだったらしい。最高でもDだって」
ゆめ「カタフニア‥‥厳しすぎない?」
暖斗「それは謎だね。カタフニアはマジカルカレント能力者の能力の上限が、まるでわかってるみたいな物言いだし。『オマエ、上から目線でムカつくぞ?』って言い返しといた」
ゆめ「で、カタフニアは?」
暖斗「必死に謝ってきた。なんかアイツのAIの試算では、マジカルカレント能力にはもっと上があるハズなんで、それを基準にしてるだけなんだって」
ゆめ「じゃあぬっくん。あの子が悪いわけじゃなさそうだよ。もっとカタフニアに優しくしても?」
暖斗「ダメだよ。軍の指揮下を離れて10年も好き勝手やってたヤツだから。ちゃんと上下関係を叩きこまないと」
ゆめ「上下関係‥‥ふふ。‥‥でも私を助けてくれたしな~」
暖斗「それはちゃんと感謝してる。ここぞで能力解放してくれたし」
ゆめ「だね。結局西の艦隊の砲撃も、あの子の副砲で防いだし」
暖斗「あの、立方体バリアを使えたのは大きかった。ビームの落下地点に敷き詰めたから、騎士団のシールドバリアも守れて」
ゆめ「敵がそのビームに混ぜ込んだ、‥‥なんだっけ。昔のその、『ミサイル』って兵器も撃ち落とせたし、ね」
暖斗「そうだよ。あんな非道い兵器を落とせるなんて。‥‥なんかまた‥‥怒りが湧いてきた‥‥」
ゆめ「あ、カタフニア降りて来た。どうしたの? 砲身冷えたの?」
暖斗「たぶん僕がまたムカついたから、接続したいんじゃないかなあ」
ゆめ「ぬっくん機から生まれたエネルギーを取りに来たんじゃなくて、ぬっくんの怒りを取りに来たみたいだね‥‥‥‥あ、ケーブル降りて来た」
暖斗「動脈だっけ。じゃ、第二ラウンドだ!」
ゆめ「なんかもう。多国籍侵攻軍がこっち向かないね。こんなに大きな砲台が浮いてるのに」
暖斗「前面の騎士団で手一杯なんじゃないかな」
ゆめ「どこ行くの?」
暖斗「敵集団の後方。前のほうだと騎士団のみなさんに干渉しちゃうから。あ、え~と、みんなは?」
桃山「こっちだよ~」
暖斗「うん。カタフニアの砲撃に巻き込んじゃうとあれだから、そこにいて。麻妃は来る?」
岸尾「いや、いいや。ここで部隊Bの管制してるよ。ひめっちと仲良く行ってきな」
ゆめ「や、やだもう。まきっちったら」
暖斗「ベタだなあ」
岸尾「お前が言うな!」
来宮「パイセン」
初島「何? 櫻?」
来宮「ラポルト乗艦の時、男子はひとりって聞いて。『誰かとくっついてイチャられて、艦内の空気が微妙になったらどうするか?』なんて自分、考えてたっスけど」
桃山「あ、それは私も~」
来宮「この恋人同士って、そんなに空気壊さないっスね」
岸尾「壊してはいるのか。はっは。まあそりゃそうか」
初島「そりゃあねえ。こんだけ目の前で見せつけられたらねえ。でも、櫻が言いたいのは、そういうことじゃなくて」
来宮「そっス。ふたりが自然だし、姫の沢さん一生懸命だし。なんか好感持てるっスよ」
初島「そうそう姫の沢さんのキャラ。ちょっと不器用だけど一途だから。応援したくなるっていうか、ね?」
岸尾「ひめっち聞こえてるか~。‥‥あ、通信切ってら」
初島「恥ずかしいんだよ。そこもまた良き」
桃山「姫の沢さん、そういう子だから。だから好かれる」
来宮「正直自分は、幼馴染要素が無かったら、暖斗くんは逢初さんとくっついてたかもって思ってたっス」
桃山「あ~~わかる~~」
岸尾「そっか。そっちか~」
初島「戦闘終わるたびに医務室でふたりきり、だよ? しかも動けない暖斗くんをかいがいしく献身的に介助する彼女。次第に、ふたりの心は寄り添って行き‥‥あ~~」
岸尾「ウチの観測だと、その兆候も少しあったんだよな」
来宮「マジっスか!?」
初島「ホント?」
岸尾「だってウチのことは未だに小学校時代の呼びかたなんだぜ、彼は。その暖斗くんが愛依のことを‥‥『愛依』って呼ぶとは。‥‥正直ウチは予想してなかったゼ☆」
桃山「下の名前呼びは、ヤバいよね」
初島「同意」
来宮「同意」
岸尾「まあ、この旅で暖斗くんが大人になったのかどうか? そのうちわかるっしょ」
桃山「訊いていい? 岸尾さんは参戦しないの?」
岸尾「あ~、暖斗くん争奪戦線に、ね? 色んなヤツから100万回訊かれた。ウチはいいよ。マジで」
初島「ふ~~ん。本心だ。これ」
来宮「良き幼馴染ではあるけれど、そうではない、と」
岸尾「そういうのはひめっちだから。別にひめがいたからウチが身を引いたとかでもないし。ウチは暖斗くんは、弟ちゅうかホント。異性の幼馴染みってだけで」
桃山「‥‥‥‥ゴメン。今暗視覗いたら、もう部隊A接敵してた」
岸尾「ウチも管制忘れてた。でも通信切った暖斗くんとひめっちも悪い」
初島「ここから見る夜間のビーム砲って、花火みたいだね」
桃山「めちゃめちゃ不謹慎~」
来宮「こんだけガールズトークかましといて。自分らもうパイロット失格っス」
岸尾「まあ今回は。謎の強化がかかった暖斗くんと、手を貸してくれたカタフニア無双ってことで。あ、そのトリガーになったひめっちにもGJを!」
桃山「岸尾さん。今ゼッタイ親指立ててるでしょ?」
岸尾「あ、わかった?」
※ 作者注 ちょいとココで裏設定を。
カタフニア君の、マジカルカレント能力総合判断
『瞬発:A』、『持続:C』、『基礎値:C→B』
で、『総合:C→B』なので、カタフニアが100パーセント手を貸してます。
IFで無い本編では(厳密には異世界要素がある本編がIF、ひめが乗り込むこの物語が本編なんですが(-_-;) )
『瞬発:A→S』、『持続:C』、『基礎値:C』でカタフニアを口説くイベに挑んでますので『総合:C→B』、カタフニア全能力解禁、となっております。
暖斗くんが対英雄戦、対ゼノス戦などでマジカレ能力の天元突破をしているので、おのずと『瞬発:A→S』と鍛えられていたワケですね。




