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第138話 突撃する赤ちゃんの物語Ⅷ ~異世界成分無添加Vr.~⑤






 紘和60年 8月25日(日) 戦艦ラポルト。朝食後の小会議室。8:45


「ああ、子恋。忙しいトコ呼び出してすまなかった」


 七道さんと、子恋さん。



「いえいえ。何か、重要なことなんでしょ?」

「まあな。‥‥あくまで‥‥仮説というか、機械屋の勘なんだがな」

「何か?」


「あれだ。逢初と暖斗くんが寝たら、暖斗くんの後遺症の回復が早まったって件」

「今、まさに検証中だね。うん」

「他の女は?」

「うん?」


「『暖斗くんの回復早める因子を持ってるのが、たまたま乗艦した医師役の女だった』なんて話が出来すぎだろ? で‥‥逆に考えたんだ。『そういう因子は既に幾つかあって‥‥今回そのひとつが見つかったかも』だってな。それならこんな全人類70億分のイチ、みたいなデタラメな運ゲー説は回避できる」


「う~~ん。それは確率論から出た可能性の話だよね? でも面白いし一理ある。もし、他の因子を持つ女性がこの世にいるとしたら、どんな因子だろう?」


「なあ。そろそろ戦争近いんだろ?」

「‥‥‥‥そうだけども」


「じゃあマンガみたいな希望論で言おうか。取りあえず、一晩抱いたら攻撃力が爆上がりする因子、なんてどうだ? ‥‥正直オマエが‥‥今イチバン欲しい因子だろ‥‥!?」

「ふふっ。七道さんには敵わないなあ」


「ああ。先日、暖斗くんの機体のカラクリを知ってなあ。もしラポルト女子が全員、暖斗くんに順繰りで抱かれたら、何か起こるかもしれないな!」

「あはは。そんなんなったら確実に、来年からの『ふれあい体験乗艦』は中止だね! ただの男女の不純異性交遊イべになっちゃうからね」


「おいおい子恋ぃ。ハナシ逸らすなよ」


「うん?」

「私は、暖斗くんと逢初だけが、マジカルカレント能力に起因する諸々の事象を変化させる組合せ(ぺア)って可能性だけじゃなくて、他の可能性のほうも色々ありそうだぞって問題提起したんだ。それに答えろよ?」


「あ、申し訳ない。えっとね。今回の暖斗くんと逢初さんに関しては、私も全く予想外の事象なんだ。棚ぼたとはこのことだね、うん。用兵に関しては、暖斗くんのマジカルカレント能力は予想した数値の最高値近くだし、姫の沢さんとのフォーメーションも円滑だし、申し分無かったんだ。本当に」

「ほう」


「そこに七道さんのこの仮説。‥‥確かに可能性はありそう。暖斗くんのマジカルカレント能力が、誰か他の女性との同衾で結果を左右する特異なモノだったとしたら‥‥。だけど、現実主義者(リアリスト)に徹すべき軍人としては、これ以上の偶然による戦況の回復、幸運要素は加味すべきではない、と考えるよ。もしそういう事実があれば勿論、活用しない手は無いけどね。今回、逢初さんの『回復が早まるかも』だけでも確定するなら、もうそれだけで十分すぎる奇跡のような僥倖で、これ以上望むのは欲張りすぎだと考えるよ。うん」


「そっか。まあ、そうだよな」

「戦略家の私としては、人事は尽くしたつもりだよ。一介の女子中学生のできる範疇でね」

「ははっ!」

「んん?」


「人事? 一介のJC? 何言ってんだ子恋ぃ」





「この策士が」





***




 同日。23:05


 ガンジス島、まほろ市南部。国立公園予定地の広大な更地。


 皇帝警護騎士団(イポテス)による「中の鳥島上陸作戦」開始。



暖斗「始まったね。なんか見える?」

桃山「ここからは何も」



 その更地から30戦闘距離(スタディオン)(5.4キロ)離れた、南西の丘陵。



岸尾「ウチの索敵じゃあ、先遣隊とミロースイあたりがもう接敵してる感じだけど」

ゆめ「できれば戦果が欲しいな」

暖斗「無理は駄目だよひめちゃん」

ゆめ「でもここで撃破判定稼げば、将来のぬっくんの兵役減らせるかもだし」

初島「でも危険な目に遭ったら元も子もないよ?」

来宮「そっスねえ」

暖斗「そうだよ。僕の兵役はともかく。来宮さんや初島さんに迷惑はかけられない」

桃山「あれ~暖斗くん。私もいるんですけど~?」


暖斗「もちろん! 桃山さんだって」

岸尾「でもなんかこう‥‥満身創痍の落ち武者みたいなDMTが‥‥単機でコッチにふら~~っと来てくんないかな~。そういうの索敵してんだけど」

暖斗「都合良すぎだろ。いくら何でも」

岸尾「いやいや。だって騎士団(イポテス)最強なんでしょ? 暖斗くん」

暖斗「そりゃそうだよ。ついに参戦してるんだから、もう勝ち確だよ」


岸尾「でもさ~。ウチは『どう勝つか?』気になるなあ。だってさ。中途半端に勝っても逃げられたら、今また攻められてるんでしょ? 重力子戦争(グラビトン・ウォーズ)で逃げられたから」

ゆめ「あれはまあ、しょうがないんじゃない? 勝つのでやっとだったそうだし」

来宮「戦争イヤっス」

初島「櫻の言う通り」


暖斗「僕らがどうにかできる問題じゃないしなあ。まあ僕ら部隊(スコードロン)A、B合同チームは、もし敵が来たら叩く、と。で、ヤバそうならちゃんと逃げる」

ゆめ「私は逃げない。ぬっくんの無事が確定するまでは!」

暖斗「ひめちゃ~~ん」

ひめ「ご、ごめんなさい。つい、そういうテンションに‥‥」

暖斗「ダメだからね?」

ゆめ「‥‥‥‥はい‥‥」


桃山「まあまあ。私たち女子だってね、従軍すれば税の優遇とかあるし色々特典あるから、敵の撃破判定拾えるなら悪いことはないよ?」

岸尾「そっか~桃山さん家は~」

初島「お母さんとか、大変だよね」

来宮「年金も違ってくるし。いっちょやりますか」

暖斗「うん。あくまで慎重に」

ゆめ「うん」

岸尾「税とか年金とか‥‥JCが憂いていてマジウケる」




桃山「‥‥‥‥待って。木の揺れ方おかしい所ある‥‥! 何‥‥? 土煙?」


岸尾「マジ? スナイパースコープとはいえ、夜間暗視でよく見つけるわ‥‥」

ゆめ「敵ってこと?」

岸尾「ウチちょっち見てくる!」

暖斗「気をつけて!」

岸尾「KRM(ケラモス)は捕まってもヘイキだゼ☆ じゃあ、ラポルトのみんなの豊かな老後のために、いっちょやったるか~」





暖斗「そういう動機でやる気になるなよな~~。もう」





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