表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
499/521

第134話 突撃する赤ちゃんの物語Ⅳ ~異世界成分無添加Vr.~①






「大丈夫だよ。もう普通の食事、朝飯だってさっき自分で食べたし。今さら」

「えっとね。暖斗くんが安静にしてる時の数値が欲しいの。だから」

「手が動くのにこれってのも‥‥ある意味キツイな‥‥」

「まあまあ。医学の進歩のために、わたしのお願い聞いて。ね? 暖斗くん」

「まあ、それじゃあ。ひめちゃんの負担軽減になることでもあるし、ね」

「うん、よろしくね。‥‥‥‥じゃあいくよ。はい、あ~~ん」



紘和60年 8月13日(火) 8:45 空中戦艦ラポルト 授乳室。


 咲見さんと逢初さん。



「はい、あ~‥‥っとっと」

「ごめん。息が合わないね」

「ごめんなさい。やっぱりゆめさんみたいにはいかないわ。ごめんなさい」

「いや僕が悪いんだよ」

「でも服の襟にミルクが‥‥何とかしなきゃ」

「いいよいいよこれくらい。それよりも‥‥」

「ん?」


「近いよ。逢初さん」


「あ、顔が? うふふ。ごめんなさいね。わたしは不器用だし、ゆめさんみたいに手足があんなに長くないから」

「そんな、悪く言ったつもりはないよ。それに」

「それに?」

「逢初さん別に、ス、スタイル悪くないじゃん。むしろ良いほう、じゃ‥‥?」

「え~、そんなの言われたのはじめて! でも違うよ。太いもん。ぷにぷにだもん!」

「えっと、どう言ったらいいのかな? そんなに無理して痩せてなくても、なんて」

「そう? でもスタイル良い人は本当に良いよ? この前お風呂行った、渚さんとか折越さん、もちろんゆめさんも」

「あ、行ったんだ。‥‥ハシリュー村?」

(しまった村の露天風呂は「秘匿事案」だった‥‥あ、でもわたし「お風呂」としか言ってない‥‥)

「そう。みんなで行ったの(平然と)」

「そっかぁ。まあ確かにあの三人なら」

「でしょ? ‥‥‥‥っていうか暖斗くん?」

「ん?」

「やっぱり男子って、そういうところはそういう視線で見てるのね? やだ、もう」

「え? いや!? ‥‥‥‥な、なんでこうなった!? あわわ」


「あ、そんなに動いたら数値が」

「あ、そうだったごめん」


「‥‥‥‥いいえ。これはわたしが悪いよ。ごめんね暖斗くん。思わず変なこと言っちゃった。言わなくてもいいことを。医療人失格」


「そんなに落ち込まなくても。と‥‥とにかく、逢初さんはスタイルとか、悪く思わなくて大丈夫だよ。男子の好みだと‥‥モデル体型よりそういう感じのほうが人気あると思うし」

「そうなの?」

「そうだよ。別にそんな、いちいち芸能人みたいな体型してなくても。僕は逢初さんみたいな感じが実は、一番好きかもだし」

「‥‥‥‥!?!? それって、わたしがゆめさんに勝っちゃうってこと? 暖斗くんの好み的な中で‥‥!?」

「うう、難しいなあ。でも、別にひめちゃんとは幼馴染で、モデル体型だから仲いいとかじゃないし」

「あっそっか。うふふ。うふふふふ」

「どしたの? 急に?」



「だって暖斗くん。男子としてはとっても正直だけど、男性としてはとっても誠実なんだもん。‥‥‥‥そっか。うふ。うふふふふ」



「うん? なんかピンチは脱出できたのかな? じゃあまあいっか」




***




「うふふふ。はい、あ~ん」

「ご機嫌だね」

「うん。うれしいの。暖斗くんが誠実だってわかったから」

「そうかなあ。あんまり実感ないけど。ってか‥‥さらに顔が‥‥近い」

「ごめんさない。わたし『れんげ市海軍病院』の小児科でバイトしてるのね」

「あ~駅南の」

「うん。小児の患者様相手だと、どうしても顔が近くなっちゃうから」

「そっか。子供相手でいつもこうだから、か」

「だからごめんね。うふふふふ」


「そう言えば。ひめちゃんのこと『ゆめさん』って呼ぶんだ?」

「うん。ゆめさんもわたしを『愛依さん』って呼ぶよ? あ、そうだ。そのゆめさんから提案されてたんだ‥‥」

「提案?」

「あのね。暖斗くんは麻妃ちゃんのこと『麻妃(マッキ)』って呼ぶし、ゆめさんのこと『ひめちゃん』って呼ぶでしょ? ふたりは暖斗くんを『ぬっくん』って」

「うん、まあ。はは。麻妃(マッキ)には許可してないけどね。公式には」


「ふふ。わたしそういう幼馴染いなくて。ゆめさんに『そういうのいいなあ。憧れる』って言ったら。『じゃあ愛依さんもぬっくんに、あだ名とかで呼んでもらえば? 私は全然オッケーだよ!』って言われて」


「あだ名? 君に?」


「うん。なにか思いつく?」


「いや~~。急にそんな言われても」

「だよね。うふふふふ」

「ああでもひめちゃん言いそうだ。小三で、三人初めて同じクラスになって、小五でひめちゃんとも話すようになったころ、言いだしたんだよ。お互い呼び名を考えよう、とか。その時に麻妃を『まきっち』って呼ぶのを勧められたんだけど、なんか女子っぽいから結局『麻妃(マッキ)』になったんだ」

「あれ? 麻妃ちゃんとゆめさんは小一で知り合ってたんだよね?」

「ああそう。ふたりはもう友だちだったんだけど、僕とひめちゃんとは小三で」

「あれ? じゃあ『ぬっくん』って呼び方は?」

「それは小五か小六の時かな。それまでは僕の異母姉(あねき)の呼び方で、麻妃とかには『はーくん』って呼ばれたた」


「結構複雑ね。ふむ。じゃあわたしの記憶から整理するね」


①まず3歳の時に、暖斗くんと麻妃ちゃんが幼年教育舎で出逢う。

②6歳で小学校入学。ここで麻妃ちゃんとゆめさんが出逢って友だちに。

③8歳。小学三年生で三人同じクラスに。暖斗くんとゆめさんが知り合う。

④10歳で五年生、クラス替えがあったけど、また三人同じクラス。この頃から暖斗くんとゆめさんも友だちに。

⑤11歳の時、ドローンレースがあって、ゆめさんは応援に行ってます。


こんな感じかな。あ、年齢は誕生月が来てない計算だよ。あとゆめさんは10歳ごろから、モデル業も始めてるね」

「すごいな。スラスラ言えて合ってるし。さすが『超記憶』‥‥なんだけど、ドローンレースの話‥‥なんで知ってるの?」

「ゆめさんから聞いた桃山さんから教えてもらったよ。ふふ」


「‥‥‥‥。やっぱそうか」


「単純に『三人は同じ小学校で幼馴染み』って言っても、実際はこんなに細かいもんね」

「まあ、あらためて言われると」


「‥‥で、わたしから、‥‥暖斗くんにおせっかいな提案があるんだけど」

「ん? 何?」





「その幼馴染み、ゆめさんのこと。もう許してあげて?」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ