第133話 突撃する赤ちゃんの物語Ⅲ ~異世界成分無添加Vr.~③
紘和60年 8月12日。12:11 空中戦艦ラポルト 食堂
別れ話(あくまでゆめさん視点)を切り出して譲らない咲見さんと、泣いてすがるゆめさん。
と、食事に来てそこに居合わせるラポルトの皆さん。
「あれ?‥‥ひ、ひめさん‥‥?」
「暖斗くんと喧嘩してるよ!? ど、どういう状況?」
「な、泣てるよひめさん」
「暖斗くんが怒ってる? どういう状況?」
「あ、桃山さんと浜さんも来た」
「あ~~。だいぶ人が集まってきた。混むとダルいな~~」
「せっかく早めに来たのにな。暖斗くんと姫の沢の悶着のせいだぞまったく!」
「‥‥‥‥。附属中三人娘以外は、全員集まった」
「で、暖斗くんが『正論パンチマン』なのはわかったわ。岸尾さんはあの状況、どう収拾するの?」
「ウチ? ウチは別に収拾しないよ? ってかそういう泉さんも冷静だね」
「ああ、私は商人だからかしら。商売にはトラブルやクレームは茶飯事だから」
「な~る。まあ種明かしすると、ひめはああやって暖斗くんに『捨てないで』って縋りついて号泣するのが長年の夢だったから。だからとことん、涙枯れるまで泣かせてやるのが親友の優しさってもんだゼ☆」
「「歪んだ幼馴染み愛だ~」」
「でももうひとりの幼馴染み、の暖斗くんは、さっきからチラチラ麻妃ちゃんを見てるよ?」
「岸尾さんに仲介して欲しそうだよ?」
「そりゃ暖斗くんはね。でもそういう困った暖斗くんを放置して愛でたいのが、ウチの夢☆」
「「あ~~~~」」
「歪みすぎだろ」
「うえええ~~ん」
「もう、岸尾さんは放置しよ? みなさん、いちこがさ、この状況を収拾できそうな案を実は考えてたんだけど?」
「「案?」」
「そうそう。ね? いちこ。で、岸尾さん。そろそろ提案しちゃっていい?」
「さいはて中コンビが? いいゼ☆ ぬっくんの困り顔もひめの泣き顔も堪能したしね。ウチはノープロブレム」
「了解。じゃ、行こ。いちこ」
「う、うん」
***
「お取込み中ごめんなさ~~い。ちょっといいかな? 暖斗くん」
「何?」
「えっといちこがね。その、色々負担が大きい姫の沢さんを心配して、改善案を考えてたの。ね? いちこ」
「う、うん」
「へ~~ありがと。何だろ? あっそっか。浜さんは予備のパイロットだから、ひめちゃんの代わりに盾役になってくれるとか?」
「あ~ちょっと違うかな。ほら、いちこ」
「は、はい。あの、ひめさんの代わりに、私とうたこがごはん係やったらど、どうか、など」
「そう。私たちも手伝う案。ね? 折越さん?」
「え~~。あたしもぉ?」
「そうよ。私といちこ、それに折越さん。だって折越さんは、実家の右どなりの道場で、年少部の小っちゃい子に古武術教えてて。‥‥家の事情で親の迎えが遅い子に、実家の左どなりの飲食店で軽食作ってあげてるんだもんね?」
「え~何それ。見直したゼ☆」
「‥‥‥‥。意外な一面」
「だからゆづ~。それはおまゆうだから~」
「ほ~コイツがな」
「折越さん見直した」
「ただの露出狂じゃなかったんだな!」
「露‥‥!? 七道さんヒドイ! プイ!」
「‥‥‥‥しかしいつの間にそんな話を? 相変わらずの桃山さんのコミュ力」
「っスね。恐るべし」
「あ~~もうやめてぇ! ちなみは派手な子だからそういうイメージいらないしぃ。おなか空かせてかわいそうだからしょ~がなく作ってるだけだしぃ」
「‥‥‥‥。照れ隠しに否定しつつ好感度爆上げコメ。‥‥コレは使える」
「ゆづ?」
「まあそういうことで(苦笑い)。大手ファーストフード店でバイトしてる私、いちこ、それと折越さん。みんな調理器使えるから手伝えるの。どう? 暖斗くん」
「いや~、僕はひめちゃんの負担が減るなら文句はないよ。ありがとう桃山さん」
「っと、それはいちこに、ね?」
「ごめんごめん。ありがとう、浜さん」
「は、はいぃ」
「うう‥‥ひっぐ。‥‥でもそうしたら、ぬっくん家に行って私がカレー作る話は? ‥‥ひっぐ‥‥‥‥立ち消え‥‥?」
「それはあらためて頼むよ! ひめちゃん!」
「「ええ~そんな話が?」」
「そうだ。じゃあみんなも呼んで‥‥」
「うえええ~~ん」
「そこは暖斗くん。ひめだけにしといてやって。まあウチは食べに行くかもだけど」
「ふう。何とかなりそうね。でも、ひめさんの介護のお仕事、わたしもなるべくフォローしたほうがいいかも、ね。暖斗くんにミルクあげる係とか‥‥‥‥‥‥」
「どした? ‥‥愛依?」
「そうよ。わたし、イイこと思いついちゃったかも! さっそくCAD/CAMで製作依頼を」
「またか? 逢初。仕事増やしてくれるなよ~」
***
「で、あっちのほうは何とかなりそうだけど、さっきの話。逢初さん」
「ああ初島さん、パイロットの身体検査の時の。話が途中だったよね。ハシリュー村からの報告」
「で、結局見つかったんスよね? あの村の子」
「‥‥うん。無事だったって。アピちゃんが見つかって、本当に良かったわ」
「ほんそれっスよ。まさか、自宅の地下収納に隠れていたとは」
「だよね~。盲点だよね~。催淫剤も吸ってない、と」
「しかも、アピちゃん家に、外国の兵隊さんがいたって」
「それもまさかっス。もし行ってたら逢初さん?」
「やだ。怖い」
「マジででも『怖い』、とかってレベルじゃなくヤバかったかもだよ。敵性外国兵が、こんな白衣属性持ちの美少女中学生GETしたら、絶対何かへんなことするでしょ?」
「だって逢初さん、湯上りでキャミ一枚だったって」
「‥‥それは‥‥ごめんなさい。わたし、お風呂上がりはどうしても」
「だってあの、胸元がむっちゃ緩いキャミでしょ? あれはヤバいっス。あれじゃあ襲われても文句言えないっス」
「襲わないオトコがいたら、むしろその人を褒めるよね」
「やだ。わたしなんてそんな。誰も見てないよ」
「いやいや逢初さ~ん。私ら男女混合フェンシング部だから、男子の目とかけっこうあるけど。マジで男子って見てくるよ? 女子のパーツを」
「こっちが気づいてないと思ってガッツリ。あからさまっスね」
「そうかな。ああ、でも‥‥‥‥陽キャ転生してからは確かに」
「気がついた? 自覚したほうがいいよ? しっかしまあ」
「話が逸れたっス」
「ホント、行かなくって良かったよね? 敵兵の家」
「うん。渚さんに強く制止されてたし、みんなで手つないでたから。大丈夫だったけど」
「でももしか。その敵兵が超絶スパダリで、超絶イケメンで。超絶逢初さんと相性が良い運命の出逢い、白馬の王子様だったかも」
「王子様に超絶教唆されての、外国移住‥‥」
「もう。何回超絶って言うの? そんな確率‥‥‥‥」
「あ、『超計算』で算定してる?」
「意外と逢初さん、乗り気っスね」
「まあ、そんな作り話みたいな可能性も、ゼロじゃないかもね。‥‥誰かの作為がないと‥‥」
「‥‥‥‥絶対発生しない確率だったわ」




