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第133話 突撃する赤ちゃんの物語Ⅲ ~異世界成分無添加Vr.~①





 紘和60年 8月11日(日) 9:05 ハシリュー村。裏手の山の露天風呂。



「しまった。ナイスバディの渚さん! わがままボディの折越さん! 目下売り出し中の現役JCモデル姫の沢さん! ‥‥ラポルトのスタイルいい子トップスリーと温泉に来ちゃった。‥‥どうしよう? わたしのぷにぷにボディなんて‥‥」



 咲見さん以外の、「アピドーハ=ミタハを村へ送る特別編成部隊」の面々。

 ゆめさん、逢初さん、渚さん、折越さん。



「あ、愛依さん。どうしたのタオル巻いて?」

「えっ? ‥‥あ、ゆめさん。え~と。ここの露天風呂って、景色がいいじゃない‥‥?」

「そうだね。すっごくいい」

「でも逆に、向こうからこっちも見えちゃう気がするの。ほら、あの山とか」

「あっそっか。ハシリューって女耳村だから、その辺ガードゆるいかもだよ」

「うん。男子の目が無い前提だから、気にしなくて楽なんだけど、警戒も薄いというか。あの脱衣所とかもそうだったし」

「そっか~そうだね! じゃあ私も、愛依さんに習ってタオル巻いとこっと」

「うん。村の人が、タオルで入湯しても大丈夫って言ってたしね‥‥」


(ホントは、スタイル抜群の三人に、わたしが気後れしただけなんだけど)


「もしかして。敵の兵隊さんとかがあの山からこっちを覗いてたりして?」

「あはは。まさか~」

「ちなみは見られてもヘイキだもぉん。ピーピング上等よおぅ!」

「一体なんのカミングアウトよ? アナタ」

「でも、あそこに居るとしたらドコの国の兵隊さんかなぁ? あ、もしかワンチャン、イケメンかもぉ!」

「‥‥‥‥‥‥ツヌ‥‥とか?」

「根拠は? 何でそう思ったの? 逢初さん」

「‥‥‥‥いえ‥‥ただ‥‥何となく」




「ああ~いいお湯。いい景色。ぬっくんも連れてきたかったなあ」

「そうねゆめさん。暖斗くんは昨日、英雄さんを連れてラポルトに戻っちゃったしね」

「ダメよ姫の沢さん。女耳村(じょじそん)の露天風呂に男子連れ込んじゃあ? ココは男性には、戦略的に秘匿してる施設なんだから」

「あはは。軍人さんっぽい言い回し」

「つ、連れ込みはしないよお」

「でもぉ。もしそうしたら? 暖斗くん外で待たせて更衣室で、ハダカになったりするんでしょぉ? 『今コッチ見ちゃダメよぉ?』とか」

「それは折越さんだけでは?」

「何よぉ陽葵ちゃぁん! ‥‥でもいいもん。今日の本題は‥‥ゆめちゃんだからぁ!」


「え? 私?」


「ゆめちゃんてぇ、暖斗くんとどこまでいってんのぉ?」

「あら。初めて意見が合うわね折越さん」

「どこまでって‥‥。私だって体験乗艦で再会したばっかだし‥‥」

「でも幼馴染なんでしょ? 麻妃ちゃんと三人で。麻妃ちゃん、ふたりが上手くいってるからずっと上機嫌よ?」

「愛依さんまで‥‥。久しぶりに逢って、昔みたいに喋れてほっとしてる所だよ‥‥」

「あれぇ? 『愛依さん』?」

「いつの間に? 姫の沢さんと逢初さん、下の名前で呼び合うのね?」

「それは~~。えへへ」

「うふふふ。そうね。昨日の夜からかな」


「ほら。昨日はハシリューの人に歓待されたけど、ぬっくんが村の女子に囲まれたでしょ?」

「それで、わたしとゆめさんが暖斗くんに頼まれたの。共同戦線張って、女の子たちの間に入ってくれって。ね? ゆめさん」

「あ~~あの時ねぇ? ちなみも共同戦線に入れてくれればあぁ」


「いや折越さん。アナタは村の子に混ざって、暖斗くん囲う側だったでしょうに」




 ***




 同日。10:25 ハシリュー村入り口付近


 姿が見えないアピちゃんを探す、ラポルトの皆さん。


「いい? 逢初さん、Botの動きを把握しつつ、アピちゃんの家に向かうわ。場所がわかってるのはあなただけだから、案内して!」

「はい!」


「姫の沢さんは、行けるならDMTへ。でも無理はしないで。ラポルトから増援を呼ぶから、できればそれまで待って」

「でも村が」

「敵の機数が不明よ。あと、あの白い煙気になるわ。みんな、お互い手をつないで離さないで」

「ああ~。せっかくお風呂入ったのにぃ。後でもっかい行こうね」

「そうね。ゆっくり行きましょ。アピちゃんも連れてね」


「あそこ、あの丘を登った赤い屋根が、アピちゃんの家です」

「待って。Botが近いわ。ここで一旦待機しましょう。姫の沢さん」

「はい」

「あなたのUO-003(テオブロマ)は前衛職、受け太刀特化のチューニングよ。単機でのBot撃破は不得手だわ。もし単独で()るのなら、あなた自身で設定変えるか、そのまま受け太刀に徹して暖斗くんを待ったほうがいい。適時状況を見て」

「うん、わかったよ」

「渚さん。風向きが。あの真白い煙がこっちに来るわ」

「あの煙、やっぱり不自然、あれは要警戒だわ。ここももう無理、無念だけど撤退しましょう。でも姫の沢さん、Botがこっちに近づいたから、テオブロマまで道が開けたわ」


「うん。私行く‥‥じゃあみんな、後でね」

「がんばってぇゆめちゃぁん」

「気をつけてね」

「無理しちゃダメよ」




「渚さん、あのBot。何かアピちゃんの家に近づくのを阻むように、白い煙出してる気が」

「さすが逢初さん。たぶんそうよ」

「ちなみだって気づいてたもん」

「そして‥‥あの白いのは、神経毒よ。恐らくね。神経毒の可能性が高いわ」

「神経毒っ!?」

「しんけいどく?」

「説明は後で。なるべく離れましょう。中継ドローンでラポルトに連絡とれたし、DMT戦になって巻き込まれたらいけないわ。もう大屋敷に戻ったほうが」



「う~ん、でも。アピちゃんのお母さんに申し訳ないな‥‥」

「これは致し方ないわ逢初さん。もしあなたが無理してあの家に行っても、Botに捕まるのがオチよ。あの白い煙、催淫効果がある事例も」


「‥‥‥‥催淫剤‥‥‥‥!!」


「それはゼッタイやだぁ。ちなみだったらゼッタイ行かないぃ」

「わたしだって行かないよ。そんな、強制的に変な気分になる煙なんて、吸いたくないもん。あとで暖斗くんに、どう説明したらいいの?」

「そうね。男子には言わぬが花、よ。‥‥大屋敷が見えてきたわ。みんな、一回濡らした布で身体の表面をぬぐって。服もよ」

「なあんでぇ? 服も?」

「催淫剤が水溶性ってことね? 渚さん」

「さすが逢初さん。そうよ。ハシリューの人に影響がないように、万一を考えてこうするの。さっきの接近で、ごく少量だけど浴びた可能性があるから。あとは」

「あとは?」


「私は高い場所から姫の沢さんをモニターするわ。ラポルトに状況を伝えます。みんなは家に入ってて」

「わかったぁ」

「‥‥‥‥姫の沢さん、無理しないで、ね。渚さんも」


「私は大丈夫よ。あとは姫の沢さんのDMTに、任せましょう」




 ***




 同日。10:39 DMTテオブロマ、隔壁操縦席(ヒステリコス)





「‥‥‥‥私はぬっくんがいなくてもできる。私はぬっくんがいなくてもできる。私はぬっくんがいなくてもできる。私はぬっくんがいなくてもできる。私はぬっくんがいなくてもできる。私はぬっくんがいなくてもできる。私はぬっくんがいなくてもできる。私はぬっくんがいなくてもできる。私はぬっくんがいなくてもできる‥‥‥‥」






※ 紘和60年 8月11日 10:39 は、第一章ルートで愛依がゼノスと出逢った時間。

本編第一部、第一章第38話「露天風呂Ⅰ②」での記述

「勝手に足が進んで」

「何かに突き動かされるようにドアを開けると、家に入った」


は、異世界要素、エイリア姫とゼノス王子の因縁とその影響が無ければ、本来起こらない行動だったということですね。


これで「愛依―ゼノス邂逅ルート」は、完全に回避されました。


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