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第131話 突撃する赤ちゃんの物語Ⅰ ~異世界成分無添加Vr.~③





 小屋敷小トリオの初陣から一夜明けた、紘和60年7月30日(火)7:30


 食堂の隅に座る、浜一華さんと桃山詩女さん。



「こ、ここで待ってれば」

「そろそろ来るかもだよね。だって」


「さ、咲見さん、昨日は一晩中寝込んでたそうだし」

「うん。逢初さんによれば、二回服薬してよく寝たから、今日の朝ごはんは食堂で大丈夫かも、だって」


「でもうたこ。いつも思うけど、い、いつの間に逢初さんとそんなに仲良く?」

「え? 別にそんな仲良くないよ。悪くもないけど。少し雑談したら教えてくれただけだよ?」


「流石のコミュ力‥‥! でも助かる!」

「あ、あれ。来たんじゃない?」


「ああ、咲見さんの側には‥‥やっぱりあの‥‥」

「やっぱそう? やっぱそう? あの子が、咲見さんの介助役とはね‥‥!」


「やっぱり絶対本人だ。ふ、『ふれあい体験乗艦』に参加することになってるとは‥‥」

「ホントだよね~。あ、でもあの子、確かにキレイだな~。脚長くてうらやましい」


「咲見さん、あ、歩くの大変そうだね」

「だね。えっと姫の沢さん、だっけ。彼女は準看護師の資格持ちだから、彼女が介助してるんだね。パイロット兼任で大変だ」


「マジカルカレントの副作用って、重いんだね」

「『軍事機密なのですが』って、ビックリしたよぉ」


「咲見さん辛そう。わ、私が代われるなら代わってあげたい」

「いちこはホント、そういう自己犠牲精神濃いよね‥‥‥‥どうする? 朝ごはん終わったタイミングで話しかける?」


「ひ、ひぇ。あばば。そんな、私なんて」

「そう? 『大変そうですね。何か私に手伝えることは?』って聞くだけだよ?」


「ふ、不自然だって。不審に思われるよっ」

「そうかな~。感謝されるだけだと思うけどな~」


「近くで見ると‥‥ヤバい‥‥写真より全然キレイだっ」

「姫の沢さんって、あのノスティモの表紙の子なんでしょ? もう確定だよ。これだけ近くで見て、見間違えないよ?」


「やっぱり姫の沢さん、『咲見ひめ』だよ、ね? ね? うわ、手が震えてきた。うたこが変なこと言うから」

「だからさっきからそう言ってるじゃん? ダメだよ。せっかく『ふれあい体験乗艦』で一週間同乗するのに、もう話しかけて仲良くなっちゃおうよ?」


「うたこはそれができるけど、わ、私は」

「大丈夫。私がちゃんといるから。だって咲見さんと『咲見ひめ』さん、だよ。今ふたり揃ってるし、ここでチャンス逃したら、もう永遠に知り合えないってば!」


「あれ‥‥そういえば‥‥咲見、って?」

「姫の沢さんの芸名って、咲見さんの苗字とおんなじなんだよね? ‥‥親戚?」




「あ、あとさあ。さ、さっきから」

「うん、わかってるよいちこ」


「あのふたり、距離感が?」

「う~~ん。ちょっと『患者と看護師』、『前衛役と後衛役』ってだけじゃなさそうね?」


「一晩、医務室にいたのかな? ま、まさか」

「ググるよ私‥‥え~っと姫の沢ゆめさん、みなと第二中。『副パイロット』、『食事係』枠で乗艦、『準看護師』、『準保育士』、『準歯科衛生士』の資格持ち。すごいね。それで『特別枠』でこの『ふれあい体験乗艦』に参加」


「や、やっぱり『咲見ひめ』って芸名だったんだよ」

「確定だね~。あ、小学校は小屋敷小だよ。つまり咲見さん、岸尾さんと同じ」


「つ、つまり三人は幼馴染みで、部隊(スコードロン)組んでて、咲見さんが倒れたら彼女が介助する段取りってこと、か」

「ちょっと姫の沢さんの負担が大きいような気がするけどね。もし彼女がいなかったらって考えると。私たちの負担ってけっこう来てたかもよ。ね? いちこ‥‥あれ?」


「うあ? ひめさんが男子に、咲見さんに、あんなことまで?」

「確定かな。あれは介助じゃなくて恋人仕草だよ」


「ああ尊い。あの咲見ひめに至れり尽くせり。‥‥代われるなら‥‥代わってほしい‥‥‥‥あ゛あ゛~~」




「あれ~~~~。いちこが壊れた~~~~(笑)」




 ***




 同日。12:40 食堂。



「ふ~~。ごはん美味しい」

「愛依、お疲れ~~」

「あっ麻妃ちゃん。たぶん夕方には咲見さん退院できるよ。でも助かった~。姫の沢さんが咲見さんの看護してくれるから、わたしは医療に集中できるよ~」

「そりゃ良かった。でもまあ愛依もひめっちも代わりがきかないから、無理すんなよ」

「そうそう。姫の沢さん大変よ。午後からはごはんの支度しなきゃなんだって。だからわたしが咲見さんの看護に入るけど」

「ひめはぬっくんのことになると暴走するから、そうやってフォローしたってくれ」


「‥‥‥‥‥‥‥‥」

「ん? どした?」

「ホントに好きなんだね。姫の沢さんは。いいなあ」

「あ、わかる? 秒でバレたゼ☆」

「わかるよ。さすがにまるわかりよ」

「愛依だってオトコ作ればい~じゃん?」

「わたしはいいよ。怖い目にあったばかりだし。女医になればひとりで生きていけるし。そのステップのための『ふれあい体験乗艦』参加だし」

「そうだったな~。でもさ‥‥‥‥例えば暖斗くん、愛依のけっこうタイプだったりして?」

「ああ、麻妃ちゃんヒドイ。親友の想い人なのに、わたしをけしかけるの?」


「いやぁ。ちょっと‥‥そんな未来が‥‥視えたような気が」


「まさか、『ウチには未来視の【スキル】が。名付けて【予後(ネクストビジョン)】』とか?」

「愛依? 急にどした?」

「ふふ、親戚の子がね、こういうの好きなのよ」

「あ~なんだびっくりした。急にキャラ変したかと」



「でもさっきのハナシ。真面目に言うと、ひめっちがそれを望んでるんだよ」

「え? 望んでる? 何を?」

「‥‥‥‥実はひめがさ、中学が別になる時にウチに言ったんだよ」

「あ、小屋敷小から、麻妃ちゃんと咲見さんが第一(いっちゅう)、姫の沢さんが第二中学(にちゅう)に別れる時ね」

「そうそう。その時にね。



『ねぇ、まきっち。今後もし、ぬっくんの前にステキな女の子が現れても、私に義理立てしないで。別に邪魔とかしなくていいからね? むしろ、本当にいい娘なら応援してあげて。私より、ぬっくんの幸せをまず第一に考えて』



 って言われてさ。ウチは返す言葉が無かった」


「‥‥‥‥‥‥‥‥」


「まいったよ。そういうのひめ、ガチの本気で言うヤツだからさ」


「本当に言葉がないわ。‥‥それって‥‥本当に本当の、真実の愛じゃない」


「重婚制度。コレのおかげでぬっくんが誰かとくっついても、すぐにひめの枠が消滅するワケじゃないじゃん。だからウチはぬっくんの色恋事情には『良き傍観者』であろうとは思ってるワケ」

「え? 一応麻妃ちゃんは? ぬっくんのことは?」

「ぜんぜん。幼馴染すぎて、そういうカンジじゃないね。そうだな‥‥ウチはドローンレーサーに理解あるダンナで、めっちゃ権力者とかがい~な」

「あはは。なにそれ~~」

「紘国の皇族サマとか? カモ~ン!」



「ふふ‥‥まあとにかく、わたしは結婚しないよ。だってわたしは女医になりたいんだから。うっかり妊娠とかしたら人生計画リスケしなきゃなんだから」

「悪い! ちょっと思いついちゃっただけだゼ☆ 忘れてよ愛依‥‥ん? ‥‥どした?」


「う~~ん。咲見さんかぁ。姫の沢さんみたいなモデル美人、あんなキレイな人が彼に夢中になるのもわかるかも。確かに、彼人柄いいよね。結婚しても絶対不幸にはならなさそう。‥‥‥‥‥‥仮に」





「‥‥‥‥あくまで仮に、のお話だけれども‥‥」






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