第131話 突撃する赤ちゃんの物語Ⅰ ~異世界成分無添加Vr.~①
‥‥こほん。‥‥では。
突撃する赤ちゃんの物語‥‥。異世界成分無添加バージョン‥‥。
つまり。
物語の【正伝】、ということにて、ごさいます。
時は未来。場所は紘国。
いずれの御時にか、とある軍港の街に、いとねびゆかむ様ゆかしき人あり。この女御はそのいみじう生い先見える類稀なる容姿で、モデル業に青雲の志を持つワナビなりけり。
(あ、春さん。人に向かってワナビって、あんまり言わないほうがいいよ)
(え? そうなんですか? そうなんですね。これは失礼を)
(てかワナビとかどこで憶えた単語だよ?)
(あ、私も。ちょっと‥‥いいですか? ‥‥何その言い回し)
(え? ワタクシ春の大、大、大好きな講談調なのですが?)
(却下。普通に喋れ仲谷姉。ぶっとばすぞ?)
(別にふざけてはいなかったのですが‥‥はい‥‥)
(では、真面目に。秋の記憶からかいつまんで、皆様の台詞を中心にして)
***
「二機目の小型Botが出た。諸元送る!」
「オッケー麻妃。補足した! 菜摘組は?」
「ひめが無事逃がしたからオッケー」
「よっし。じゃあ」
「回転槍の予備回転開始。ひめ!?」
「うん。先行してUO-003が食い止めるよ。ぬっくんの敵はっ!!」
「はっは~! ひめっち絶好調だゼ☆」
「私の敵だあぁ~~!!!!」
ずごん。
「‥‥‥‥ひめちゃん‥‥‥‥僕の獲物‥‥」
「あ~~! またやっちゃった」
「一応、規定回転数超えたから、僕がトドメ刺すけどさ‥‥」
「ほ、本当にごめんなさいっ。私ダメな子だよね‥‥‥‥」
「待った、次が来るよ。じゃあ今度は僕に前衛やらせて」
「ダメ。それはダメ。私はぬっくんの盾。‥‥あと後ろからぬっくんに刺されそうなのも最高にどきどきするし、こうやって叱られるのも最高にぞわぞわするんだもん」
「何? 一部聞き取れなかった」
「ううん。何でもない。でも前衛は絶対やらせて。そして私の屍を踏み越えて? ぬっくん!」
「え? 何? インカムの調子悪いのかな? 麻妃調整できる?」
「‥‥い‥‥いやぬっくん‥‥音声は‥‥ぷ‥‥くくく‥‥オールクリアだ‥‥ゼ☆‥‥ひひ‥‥は」
「どうした? 何言い淀んでんの?」
本編の主人公、姫の沢ゆめ。
紘国という国の、軍港の街みなと市に住む、中学二年生。
彼女は。齢14歳にして。
筋金入りの、ドMであった。
***
(ちょっと待った~~~~!!!! 春さんっ!! ナニコレ!? ナニコレ!? 私ドMじゃないよね? みんなっ?)
(‥‥‥‥)
(えっ? なんでみんな助けてくれないの? 悶絶してるの? なぜなぜな~に?)
(笑い死んでんだよ! どうなってんだ姫の沢!)
(そうだ! 困った時の子恋さん?)
(いや‥‥‥‥ムリ‥‥腹筋が‥‥呼吸が‥‥‥‥)
(実はくノ一の、渚さん?)
(わ、私もムリ‥‥もう‥‥もうやめて)
(ゆめさん諦めましょう。あくまで。あくまで存在したかもしれない過去の一例です)
(春さん、これじゃ私、公開処刑だよぉ)
(見方を変えましょうゆめさん。ほら、咲見さんを見て)
(そんな。ぬっくんに笑われてたら。‥‥もう死ぬしかないよぉ‥‥)
(大丈夫ですゆめさん。咲見さんは笑っていません)
(え‥‥‥‥?)
(代わりに、ドン引きした目で見てます)
(ダメじゃん? ああ、私『ふれあい体験乗艦』に落ちて正解だったってこと~~!?)
(ある意味半分正解ですがほら。見てください咲見さんの、あの視線)
(うう‥‥‥‥)
(まるで‥‥ゴミクズを見るようではありませんか‥‥?)
(う、うん)
(その視線を受けて‥‥何か感じることは‥‥ありませんか?)
(な、なんかどきどきしてきた‥‥無視されるくらいなら‥‥むしろ)
(むしろ?)
(むしろいっそ、足の裏で踏みにじってほしい‥‥かも‥‥)
(でしょう? よくできましたゆめさん。‥‥じゃあ‥‥語りを続けますね?)
***
「だ、大丈夫? ぬっくんっ!?」
「あ~~。発症しちまったか。哀れ。新兵」
「顎の傷は痛む?」
「傷なんて。だってひめちゃんが、転んだ僕を受けて、下敷きになってくれたから」
「ううん。ぬっくんが無事なら、私はどうなってもいいの」
「せっかくBotは全機撃破したのに、僕はドジだなあ」
「そんなことないよ。DMTの操縦で疲れたから。そうよ。ぬっくんは全然悪くない」
「ひひひ役得だね。ひめのボディの感触はどうだった?」
「麻妃‥‥‥‥!?」
「ごめん! ごめんて! ぬっくん」
「あと、僕がその呼びかた許してんのは、名付けたひめちゃんだけなんだけど?」
「そ、そうだよね。ウチはじゃあ、KRM整備するからこれで!」
「逃げたなアイツ‥‥‥‥って、あれ? どうしたのひめちゃん?」
「だって‥‥今の。‥‥『ぬっくん呼び』していいの、世界で私だけってことでしょ?」
「そうだけど、ちょっと大げさだな。はは」
「だって‥‥‥‥」
「なんかさあ。久しぶりにひめちゃんと再会したけど、昔と変わらないよね? すぐ打ち解けた。ごめん。もっと通話アプリとかで連絡取ればよかったなあ」
「ぬ、ぬっくんは悪くないよ。わたしから疎遠にしちゃったんだよ。私が悪いの!」
「そう? まあそこはお互いさま。まあこれからもよろし‥‥‥‥あれ?」
「どうしたの?」
「いや~~。『右手』で握手しようとしたんだけど?」
「うん。握手っ。再会を祝して」
「でも‥‥あれ? ‥‥腕が、上がらない?」
「え? 大丈夫?」
「ちょっと待って。今起き上がるから。‥‥‥‥‥‥‥‥あれ? あれれ?」
「ぬっくん!?」
「くそ‥‥‥‥どうしたんだ? 首から下がまるで‥‥‥‥」
「ぬっくん! ぬっくん!」
「あ、お取込み中ごめんなさい。ふふ。おふたりは仲がいいんですね?」
「え?」
「咲見さんの身体を診ます。人数を呼んでありますので、みんなでベッドに移しましょう。あ、あなたの健康もモニターしますよ? パイロットの健康管理はわたしの『主任務』ですので」
「ええ?」
「いいな~。幼馴染って。わたしにはそういう人、いないから。‥‥あ‥‥ごめんなさい。咲見さんは治ります。いえ、わたしが治しますからご心配なく」
「な、治るんですね? よ、よかった~~」
「はい。よろしくお願いいたします。えっと。姫の沢ゆめ、さんですよね?」
「あ、アナタは?」
「咲見さんの主治医をする、逢初です」




