第二部 第55話 異世界は空中戦艦とともにⅡ①
ラポルトは、今日も元魔王軍領を飛び回ってるよ。
先日、人類同盟が奪還した元魔王領。カミヒラマを含めた隣接する三か国が、分割統治することになった。アルクトスとかそれ以外の国は飛び地で自治領を貰うか、鉱山の権利を貰うとか、何らかの利得で決着したらしい。
まず軍隊が土地を調査して道を啓開して、要所に防御陣地を作ってくんだって。魔王軍が使ってたのを再利用したりもするけど。
それで安全を確認しながら、徐々に移住者を募集して町とかを形成していく計画なんだって。
ラポルトのお仕事はそういう現場に資材や食料をお届けすること。あとまだ魔物も少し出るからね。冒険者としてウデがなまらないように、討伐もやらせてもらってます。
まだ魔王も健在なので、取りあえずはインフラ整備なのさ。
で、そんなお仕事してると、色々な国の人と話す機会がある。っていうか、みんな空飛ぶ巨大戦艦に興味津々なんだけど。
例のアルクトスで行われる「人類同盟 魔王領奪還戦勝会」。
各国の王様はもう、アルクトスに向けて出発したらしい。まあ馬車とかならそうだよね。ラポルトなら馬車で10日の行程でも、たぶん半日、下手すれば数時間で行けちゃうから。で、やっぱり出てくるあの話。
「ああ、グラッセン急襲の後に一度ちゃんと断ったんだけどねえ。またしつこく言われてるんだよねえ」
ちょっと不機嫌そうな子恋さん。
ちょっと、ラポルトが復活して、愛依さんが連れ去られる前まで話が戻るよ。
あの時は人類同盟が魔王城に攻め込む。そのお手伝いをラポルトがする計画だった。各国の魔王討伐軍、兵員を島まで運ぶって話。魔王城って孤島にあるし。
で、子恋さんも了承して、そのつもりで準備をしていたんだけど、珍しくうっかりしていた。
ラポルトの内閣掃除大臣、桃山さんの具申。
「ねえ子恋さん。乗せる兵隊さんって、ラポルトのトイレの使い方、わかるのかな?」
「えっ!?」
「一度に千人単位で乗せるんでしょ?」
「うん。体験乗艦の時にすら使わなかった宿舎がまだあるしね。一般兵は格納庫とかDMTハンガーとか、そういうスペースで雑魚寝になっちゃうけど」
「士官とか貴族の人とかなら、説明すれば変な使い方しないと思うけど、正直コーラ姫のお付きの方でも、ちょっと水洗トイレを理解してない人とかいたから」
「えっ!?」
「異世界方式で長年生きてきたのに、今さらウォシュレットとかは無理よね? 今のところお掃除ロボットが対応できる範囲なんだけど、一般兵の人が千人乗るとすると、う~~ん」
桃山さんはラポルトのお掃除担当。その彼女に、周りの女子も一斉に乗っかった。
「ドローンで出来ない載荷を手伝ってくれるっていう冒険者さんもいるけど、その人たちは?」
「あら。兵隊さん以上にマナー悪そうね」
「‥‥‥‥。艦内に、そういう感じの男の人が大量に入ってくるってこと?」
「セキュリティー大丈夫かな?」
「居住区全開放ってことは、女子階の2Fもよね? じゃあ私たちの私室近くにも男の人がウロウロするってことじゃあ?」
「あ~~。近くっていうか、姫の沢さんの部屋から向こう、全部オトコ部屋に」
「「え~~!? やだぁ」」
「いいんじゃね~か? いざとなったら魔法ぶっ放せば?」
「ダメでしょ! 艦内だよ!」
「ウチらより強いヤツは普通にいるゼ☆」
「澪?」
「はぁ。まあ私が電脳戦闘室で監視オペするけど、艦内でトラブル起きても撮影と警報、放送入れるくらいしか手段が無いよ。だってまさか艦内に攻撃型の監視ドローン浮かせるワケにはいかないし。艦内は『味方』しかいない前提だし」
「ちょっと不味くない?」
「麻妃ちゃんの貞操がピンチだゼ☆」
「ちなみやだ~~。ちなみのお部屋の前に男の人いるのやだ~~」
「オマエ! 憲兵だろうがっ?」
「痛い痛い! 七道さんっ」
「で、でもやっぱり、じょ、女子階に男の人が来るのは‥‥」
「今まで暖斗くんが、安全安心すぎたんだよね‥‥」
「でも愛依にはしっかり手を出したけどな‥‥‥‥ヒヒヒ」
「え~~!? 出されてないよっ? 出されてないもんっ!」
「まあまあ。でもつまり、運営が暖斗くんチョイスしたのも、そもそもマジカルカレントだけじゃないよってこと」
「パイロットとしての技量だけなら、正直他にいくらでもいたわ」
「人格者‥‥‥‥咲見暖斗くん」
「『ドキッ☆女だらけの空中戦艦』に‥‥‥‥乗り込むために生まれてきた漢」
「ウケる」
「ライドヒさんを思い出すっス」
「あ~~。でもライドヒさんはそんな悪気は無かったよ?」
「そう思ってるのは美羽だけっス」
「何よそれ~~??」
「待ってみんな。一回掃除の話に戻させて! で、子恋さん?」
話が取りとめ無くなったところで、桃山さんが一回戻したよ。
「しまった~~。私のミスだよ、うん。乗せるの、‥‥紘国兵のイメージでいた‥‥」
でもミスを認めた子恋さんの、復活は秒だった。
「ごめん! でもまだ大丈夫。ゼッタイ断るから。ラポルトは輜重だけ引き受けよう! この子恋光莉の弁論術の総てをかけて、ゼッタイに断るから! なんなら相手に印象操作したり詐術使ったりしてでも、ゼッタイ断るから!」
で、そんな中王都グラッセンでの、「愛依さん拉致事件」が起こって。
魔王城攻略計画もリスケされた。各国が「アトミス国しばくぞ?」モードになったし。
その機に一気に、子恋さんが話をひっくり返して「まず魔王領を攻略しましょう。ラポルトが前線まで資材、武器も食料もお届けしますっ!」ってなって、今に至るってのがコトの真相だよ。
ラポルトに男の人乗せないのは「まあ、ああいうこともあったし。皆様察してくださいね(暗黒微笑)」で落ち着いた。
私たちって、ずっと荷揚げを女子でやってたよね? 細腕でさ。
もちドローンがほとんどは運んだけど。
あれも、そういう経緯というか、事情があったからなんです。




