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第二部 第54話 王道と愚策②






 終わったよ。


 何が終わったか、と言うと。


 人類同盟の、魔王軍領への攻撃。



 あの、カミヒラマ国に隣接していた魔王領。ずっと人類が回復できなかった失地。

 もともとは国があったらしいんだけど。滅ぼされて今に至る、と。


 そこに今回、人類側が攻め込んでいた。魔王軍は四天王を失ってたし、まだ中ボス的な魔族もいたけど。

 魔王領に隣接する各国、それをサポートする周辺国が攻め込んで、魔族魔物を無事駆逐したんだってさ。よかったね。


 我らラポルトは兵站担当だったよ。食料や医薬品、武器なんかを運ぶ役。一手に引き受けていた。そりゃあ大量の荷物を巨大戦艦で一気に運んだら、戦うほうは楽だよね。輜重隊、って言うの? 補給部隊がほぼほぼ要らないんだもん。


 しかも。その荷物運びの艦が最強戦力なんだもん。弱点が弱点じゃない。

 魔王軍はラポルトと戦おうとせず、私たちが補給に行くと一時撤退してたから、こっちのタイミングで戦闘止めることができたし、最前線まで飛行して余裕を持って物資搬入できてた。



「まあ、王道だね」


 黒縁メガネをクイってする子恋さんが目に浮かぶ感じで、大陸から魔王軍は駆逐されたのでした。




 ***




 順調にいってる人類同盟。

 ここで、問題発生だよ。


「『後は魔王を倒すだけだから、ラポルトを自分たちに貸与して欲しい』って言われちゃったよ」


 ドヤ顔メガネさんもため息。


「確かに私は『これは、この世界の方々の戦なので』って言ったよ? 言ったけどさぁ?」




 事の発端は、人類同盟での領袖、アルクトスという国だよ。

 この国はエリーシア国と同じく、魔王のいる島や魔王領とは離れた位置にあった。

 今回の「魔王領失地回復作戦」にも、兵も出したけど後方支援が主な国だった。


 でもこの同盟国最大の国家なんだよね。農業のグラロス朝、軍事力のカミヒラマ国、文化と経済のエリーシア王国、ゼノス王子のアトミス国、あとスクピディア帝国とか虎狼の国とか色々あるんだけど。


 この国は国土がでっかいんだよ。森もあって山もあって、鉱物資源とかも採れる。

 特にエリーシアやカミヒラマがある大陸では一番国力があった国だから、今回の作戦で両国とのパワーバランスが崩れるのを危惧してるらしいよ。


 つまり魔王討伐後の世界情勢を睨んで、ラポルトを取り込んで手駒にして、自国で運用できるように圧力をかけてきた、ってことらしい‥‥‥‥。


「まだ魔王倒してないってのに。っていうか予言だと魔王の最終討伐は次世代の三つ子だっていうのに」


 んん? 子恋さんなんか言った?


「あ! 姫の沢さん居たの? ‥‥‥‥げぶんげふん。ああ、あの大臣ホントふざけてるよね!」

「あ、うん。そうだね」


 んん? 子恋さんの慌て顔はレアだね。


「アルクトス国の大臣がさ、打診してきたんだよ内々に。‥‥しかも戦勝パーティーがアルクトスで開かれる‥‥このタイミングで」

「じゃあ何か、そのパーティーで?」

「そうそう。仕掛けてくるかもだよ。ちょっと勝ったからって、途端に人類同士の主導権争い始まるから。愚かな、正に愚策。でも一応私たちも気をつけたほうがいいかな」


 私って、どうしても目の前の話題に気を取られて、前の話題を忘れちゃうのよね。でも今回はそれがいい方向に動いた。


「あ!」

「どしたの? 姫の沢さん」

「パーティーって、各国の王様とかが出席するんだよね。それでラポルト16も呼ばれている」

「うん。そうだよ。だから謀略に巻き込まれないように各自身辺警護を‥‥」

「ちがうちがう子恋さん!」

「えっ?」


 私、気づいちゃった。


「エイリア姫! クーデターが起きたエリーシア国の代表として、クーデター派じゃない人が出席しなきゃ不味いんじゃないの? でも今は愛依さん人格だからエイリア姫はいない! でも姫がいなきゃダメなんじゃないの?」


「‥‥‥‥あ!」


 ラポルトは今、母港であるグラロス国に停泊してる。

 すぐに王宮、コーラ姫と仲谷さんのところに行った。


「そうですね。今回の戦勝はラポルトあってのものですし、そもそも四天王撃破はラポルトの功績ですし。エリーシア国の代表として、国際舞台で国王派の代表として、各国に認知されたいところです。‥‥逆にクーデター派が出席して幅を利かせてしまったら‥‥『エイリア姫不在』、国王派の立場は危うくなりますね」


 コーラ姫が懸念を示して。


「そうですね。まさかとは思いますが‥‥各国にもしクーデター派を支持する声明を出されたら‥‥我々は大変不味い状況になります‥‥」


 仲谷さん(姉の春さんのほうだよ)は、ゆっくり確認するように頷いていた。


「いえ、政治の世界は何があるかわかりません。利あればクーデター派と結託する輩も現れるでしょう。ただでさえ国王派のラポルトが多大な戦果を出しているのです。それを疎ましく思い、押さえ込もうとする勢力は必ずいます」


 う~ん。

 なんか話が大きくなって来たよ?

 大丈夫?



「いい機会ですゆめさん。この『エリーシア国クーデター事件』から『ふれあい体験乗艦』、そして先日の『グラッセン逢初さん拉致事件』まで、話を整理してお伝えしましょう。この件についての通しでのご説明は、まだでしたね」


 え? 何? 春さん急に!?


 そもそも。


「ふれあい体験乗艦」って、紘国世界のハナシでしょ!?





 何言ってんの?







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