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第二部 第45話 春と秋③






「うあっ!?!?」


「びっくりした!」

「急に何!?」


 またぬっくんが絶叫した。‥‥ぬっくん。女子は大声出されるのがストレスなの。あんまりやらないほうがいいよ。


「も、もしかして!?」


 そうアドバイスしたかったけど、かなり動揺した様子だった。


「あの時、愛依がハシリュー村で‥‥えっと。‥‥色々あって心配した時に!?」

「そうです」

「やっぱり! 会話が異常だったんだよ! 大丈夫か不安だった時に『大丈夫です』って突然! 確信持って言い切ってたから!」


 その時のことって、あの時のことだよね。


 うん。まきっちから聞いてるよ。ハシリュー村での事件。愛依さんが敵兵に捕まって大変だったり、敵Botに捕まりそうになって大変だったんだよね?


 ぬっくんが駆けつけて、愛依さんを間一髪助け出したりして。‥‥そしてラポルトに戻っても、軍人さんと揉めたりして愛依さんは心身共にボロボロに。それを心配するぬっくんもすごく辛かった時だよ。


「あの時は失礼致しました。ベッドに伏して憔悴する咲見さんを見てられなかったです。‥‥そうです。ご推察の通りあの時点で既に私は、秋からの【予後(ネクストビジョン)】を受け取って未来を、結果を知っておりました。‥‥さらに言えば、愛依さんが村に行くことによっておこる事態も事前に。‥‥愛依さんが結果無事なこと、敵兵ゼノス、この世界のゼノス王子に【催眠(ステノーシス)】をかけることができるメリットを知り、そのふたつを天秤にかけて、愛依さんのハシリュー村行きを敢えて止めませんでした。本当に申し訳ございません」


 萌黄ドレス、春さんがその場に両ひざで跪拝して、深く頭を垂れた。黒髪も床まで垂れた。


「わたしはいいわ。無事だったんだもの。あの時アピちゃんを村に送るのはラポルトの決定だったから、春さんが止めようとしても、止めれたかわからないし」


 愛依さんが駆け寄って、すぐに春さんを立たせた。ぬっくんは複雑な表情だった。


「じゃ、愛依が敵兵に捕まるのも予知していて、無事に帰って来るのも知っていて、でも結果オーライだからほっといた、と?」

「はい。私があちらの世界に渡ったのは、本来エイリア姫の精神の依り代である愛依さんをガードするためでした。『ふれあい体験乗艦』に入り込んだのもそのため。ですがあのハシリュー村行きは、直前になって秋からの予知情報があったので、私が介入するのは止め、愛依さんの中のエイリア姫に【リンク】で【催眠(ステノーシス)】を貸与するにとどめました。それがあの時点での最適解かと」


「そういえば。目が赤く光るのは【リンク】した証拠なのかな?」

「ご明察です。必ずではないですが、【リンク】した時には身体に何か兆候が顕れる時があります。愛依さんと姫様が同一人物だからかも知れません」

「に、しても、だよ。やっぱり駄目だよ。そっちの事情もあったかもだけど、そのせいでひめちゃんはラポルトに乗れなかったんだよ?」

「申し訳ございません。一切の弁明を致しません。咲見さん」


 正論モードで殴るぬっくんに、私と愛依さんが抱きついた。「そのことはもう大丈夫だから」と、彼を宥めた。


 ぬっくんは優しい。そして正しい。けど、学校の先生とかにその「正しさ」が向けられた時、彼の正しさが破壊力を持ちすぎたりする。

 私は小学校時代に、そういう場面を何回か見てきた。だから止める。


 そんな、ちょっと場の空気が不穏さをまとった時に、もうひとりぬっくんの正しさの破壊力を知る人物が会話に入ってきた。


 言わずもがな。わが親友だ。グッジョブ!



「あのさ、ウチ頭悪いからよくわかんないんだけどさ。仲谷‥‥ああ春さんのほうね。『ハシリュー村行き直前』に、『愛依が行っても無事とわかったから』って聞こえたんだけど。どゆこと?」


 ん? え、何がどゆこと?


 一瞬考え込んでる間に、七道さんが膝を叩いた。


「あ~。だって仲谷‥‥春のほうな‥‥が、あっちの世界に渡ってラポルトに乗ってるのに? ってハナシだろ? 『ふれあい体験乗艦』やってる中で、何時その双子の片割れと交信したんだ? って質問だ」


 そっか。秋さんはあっちの世界、紘国のある世界には渡ってないんだよね? そして「ふれあい体験乗艦」の時は、紘国は電磁パルス攻撃を受けてインフラ破壊されて、まともな通信は本当に全部できなかった。

 ラポルトだって地上波はもちろん、本部の運営と交信したりすらできなかったんだから。


 なのにそのタイミングで「秋さんの未来予知情報」を受け取るのはおかしい。まさか、秋さんがガンジス島まで来ていたとか? いやいや。


「それは」

「私がお答えします。私と春は【スキル】、【恒常性(ホメオスタシス)】だけでつながっているのではありません。他にもふたつの【スキル】で常時接続しています。‥‥いえ、その【スキル】でつながっているからこそ常時接続している、と言ったほうが正確でしょうか?」


 申し訳なさそうにしている春さんの言葉を切って、秋さんが一気にここまで喋った。そして。


「私と春の接続は、どうやら時空をも超えるようなのです。強く念じた場合のみ、伝える内容も断片的ではありますが、異世界に於いても意思や気持ち、記憶の接続が確認されております」


 トドメに愛依さんが、胸に手を当てながら進み出た。


「『その双子は特別なのよ。とにかく特別なの』って、わたしの中のエイリア姫が‥‥」


 一同、絶句。


 どんなに遠く離れても、どころじゃないよ‥‥‥‥。


 私たちの世界とこの世界。その異世界との狭間でもつながってるって‥‥‥‥?





 チートが過ぎるわ‥‥。






※「第一部第44話 絶対に大丈夫」からの伏線回収でした。

 ‥‥っていうか、第一部で春が出るシーン(姫もですが)のほとんどは上記の事実に依って書かれてます‥‥


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