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第18話 8対1②

 




 遠目のBotにはビームを打ち込む。能力でインフレした太いビームは、2機のBotのシールドを瞬く間にはぎ取った。そのまま実装甲にダメージを加えていく。



「削られたシールドの回復もイケてる。マジカルカレントって便利だな」


 麻妃が呑気に言うけど、ね。あの後遺症さえ無ければね。


「あっ! 敵がなんか集まって来てるよ。陣形じゃね? あれ」


 その声でとっさにモニターを見ると、7機のBotが、2機、3機、2機、と規則的に並んで来ていた。


 マズイ! と思ってビームを打ち込むが、2機で集まってる左側のBotは、その砲撃に耐えてみせた。


 Botに着弾したビームが、機体表面に張られたシールドに相殺されて、夜の森に花火みたいな光を散らす。



「弾かれたぞ。暖斗くん」


「何で。さっきはダメージ入ったじゃん」


「2機でつるんでシールドバリアを積層(レイヤリング)したんだよ。1機が防御に徹して。暖斗くん! 右側の2機に突っ込もう!」


 麻妃の指示通り、レーダーに見える右側に突撃(アサルト)する。DMTが蹴った大地が、爆発するように後方に飛んだ。


「あの2機はさっきダメージ入ってる。陣形が完成しちゃう前に!」



 至近に踏み込んでサリッサを繰り出す。壁役のBotが粉々になった。が、なぜか後ろのもう1機が逃げ遅れてる。


「ほら、2機で連結(オクルーザル)してた。やっちゃえ暖斗くん」


 2機目を難なく仕留めると、こちらも一旦距離を置いて仕切り直す。




 3機で集まったBot、その内の1機が撃って来た。


「それ当たっちゃダメ」


「了解!」


 飛来する光弾にマージンを十分に取って回避。無理はしない。


 麻妃の言う事が僕にも理解できてた。敵は3機でエンジンをつなげて高出力砲撃、残りの2機がシールドで高出力防御を担当するつもりだ。僕のDMTがマジカルカレント能力でパワーアップしてるから、5機のBotも役割分担して、対応、対抗してるんだろう。


 でもこのままでもいけない。今度は敵の火線をギリギリでかわしながら、壁役の2機に何とか近づいて槍を突き立てた。

 シールドや砲撃にエネルギーを配分してるってことは、機動―逃げには使ってないってこと、そしてビームの防御に徹してるって事は、サリッサの物理攻撃に対処できないって事だ。


 2機のBotはすぐに撃破できた。



 すかさず、砲撃役にも盾を構えて突っ込んだ。さすがに被弾する。


「うおおお!!」


 サリッサの刃部の旭煌がひときわ明るくなった。


 エンジン出力が、さらに上がった!?


 僕のDMTが急激に間合いを詰め、次弾をチャージするBot達を、その光る槍先で蹴散らした。1機、2機、‥‥3機!



 ――――地面に落ちたBotに確実に止めを入れて、戦闘は終了した。





「お疲れ様~♪ いや、なんか最近イチ良い戦闘だったような」


 麻妃の呑気な声が聞こえてきた。


「まあ、Bot8機も倒したからね。これで全部かな。さらに待ち伏せしてるとか?」


「渚さんも艦のAIも、もう居ないって言ってるよ。居るならとっくに参戦してるって」


「そっか」



 戦艦(ラポルト)へ帰投しながら、麻妃と僕はそんな事を話している。


「でさ、麻妃。最後の3機やった時に、さらにパワーが上がった気がしたんだけど?」


「え、そっか? ウチは気付かなかったよ。まあ、後で解析データでるでしょ?」


「印加電圧は?」


「今回も5%アップのままだよ。2倍――10%アップとかも出来るけど、キミの後遺症のほうが心配だからねえ。いきなり10%とかは無理って言うか、止めといた方が無難だって」


「あ~。逢初さんが言ってたね。首から下が動かなくなるのが初期症状なら、重症化したら心肺機能とか消化器系に影響出るかもだから、心に留めといてって」


「何それ愛依、怖い事言うじゃん」


「医者って心配性って言うか、悪い予想を基本にしてるよね」


「それはしゃ~ないかもね。『大丈夫です』って言って、大丈夫じゃなかったら大変な事になる仕事だもんね‥‥‥‥」


「はあ~。‥‥また医務室かあ」


「あのまま3機だけなら、能力無しで勝ち切りたかったんだけどな~。あ、ウチ、今度こそ赤ちゃんプレイしてる暖斗くん見に行くゼ☆」


「その時は来なくていい! ‥‥し、赤ちゃんプレイしてね~し! どうせこの会話も全体回線(チャット)なんでしょ? 変な事言うなって」


「あ~あ。自分のKRM(ケラモス)は自分で整備点検だからなあ。ウチ、『すぐやる派』だし。終える頃には暖斗くんミルク飲み終わってネムネムだもん。KRMも整備班がやってくれないかなあ。今回だけでも」


「ははは。七道さんがブチ切れるよ。‥‥‥‥で、‥‥‥‥来ないね」


「‥‥‥‥ああ、やはりというか、‥‥本当に来ないね」


 僕と麻妃は、同時にはあ~、と息を吐いた。




「何? 何が来ないの?」


 渚さんの声だ。全体回線(チャット)から聞いてきてる。



「いや、あの」



 麻妃が説明した。



「暖斗くんと、『戦闘終わって油断してますトーク』してたら、奇襲フラグが立って敵が現れるかな。って」


 渚さんは呆れてた。


「‥‥あなた達、打ち合わせなしでそんな事してたの? いいからもう帰って来なさい」


 と、普通に怒られた。




 ***




 一方その頃、戦艦ラポルトの1F、CAD/CAM室の前で、逢初愛依がウロウロしていた。


「また逢初か。戦闘配置中に」


 見つけた七道が咎める。


「あ、七道さん。お願いした物はできてますか? メールで送った」


 愛依は屈託の無い笑顔を向ける。


「それはココじゃなくて3Dプリンターの所。もっと奥だよ。ったく、いい加減CADとプリンターの区別憶えなよ。この前も一緒くたにしてただろ」


「ごめんなさい。わたし、機械モノは苦手で‥‥‥」



 愛依は後ろ向きに謝りながら、3Dプリンターの方へ走っていった。


「まったく、あんな物何に使うんだよ」


 七道の問いに、愛依は手を振って答える。





「それはもちろん、今から医務室で、で~す」






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