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第二部 第43話 マジカルカレントⅢ②

 





 聖なる光に灼かれ、消し飛ぶ魔影! 次第にその輪郭が光の中に埋まっていって。


 大気を揺るがす轟音と共に、熱風の折り返しが来た。



 その風が私たちの服をはためかせて、勢いよくデッキを通りすぎた、しばしの後。


 戦艦から見た景色は、くすぶる森とさらに深くえぐられたむき出しの大地だったよ。


 既視感があった。彼の能力に。



「ねえぬっくんの【固有スキル】って?」

「うん。たぶんだけど、自分でもうっすらわかってきた」


「なぜなぜな~に?」

「ははっ。ひめちゃんは昔からよく言うね。その口ぐせ。‥‥‥‥そう。僕の【固有スキル】は【閾値不覚(マジカルカレント)】。取りあえず魔法を使う人と【リンク】すると、その人の魔法の威力が上がるみたいなんだ」


 魔族の消滅を再度確認してから艦内に戻ると、七道さんがいた。


「暖斗くんの能力な。この世界でも有用みたいだな。魔法と作動原理が似てるんだよ」


 そうだ。七道さんは「光の速度」からこの世界の魔素と魔法の仮説を立ててるんだった。

 その言葉に春さんも反応する。


「ええ。魔素という素粒子を動かして物理現象を引き起こすのが魔法、古代語魔術も基本的には同じ仕組みです。そしてその原動力は魔力と、我々の精神の働きです」


 前にちょっと聞いたっけ。


「僕の【マジカルカレント】は、電子と重力子の動きの限界を無くす脳波、だっけ?」


「『動き』じゃなくて『相互作用』な。でもだいたいそうだ。で、魔素と光子も相互作用する。その関係性や変換率が、暖斗くんの能力でおかしなことになってるっぽい。‥‥っても、ココには検査機器が無いからな。体感でくらいしかわからね~よ」


 七道さんはちょっと残念そうだったよ。


「わかってんのか? 姫の沢?」


 む? 失礼ね。私なりに、この世界の魔法を整理してみると‥‥‥‥。


 ①この世界には「魔素」という素粒子がある。(私たちの世界にもあるにはあった)

 ②光子と性質が似ていて、光の速度を少し落としている。(その差分が魔力の世界総量)

 ③それが体内に蓄積されている。これが個人の「魔力総量」。

 ④それを脳波、意識のチカラで行使するのが「魔法」。

 ⑤魔素と光子、電子の相互作用で物理現象に変換される。

 ⑥ぬっくんの【マジカルカレント】は自然定数のハズの、その変換率をイジってしまう。「魔力10」で「炎10」が生み出されるハズが、「炎20」になったり。

 ⑦たぶん彼の脳波が、重力子と電子の相互作用に影響したみたいに、魔素と光子、電子にも同じことが起きていると推察。


「そうですね。概ねこんな感じであってます。そもそもこれはまだ研究が始まったばかりですし」

「わかってるじゃね~か。姫の沢」


 うや~い。春さんと七道さんに褒められた。


「すごいや。ひめちゃん」


 うわ! ぬっくんにも!


 ぬっくんと私、ふたりで【リンク】した時に私の魔法が増大したのも、これで頷けるよ。

 あの時(というか、ぬっくんがそうした時は全部)。


 あれは【リンク】して魔力の受け渡しをしたんじゃなくて、【マジカルカレント】で変換率、ひいては威力を増大させてたんだよね。姫様の【大魔力】がそうだから、みんな勘違いしてた。


 私は、その彼の能力と相性がいいみたい。

 他の人より増大量が多い、という結果から考えるに。




 あ、愛依さんもだけど。




 ***




 戦艦が静かに浮上を始めた。

 例の巨大魔族を倒した跡地が、本当にクレーターになってるのが上から見えたよ。



「光莉ちゃん。充電が全然進んでない」


 電脳戦闘室(エンケパロス)に引き込も‥‥げふん、オペレーションをしている紅葉ヶ丘さんからだった。


「どれくらい?」

「運航には支障はないけど、主砲の運用までは回らない感じ」

「あら。仮説が悪いほうで当たっちゃったわね?」

「そうだね」


 私は子恋さんと渚さんの会話に、不穏なものを感じる。


「悪い仮説?」


「ええ。そうよ」


 渚さんが答えてくれた。


「さっきの魔素の箇条書きにところにもあったけど。その世界の光の速度は私たちの世界よりほんのちょっとだけ遅いのよ。人間の知覚ではわからないくらいだけど。でもそれって言い換えたら『光のチカラが弱い世界』でもあるのよ?」


 ふむふむ。


「だから、電子のチカラを化学現象に置き換える充電、蓄電、が十全に行えるか? ちょっと疑問だったの」


 そっか。「魔素の働きで電子が動いて魔法が発動」するけど、その分、「電子が動いて全個体電池(バタリエス)内部で化学反応が起こること」はイマイチなんだ。

 じゃ、太陽光発電とかも?


「そうだね。うん。結局素粒子のことは私たちの世界でも完全に解明されたワケでもないし。それはまあ重力子回路もだけど。だからこの世界で充電が上手くいかないなら、取りあえずその事実は受け入れなくちゃならないね」


 子恋さんもこう言っていた。


 でも、それは新たな問題も発生する。



「私たちがラポルトを起動させたら、すぐ魔族が攻撃して来たでしょう?」

「そうね。早かった。なんか大物みたいな人も来たしね」


「敵のこの動きね。諜報でこちらの動きがバレた、というよりは、魔王側もこのラポルトを重要視、危険視していて、動きがあれば知らせが行くシステムを持っていた、みたい」

「うん。注意してたけど。もしラポルト16がこの地に集まるのがラポルトの起動条件だと敵が把握していたら、もっと執拗に私たちの妨害をしてきただろうしね。ダンジョンに入る前に」

「ラポルトが動くこと自体か、あの水晶魔物が倒されるのが起点だと予想」


 あ、そっか。私たち割と気軽に、全員集合してたもんね。

 しかし、附属中三人娘はホント色々考えてるね。感心しちゃう。



 そんな会話をしつつ、ゆっくりとラポルトが高空へと上がる中。


 艦橋(ブリッジ)の隅に、こっそりと、かわいいガッツポーズをする愛依さんの姿が。





「やった。ずっと医務室だったから、一回攻撃役をやってみたかったのよね。ラポルトの主砲撃ち! うふふっ」






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